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みなさん、さようなら


監督 ドゥニ・アルカン
出演 レミ・ジラール、ステファン・ルソー、マリー=ジョゼ・クローズ

 父は大学の教授。頑固でヘンコ。快楽主義で女好き。教養ゆたかで社会主義者。息子は証券ディーラー。父と違って生真面目で金持ち。当然、父と息子は折り合いが悪い。
 父が末期癌にかかった。余命いくばくもない。父は自分の主義で設備の劣悪な公立病院に入院している。折り合いが悪いとはいえ父は父。また、母の頼みもあり、息子は職場のロンドンを離れ、実家のカナダのモントリオールで父とすごすことにする。
 息子は、父に幸せな最期をむかえさせるため、あらゆる手を尽くす。幸い金はある。自費で病院の個室を改造して、父の友人たちを呼んでやる。愛人まで呼んでやる。末期癌の苦痛を和らげるためにはヘロインが良いと聞くと、苦労してヘロインを入手して、ヤク中の若い女を世話係りに雇う。ヨット運搬の仕事のため太平洋上の妹の動画をネットで見せてやる。
 そして父は、友人家族に見守られて静かに息をひきとる。
 しかし、なんとまあ幸福な癌患者であることか。親孝行で金持ちの息子を持つと、こんなに幸せに死ねるのか。多くの人が癌で死ぬ。身よりもお金もなければ、この映画のようなわけには行くまい。おとぎ話といってもいいような映画だ。フランス文化圏の映画だけに、セリフは皮肉でイヤミ(特にアメリカに)だが、ストーリーは極めて素直。
 それにしてもカナダの公立病院にはびっくり。ベッドが廊下にまであふれている。そのくせ別の階は病室として使ってない。(息子はこの階の病室を父専用の病室として自費で工事)予算不足とか。通りすがりの看護師に頼んで、医者のあずかり知らぬ薬を注射してもらう。なんと看護師は注射する。患者の取り違えも。CT検査は半年待ち。
 小生も公立病院(神戸市立中央市民病院)に何度か入院したが、4人部屋で完全介護で、手厚く看護され治療してもらって最短で退院した。同じ公立病院といっても雲泥の差だ。
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コメント
 
 
 
日本でも (悠々遊)
2010-06-14 22:26:38
地方の公立病院では似たような状況のようですよ。研修医制度を安易に「改革」した為、大都市の設備の整った大病院に医者が集中し、地方の公立病院では医者不足のために病棟閉鎖が相次いでいるとか。

アメリカ合衆国ではオバマさんの提唱する国民皆加入の保険制度に、社会主義的制度だとか言って反対する人たちが多いそうですね。さすが自由の国。貧乏人が病気になって金が無くて医者にかかれないのも自由、というわけか。好きで貧乏している人はそう多くないと思いますがね。
 
 
 
悠々遊さん (雫石鉄也)
2010-06-15 09:27:19
私は神戸の病院にしか入院したことがないので、よく判りませんが、確かに地方の公立病院の経営は大変ですね。
結局、お金なんですね。患者数の少ない所の病院にはお金が出せないわけです。
無駄な予算、無駄な経費、無駄なコストを削って、自由に競争させ、より良いサービスなり製品を消費者に提供しようとするのは、自由主義資本主義の原則です。
でも、例え大赤字でもやらなければいけないことがあります。病院などがそうですね。そこに患者が一人しかいなくても、必要な病院は必要です。こういうことは民間では無理です。こういうことこそ公立、官がやらなければいけません。ですから、「なんでも民間」といっていた小泉は大きな弊害を日本に残したと思います。
 
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