<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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電気自動車ブームに終わりの風が流れている。
これは私の勝手な触覚かもしれないが、様々な状況を鑑みると電気自動車が街中に溢れ、内燃機関の乗り物がクラシックカー扱いされる時代はついに来そうにないように思われる情報がチラチラと現れ始めているからなのだ。

ドイツがガソリン車の完全規制を撤廃したことが発表されたからではない。
それぐらいではびっくりすることはない。
原発廃止を掲げていたヨーロッパがロシアのウクライナ侵攻でエネルギー安保という意味合いで原発を捨てることはできないし、そもそも二酸化炭素排出削減に原発利用を除外することはできない。
したがって「口だけ規制」を謳っていたから、電気自動車への完全移行も同じではないかと考えていたのだ。

そもそも電気自動車の歴史は内燃機関の自動車とさして違いはない。
19世紀の終わりには電気自動車は実用レベルで登場した。
しかし普及しなかったのは充電器の問題があったからで、それは今とちっとも変わらない背景になっているのだ。
100年も経てば流石に技術力は上がってバッテリーの質もかなり上がっているものの、それでもガソリン車と同様の利便性で運営するのはかなりの無理がある。
価格も安くないし、そもそも原子力発電所の電力を利用することを考えないと電力量は足りないし、二酸化炭素排出規制の条件をクリアできない宿命がある。

マスメディアも電気自動車普及をすすめるメーカーや行政もこの「原発ありき」が背景にあることを黙り決めこみ、公に議論することもあまりない。

このような「臭いものには蓋をせよ」というような条件があるインフラを高い費用をかけて普及させるところに大きな無理がある。
有体に言えばインチキでもある。

CMでもそういう部分があり、例えば日産のEVのCMで飛行機よりも加速力があるような作品がオンエアされている。
そもそも内燃機関と電動モーターを比較した場合、電動モーターのほうがトルクがあって瞬発性があることは電車を見れば明らかだ。
だから飛行機よりも加速性が優れるというのは特別なことではない。
もし、それだけEVに必要の無い加速をさせて電力を消費しないのであれば、それは驚きだが、そういうことはちっとも表現されていない。
むしろ、ビジネスジェットとEVの加速度勝負はライバルホンダへの訳のわからない挑戦CMと受け取られなくないとも感じられる。

で、ここへ来て電気自動車がいらなくなる、という技術の実証試験が大阪で始まっている。
これは注目すべき日本発の技術だが、マスメディアは理解できないのか、EVメーカーの圧力なのか大々的に伝えられていない。
しかし経産省や大阪市のWEBサイトでは大々的にPRされている新技術なのだ。

それは、
「光触媒技術を使って水と空気中の二酸化炭素から石油を合成する」
という技術だ。

この技術、インチキではない。
光触媒は東京大学で30年前に開発・発見された技術で、今は空気清浄機や内装材の滅菌素材として使われている。
今、これを使って京都大学と仙台のベンチャー企業が人工石油の合成技術を開発し、今年になってついに大阪府と大阪市が力を入れて実証試験にこぎつけたものだ。
今、大阪の鶴見緑地公園で実証試験が行われている。
LEDUV光を使って光触媒で合成した人工石油で発電機を運転させているとのこと。
その生成費用は軽油にして1リットルが14円。
恐ろしくリーズナブルなのだ。

この光触媒で生み出される人工石油は燃やしても、再度で石油に合成できるのでゼロ・カーボンにカウントされる。
しかも運用は今までと同じ。
ガソリンに精製すると普通の自動車にも利用でき、さらに大量に生産する技術が近い将来完成すると、日本は産油国に仲間入りすることになる。
わけのわからない中東からエネルギーを購入する地政学的リスクもなくなるのだ。

コストもかかる、リサイクルも大変なEVではなく、内燃機関の燃費向上を図るとさゼロ・カーボンはEVよりも簡単だ。
太陽光を使うことができると、原子力も、必要なし。

電気自動車が単なるブームに今回も終わるのか。
この技術がブームに引導を渡しそうな予感が広がっている。


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