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とつぜん上方落語 第11回 愛宕山

 愛宕山。上方落語の春の代表的な噺や。京都のだんさんと大阪の太鼓もちの一八と茂八が愛宕山へ野がけピクニックに行く噺ですな。
 春霞がたなびく中、レンゲ、タンポポが花盛り。麦の穂が青々として菜の花が彩っているという、春爛漫の中を室町へんのだんさんが、祇園の芸妓や舞妓はん、太鼓もちの一八茂八を引き連れて愛宕山へとやってまいりました。あ、その道中のにぎやかなこと。
 この噺で京都のだんさんが大阪の太鼓もちに、京都の山自慢をします。「京都には高い山がある。東山、比叡山、鞍馬山、愛宕山。大阪には山はあるか」「大阪にも山はおまっせ。天保山、真田山、茶臼山」「そんなん山やあらへん。地べたのニキビや」
 で、この一行、愛宕山へ登って、かわらけ投げをして遊んで、だんさんが小判を谷底へ投げて、一八が傘につかまって谷底に飛び降りるんや。
 この愛宕山、だんさんが自慢するほど高こうない。標高924メートル。わが街神戸の六甲山は932.1メートル(くさにいちばん、と憶えた)六甲山の方が愛宕山より高い。
 つうわけで、神戸版「愛宕山」上方落語「六甲山」つうのを考えたで。

 神戸は元町で大きな中華料理屋を営むワンさん。きょうはお店はお休み。なじみの三宮へんのスナックやクラブのホステスや、ひいきの阪神タイガースの選手や、北野町のジャズバンドを引きつれて六甲山へ野がけに行きました。その道中の陽気なこと。ブンチャカブンチャ。ブンチャカブンチャ。
「着いたある。これが100万ドルの夜景あるよ」
「だんさん、かわらけ投げはおまへんのか」
「そんなもん、ないあるね」
「ほう、そやったら、ここでなにしまんねん」
「なにもしないある。夜景をめでるあるよろし」
 六甲山の山頂からの夜景は、ほんと、すごいもんです。
「うわあ。きれい。100万ドルの値打ちがあるな。もったいから片目で見まっさ」
「なんで片目で見るあるか」
「今夜は右目で50万ドル」
「で、左目は」
「こんど来た時のために取っておくんです」
「へー、それで」
「だんさん、10ドルほど貸しておくんなはれ」
「なんでや」
「うっかり、左目、うす目あけてしもうた」
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