<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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猛烈に忙しかった年末のある日。
デスクワークがあまりにきつく肩こり、膝痛、腰痛、眼底疲労などが耐えられないくらい疲れてきたので、設計していたCAD作業の手を止めてYoutubeで気晴らしをすることにした。
「忙しいんちゃうの?」
と言われそうだが、いくらタフな私だからといってず〜〜っと集中できる時間には限界がある。
たまには仕事と何ら関係のない雰囲気を味わう必要があるのだ。

で、youtubeでなにげに検索していたら古い探偵ナイトスクープのエピソードが出てきた。
検索キーワードは何だったか忘れてしまったが、もしかすると「上岡龍太郎」だったかもしれない。

探偵ナイトスクープは関西の人なら知らない者はいないというくらいの人気長寿番組で私が大学を卒業した直後ぐらいから放送されているのでかれこれ30年になる。
この番組は視聴者からの依頼に基づいてタレントが調査に赴くという半視聴者参加番組なのだが、出て来るネタは超一級。
以前は完全な関西ローカルの番組であったため、この番組が元ネタの東京局制作のパクリ番組が氾濫していたこともあるくらいだ。
作家の百田尚樹がこの番組の放送作家出身であることも知られている。

発見したエピソードは25年ほどまえのもので、
「時代劇によくでてきて『先生、先生』と悪いやつらに呼ばれてはすぐに斬られて死んでしまう役どころの俳優さんがいますが、その俳優さんをぜひとも徹子の部屋に出してあげて欲しい」という内容なのであった。
夫婦共々その無名俳優のファンであるという依頼に基づき桂小枝探偵が太秦の東映撮影所に赴きその俳優・福本清三を見つけ出した。
その後、東京まで連れ出してホンモノの徹子の部屋のセットで女装をして桂小枝が黒柳徹子に扮してインタビューを始めるのだが、そこへ黒柳本人が現れ「なにをやってらっしゃるの?」と怒り心頭。
しかしその理由を知るに及び、興味をいだき、後日本当に「徹子の部屋」に出演してしまうという話なのだ。

私はこの話を噂では聞いていたが、見たのは始めてで大いに感動したのであった。
探偵ナイトスクープはただのお気楽娯楽番組ではないところがこういうところで、福本清三はこの番組をきっかけに大部屋の斬られ役俳優の中でも知る人ぞ知る存在になる。

「いや〜〜、面白かった」
と思い、試しにウィキペディアで福本清三の事を調べてみると、ナイトスクープ以上にビックリする内容が書かれていた。
なんと、2015年にこの福本清三を主演に一本の映画が撮られていたのだ。

「太秦ライムライト」

時代劇が無くなりつつある京都の伝統ある撮影所に所属をしている一人のベテラン大部屋俳優。
斬られ役専門のその俳優にスポットを当て若きスターとなる女優と撮影所の人々の姿を描いている秀逸のバックステージ物なのであった。
しかも私は全く知らなかったのだが、この映画はカナダの国際映画祭でグランプリを受賞。
主演の福本清三が主演男優賞を受賞していたのだ。

どんな映画なのか見たくて仕方がなくなった私は仕事を力づくで終わらせて年始に車で15分ほど離れたTSUTAYAでDVDをレンタル。
近所のTSUTAYAでは在庫してなかったのだ。
早速鑑賞したところ、映像は美しく、感動させ、泣かせる映画なのであった。
私自身、映画少年であった頃の感覚を思い出し、なんとも表現のしょうのない気持ちになったのであった。
ずっと大部屋俳優だった役者さんが主演だと、まわりの俳優はどういう態度をとるのだろうか。

鑑賞前、少し私は心配していた。
しかし、映画を見るとそういう心配はちっともないことがわかったのだ。
むしろそういうスターの後ろを支え続けた斬られ役俳優が主演することに、どれだけ太秦の人たちが力を合わせたのか。
映画を見終わった私は映画屋さんたちの心意気に大きく感動を覚えたのだった。

主演の福本清三。
それを松方弘樹や萬田久子、小林稔侍が、そして「木枯し紋次郎」や「極道の妻たち」の中島貞夫監督が本人役で支える。
よく練られた贅肉のない物語。
映画だけが表現できるであろう悲しいぐらい美しい映像。
人生模様。

斬られ役の物語。
今回斬られたのは私の心かもしれない。



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