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宇宙エンタメ前哨基地





チャールズ・リンドバーグの操縦で史上初の大西洋横断無着陸飛行に成功した飛行機「スピリッツ・オブ・セントルイス号」にはフロントガラスがない。
パイロットのリンドバーグは横の窓から景色を見ながら操縦したのだ。

「それってちょっと怖いんじゃない?」

と思う人も多かろう。
でも飛行機は前が見えなくても飛べるもの。
例えば艦載機は着陸する時に速度を落として浮力を得るために機首を上げる。
このため前方は空しか見えない。
着艦するところ、つまり空母の甲板は見えない。
それでも安全に着艦できるのは、今なら誘導装置があるけれども、それが使えなくとも第二次大戦のゼロ戦のように側面の窓から横の景色を見ながら着艦できる。

で、なぜセントルイス号には正面に窓がなかったかというと機首前方エンジン後ろ。つまり操縦席の前はすべて燃料タンクだったからだ。
大西洋を横断するために必要な燃料を積むために前のフロントガラスは犠牲になった。
このためリンドバーグは横の景色と小さな鏡で飛ぶことになった。

飛行機の歴史は航続距離への挑戦の歴史でもある。
1927年にリンドバーグが大西洋を横断に成功。
1931年には米国人クライド・バンクボーンとヒュー・ハーンドンの二人がミスビートル号で青森県からワシントン州までの太平洋横断成功。
世界一周無着陸無給油に成功したのはずーっと難しかったようで、1986年に二人の米国人が操縦する特製飛行機で成功。

そんなこんなで普通の旅客機が太平洋を無着陸で日米間を飛んだり、北極圏を飛び越えて日欧を飛ぶことはなかなか至難の技った。
日本からの欧米へのほとんどの便はアラスカのアンカレッジを経由するか日欧路線は東南アジア、インドなどを経由して2日掛かりで飛行していた。

これが1976年にジャンボジェット機のシリーズB747SPが登場して一変。

太平洋をひとっ飛びできるようになってアンカレッジを経由したりインドを経由せずに済むようになった。

スターウォーズ公開の明くる年。
高校生の時に私は初めての海外旅行でロサンゼルスの親戚宅へ行った。
このとき開港まもない成田空港から乗ったのがこの機種だった。
胴体は短いしずんぐりむっくりでめちゃ格好の悪いジャンボジェットだと感じたことが今も強烈に印象に残っている。
エアラインは今はなきパンアメリカン航空であった。

アンカレッジを経由せずともロサンゼルスへ直行。
でもひとっ飛びは直線コースでのひとっ飛びだった。

ロシアが時代錯誤なウクライナへの侵略戦争を始めた。
史上最大の経済制裁をロシアに課した欧米日はロシア領空を飛べなくなった。
畢竟最短コースを飛行していたそれぞれ直行便はロシア上空を飛ぶことができず、欧州や米国東海岸は別のルートを考えないといけなくなった。
ANAやJALのWEBサイトを見てみると「ダイヤ調整中です」のお知らせが。
これはきっと往年のアンカレッジ経由のコースで調整中に違いない。
時代錯誤な戦争が時代を逆戻りさせることになろうとは。
大いにショックなのであった。

確かにFlightrader24のWEBサイトで確認するとロシア上空を飛行しているのはロシアの親戚・中国か韓国の飛行機ばかり。

そんなこんなで、昨日の日曜夜もぼんやりとFlightrader24でウクライナ周辺やロシア上空など交戦状態の空域やロシアの上空を見ていた。
ウクライナ上空を飛んでいる民間飛行機はない。
ロシア上空も激減で先述の通りロシアの国内線か中国・韓国の飛行機がポツポツ飛んでいる。
日欧はどうなってんだ、と中央アジア付近の飛行機をチェック。
この付近はかなりの混雑だ。
ロシアを通れない分、このあたりに集中しているに違いない。
大中小いくつかの飛行機のアイコンをクリックしてチェックしているうちに少し大きな飛行機が飛んでいるのが目に止まった。

「なんやろこれ」

とそのアイコンをクリックしたところ、「FRA→KIX」と表示された。

「おお!こんなところを飛んどるがなー!」

なんとルフトハンザの国際線B747でフランクフルト発関西空港行きなのであった。
位置はウズベキスタンの南方。
普段であればシベリア上空を飛んでいるのだが、それができないので南回りの遠回り。
離陸後7時間近くが経過していて関西空港までは5時間弱と記されていた。
インドにも東南アジアにも立ち寄らずダイレクトに関空に向かっていた。
トータル12時間のフライト時間。

「こりゃ大変だけど、アンカレッジ通らなくといいのか」

考えてみれば時代錯誤の戦争を起こしたロシアのような国もある一方、科学は純粋に21世紀。
19世紀や20世紀とはひと味違う能力を持っていた。
今どきの大型航空機は太平洋だろうが大西洋だろうがユーラシアだろうが、途中給油することなく地球の反対側まで飛んでいくのは当たり前。
空路が少し延びたぐらいなら、いつもより少し多めに燃料を積んでどこへでも直接飛んでいくことが可能なのだ。

例えば私が見かけたルフトハンザのB747やB777、B787は約15000km飛行可能。
エアバスのA380もほぼ同等の航続距離。
グーグル・アースで距離を測定してみたら、パリ→大阪が普通なら9700kmほどの距離を11800km。
ロンドン〜東京9500kmが11400km。
大変なのが日本から一番近かったヨーロッパの都市ヘルシンキ〜大阪が7800kmから11800km。
昔と違って飛行機の能力で直行できる距離なのだ。

遠回りだけどダイレクトフライト。
長時間フライトも時代が違うのでパーソナルエンタテイメントなんかもあって、それほど退屈しないのかもしれないと思った。



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