<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地





書籍の世界はいま、宇宙ブームなのだという。
これは一昨年の「はやぶさ」以来、宇宙に対する関心の高まりに原因があるという説が有力なのだが、例えばいま、新しい惑星探査機が火星に着陸して活動をしていることを世の中の人が殆ど知らないことを考えると、このブームの原因や盛り上がり度には大いに疑問を感じてしまう。

かくいう私は、子供の頃は天文学者や宇宙飛行士を目指した時期も少しはあり、宇宙には今だ多大な関心を抱いている。
元々は昭和40年台に「火星大接近」があり、会社から帰ってきた父が「おい、生駒山行くぞ」と、ボーとしては私と母を無理やり連れ出し、途中のショッピング街で安もんの天体望遠鏡を購入し、観測したのが天文に興味を持つ発端だったが、決定的にしてしまったのは中学の時に見た深夜番組「宇宙大作戦」で描かれた恒星間旅行の世界だった。

ドラマの世界にはまってしまったその結果、私は天文に興味を持っただけではなく、理屈っぽい中学生になってしまったのであった。
その理屈っぽさは30年以上経過した今も踏襲されており、仕事上でも敵を作ってしまう原因になっている。
もし自分の子供がかわいいのなら「宇宙大作戦=スタートレック」は見せない方がいい。
ただ、この理屈っぽさは科学やDesignを考える上では重要で、物事を深くつきつめて考える癖がつき、それはそれでプラスの面であるということができる。

ところが、世の中には深く考え過ぎないほうが良い物がたくさんある。
例えば、冷凍食品を作っている中国の工場の衛生度だとか、美味しいはずの韓国キムチの漬け込み現場だとか、韓国人にとって竹島は本当は誰ものであることだとか、中国人にとって尖閣諸島や南沙諸島の領有問題はホントは誰が原因で発生しているのか、ということを韓国人や中国人が知ることである。

私にとっては、「宇宙の果ては何処にあるのか」とか「宇宙の外には何があるのか」とか「宇宙はなぜ存在しているのか」といった問題がこれにあたる。
中国人や韓国人は尖閣諸島や竹島の問題を普段は忘れている。
これが内政が混乱し、不況がやってきて、民主化、報道の自由化が叫ばれると思い出したように隣国の優等生を叩きたくなる時に思い出すのがそれぞれの問題だ。

私にとっても「宇宙の果て」問題は日頃意識しない課題なのだが、書籍「太陽系はここまでわっかた」(文春文庫)や「タイムマシンのつくりかた」(草思社)なんて本を読むと、こういうわけのわからない問題を思い出してしまい、思い悩むことになってしまうのだ。

大栗博司著「重力とは何か」(幻冬舎文庫)もまたそういう一冊なのであった。

日頃私たちの意識しない力に重力がある。
これは一体何なのか。
真剣に考えたことのある人はいるだろうか。
磁石でもないし、接着剤でもない。
あらゆるものは惹きつけ合う力、引力をもっているいるというが、重力なんて目にも見えないモノが、どうして力として作用しているのか。
川の流れなら水。
風の流れなら空気。
といったものがちゃんと存在するのに、なぜこれだけの力がある重力は何にも見えないし、存在しないのか。

考えただけでノイローゼになってしまいそうだ。

本書を読むと、重力は未だ発見されていないが、「粒」か「波」のようなものとして存在しているらしいのだ。
従って粒や波のような重力が作用することで、ゴルフのティーグラウンドで私のショットしたボールがコロコロとラフとフェアーウェイを転がっていくことや、何度ショットしてもバンカーからボールが飛び出さないことが証明できるようなのだ。

先日物理学会でセンセーションを巻き起こしたビックス粒子もそういうものの1つなのだそうだ。

こういうことを研究することはつまり、宇宙の形や成り立ちを研究することと同意であり、実に壮大な学問なのである、と思った。
しかしながら、実際には目に見えないものや、3次元だとか4次元だとか、果ては9次元なんてものが飛び出したらどう理解していいのか想像すらできなくなっていき、最期は「鬱」の世界に張ってしまいそうでなんだか怖いものがある。

本書は一般向け新書でとってもわかりやすく書かれているが、わかりやすく書かれているだけに、「それで?」と突っ込んでいくと益々鬱蒼とした思考の世界に陥りそうなだけにスリルのある科学本ということができよう。

そもそも本書を買った理由は、なんばの旭屋書店で平積みされている幻冬舎新書の「職業としてのAV女優」が面白そうだと思い、買おうとしたところ、嫁さんが、
「そんな恥ずかしいもん買わんとって」
というので、その隣に陳列されていた本書を手に取りレジに持って行ったことから今回の読書が始まったのであった。

AV女優という職業をする女性には、どのような社会的背景や人生が存在するのか。
決して恥ずかしい本(例えばエロ本)ではない、なかなか社会のディープエリアを取り上げたドキュメンタリーとして面白そうだと思ったのに、重力の世界を堪能することになってしまった。

なかなか読書をするのも難しいものである。

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