近畿地方の古墳巡り!

歴史シリーズ、第九話「近畿地方の古墳巡り」を紹介する。特に奈良盆地・河内平野の巨大古墳・天皇陵の謎などを取上げる。

河内平野・河内王朝の役割とは!

2011年05月30日 | 歴史
ここまで、古市古墳群を巡ってきたが、はたしてこの古墳群の歴史的役割とは何であったかについて考えてみたい。

河内平野は、第15代応神天皇から第25代武烈天皇まで、いわゆる”河内王朝”時代の歴代天皇の宮都と陵墓の所在地。

確かに11人のうち8人の天皇の陵墓は現在の羽曳野市、藤井寺市、堺市に築かれている。

王陵が権力の中枢に近い地域に築かれるというのが歴史の大原則であるならば、河内王朝論は十分な根拠を持つ。

しかし、歴代天皇宮都の所在地のほとんどは大和盆地で、面白いことに、初代の応神天皇から、2代目の仁徳天皇、3代目の履中天皇、そして4代目の第18代反正天皇までは、宮都が大和-河内-大和-河内と交互に入れ替わっている。この事実をどう理解したら良いのであろうか?

河内王朝論を持ち出さなくても、ヤマト王権の基盤が4世紀後半には河内平野まで拡大し、そのときどきの政治的情勢で、振り子が揺れるように、その重点が大和と河内の間を移動した、とする説もある。

河内王朝は、応神からはじまり武烈までの11代にわたって現在の大阪府南部を基盤としていた巨大王権。









写真は上から、仁徳陵古墳の正面拝所及び三重のお濠、応神天皇陵正面拝所及び同サイドビュー遠景。

確かに、河内・和泉の大阪平野に、大仙古墳をはじめとして、政治的シンボルともいうべき巨大古墳が集中して築かれていることや難波に宮都が設けられていることから推して、大阪平野に強力な政治的基盤を有する権力が存在したことは事実であろう。

しかし、この王権の実態をどのように捕らえるかは、専門家の間でも意見が分かれている。

九州の勢力が応神または仁徳の時代に征服者として畿内に入ったとする説がある。

そうではなくて、瀬戸内の水上権を握って勢力を強めたこの地の自生勢力が、やがて大和へ入り、それまでの第10代崇神王朝を打倒したとする説もある、一方で、河内平野の開発などにともなう大和王権の進出と捉えるべきとする説もある。

4世紀後半には木製農工具に代わって、鉄製の鍬や鋤などが普及し、河川や湖の周辺の低湿地帯を干拓し、池や溝を掘って耕地を拡大することが可能になった。

それに加えて、4世紀末の高句麗の南下によって朝鮮半島南部にあった百済や伽耶諸国(朝鮮半島中南部地方)から大勢の人々が河内平野に移り住んだ。

彼らは様々な先端技術を倭国にもたらしたが、特に土木技術は優れたものであり、各地で灌漑用のため池や水路の建設を可能にした。

たとえば、石川から水を引いて当時の河内湖と結ぶ人工の水路だった古市大溝の主要溝渠(こうきょ)は5世紀前半には掘られていたとされている。

河内湖の水を難波の海へ流す「難波の堀江(現在の大川)」もこの頃掘削された。

こうした大土木事業によって耕作地が一挙に拡大し、河内平野は、ヤマト王権の基盤を支える重要な地域となった。

5世紀は「倭の五王」の時代で、ほぼ同時代に書かれた中国の正史『宋書』の倭国伝には、歴代の大王が南宋にたびたび使者を派遣して称号の除授を乞うている。

朝鮮半島南部の百済や伽耶諸国からは、高句麗との交戦の様子や軍隊の追加派遣を要請する使者が、たびたび倭国を訪れたと思われる。

そうした使節の往来に対してヤマト王権の権力の象徴ともいうべき巨大な王陵を、何処に築いたら一番効果的か?



写真は、大和川沿いの、羽曳野市と藤井寺市に跨る古市古墳群空撮。

いうまでもなく、河内は水陸交通の要である。しかし、ヤマト王権が所在する奈良盆地は水陸交通があまり便利なところではない。それに引き替え、古市古墳群が営まれた一帯は、大和川と石川の合流点に近い。

後に丹比道や大津道として整備される東西を結ぶ古道も存在した。

また、これらの古道の起点は、当時難波の海に注ぐ石津川の河口にあった。

古市古墳群や百舌鳥古墳群は、このように水陸交通の要を選らんで築かれた。

その目的は、対外的な権力の誇示であったと想像される。

もちろん、それだけが巨大古墳を築造のための要件のすべてではないが、権力の誇示のためには、その場所が肥沃な平野を見下ろす丘陵でなければならない。しかも、古墳の重量に十分に耐えられる強固な地盤のところでなければならない。

さらに、もう一つ忘れてはならない重要な要件は、5世紀代の王墓は大量の土を盛り、大量の河原石を葺き、そして膨大な数の埴輪を並べて飾り立てた。

即ち、土取りが可能な場所、葺石の入手や運搬が容易な場所、更には埴輪を作るためのハニ土が近くで入手できることも、必須の条件だったとされている。



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