goo

続・男はつらいよ


監督 山田洋次
出演 渥美清、佐藤オリエ、東野英治郎、ミヤコ蝶々、倍賞千恵子、前田吟

 シリーズ第2作。テレビ版「男はつらいよ」は親父が見つけて「なかなか面白い番組がある」といって、喜んで観ていた。子供の小生も親父の横に座って観た。顔の四角い下駄みたいな男が、病院で芝居っ気たっぷりに、身振り手振りで自慢話をして、同室の入院患者たちを笑わせていた。この病院のシーンがそっくりそのまま、本作でも使われていた。
 本作は、おいちゃんおばちゃんやさくら一家とは別の、寅次郎の家族の物語である。寅の両親は寅の身近にはいない。父は他界した。母は寅を生んですぐ寅の前から姿を消した。おいちゃんおばちゃん、妹さくらといった家族は持っているが、生みの母、実の父は寅にとって、切実に求め続ける存在だろう。
 父はこの世にいない。父のいない寅は、東野演じる坪内先生に父の面影を見たのだろう。坪内先生も寅に、慈父のように接する。笠智衆の御前さまも寅にとって父のような存在だが、御前さまは、あくまで御前さまであって、高い所から寅を説教する。御前さまにとっては寅は息子ではない。寅にとっても御前さまは父ではない。ところが、坪内先生は寅にとって父代理ともいうべき存在ではないだろうか。
 母は京都にいた。ラブホテルの支配人をやっていた。銭に厳しい関西人らしく、成人して、初めて対面するわが息子に対して発した最初の言葉「カネの無心やったらあかんで」
 この母菊と息子寅次郎の初対面のシーン。シリーズ屈指の名場面だ。ミヤコ蝶々と渥美清の芸の力をイヤいうほど見せつけられる。蝶々演じる菊は、口では上記のごとき憎まれ口をいいながらも、大きくなって訪ねて来た息子にたいする情愛が判る。哀しい母である。
坪内先生の娘夏子は寅にとってはマドンナではなく妹的存在だ。寅にとっては「ガキのころ鼻をたらしてたなっちゃん」だ。代表的マドンナの吉永小百合の歌子でもないし、シリーズ副主人公ともいうべき浅丘ルリ子のリリーでもない。夏子は寅が旅先で出会った人ではない。小さいころから知っていて、ずっと葛飾にいた人だ。実の妹はさくらだが、夏子も第2の妹といっていいだろう。
父、母、もう一人の妹。本作は寅次郎の家族の物語といっていいだろう。シリーズ屈指の情愛の物語だ。 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« ミンチを使わ... 2013年の... »