<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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大阪駅からJRに乗って西向きに走り、神戸を過ぎ、鷹取あたりを過ぎると明石海峡の下をくぐった辺りから電車は海辺を走る。
景色がかなりいいのだ。
松林があり、砂浜があり。
海の向こうには淡路島が見える。

私はJR東海道線の藤沢以西はどこか海辺を走るイメージを持っていたのだが、それは誤りであることがわかった。
線路は海岸線のはるか内陸部を走っており、車窓は「海辺の雰囲気」すらない。
湘南モノレールの「湘南」という地名を聞いても、関西人である私には「須磨」とか「舞子」といった地名と同じように海辺を感じることはできない。
さらによくよく考えてみると、箱根駅伝の中継でも国道1号線と東海道線が平行に走っているところは皆無で、海辺を走っているのは江ノ電ということになる。

昔、テレビの青春ドラマで度々目にした江ノ電を一目見てみたいと思ったが、今回は観光ではなく仕事での移動なので断念した。
ちなみに鎌倉も行ってみたいところだが、これも断念。
江ノ島は東京から大阪へ戻る飛行機からたまに目にするので見る必要はない。
期待したほど面白い景色が見られないのは、かなりガッカリなのであった。

やがて国府津駅に停車した。
「御殿場線乗り換え」のアナウンスを聞くと、かつて東海道線はここから御殿場の山登り線が本線であったことを私の鉄道マニア部分の心が思い出した。
昭和9年までは、東海道線はここで機関車を増結して御殿場の急勾配を登って行ったのだという話を聞く度に、一度は乗ってみたい御殿場線と思っていた。
ここで乗り換えれば目的地の沼津に行くこともできるのだが、あまりに遠回りで面倒くさいのはじめから乗り換える予定はまったくなく、そのまま現行の東海道線を進むことにした。
ここで窓側の4人がけの席が空いたので座り直した。
これでやっと景色を楽しめるのであった。

電車が小田原に近づいた。
小田原というと歴史好きな私はいつも小田原城を思い出すのだが、新幹線で移動するときは小田原付近を走っているときは大抵寝ているか、仕事でノートパソコンをペコペコやっているか、ビールを飲んで悦に浸っているかのいずれであり、気が付くとだいたい通過してしまっている。
従って小田原のお城があるのかどうかも知らないし、見たこともなかったのだ。
もちろん私は秀吉の一夜城が現存するとは思っておらず、なにか我町大阪の大阪城のようなレプリカのお城が建っているのではないかと思っていた。
そしてその予測は正解なのであった。

電車が小田原駅を出発するとすぐに左手にこんもりとした山が迫ってきて、その頂に工事中の天守閣がそびえていたのであった。
工事中。
なんてことだ、お城が工事中でまわりが足場に囲まれている。
昭和の御代に再建されたという天守閣は足場設備に囲まれ何も見えなかった。
なぜなのだ?
どういうわけか私がお城を見に行くと「工事中」であることは少なくない。
実のところ多くもないがこれで三度目である。

最初は20年少し前に熊本を訪れた時。
私は前職の会社を退職し、今務めている会社に入社するまでの一ヶ月間、北九州周遊券なるものを購入して福岡、長崎、佐世保、平戸、伊万里、有田などを回る旅に出ていた。
熊本へは出発5日目に到着し、JTBの時刻表の巻末のホテル広告のページを見て前々日に佐世保の公衆電話から電話で予約したビジネスホテルに宿泊した。
そして熊本到着後の翌日。
朝食を食べて市電に乗り、意気揚々と古くは加藤清正の、そして江戸時代は細川家の、そして近代は西南の役で政府軍が立てこもった熊本城をひと目見ようと訪れてみると、なんと、工事中なのであった。

熊本城の天守閣は足場に囲まれ屋根瓦さえ見ることがてきなかった。
正直、熊本へ再び来る日が来るのかどうかわからなかったので、残念さは今感じる何倍もあった。
オリジナルの熊本城は先述の西南の役で西郷隆盛率いる薩摩の軍隊に全焼させられてしまっていたが、後に再建された熊本城が今あり、私はそれでもその実物を見てみたかったのだ。

ふたつ目はつい近年ではあるが、新幹線で広島へ向かう途中。
姫路駅を通過中の「のぞみ号」はここで時速300kmに達するのだが、その時、はるか駅舎の向こうに国宝「姫路城」が見えるはずであった。
「はず」というのは、一瞬しか見えないからで、その一瞬の目撃でさえ、
「なんて美しいお城なんだろう」
と思わせるリアルな風格があり、私は楽しみにしていたのであった。
ところがこの時は工事中。
なにやらトタン板に囲まれた四角い建築物が見えるだけで驚くほどガッカリしたことは、まだ記憶にあたらしいのであった。

ということで電車は小田原城跡の小山の横にあるトンネルに入った。
そのトンネルを抜けると左手に太平洋の美しい姿が広がってきた。

つづく

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