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三重県立美術館で開催されている「デンマーク・デザイン展」を訪れてきた。

デンマーク。
陶器のロイヤルコペンハーゲンやプラスチックブロックの「レゴ」が彼の国の代表製品だが、工業部品の世界では実験設備用のバルブ器具のブローエン社のような独特の製品を生み出しているところもある。
してその共通する特徴は「シンプルで優れたデザインである」こと。

今回の展示会は日本ではじめてのデンマーク・デザインにスポットライトを当てた展覧会ということで随分以前から気になっていたのだ。
どうしてこういう先進のデザインをテーマにした展覧会が東京でも大阪でもなく三重県という地方都市で開催されるのかも興味を引くところだった。

そもそも人口が600万人という大阪府ほどの大きさの国がどのようにしてその先進性を確保して個性豊かな欧州で存在感を出していくのかというところに「デザイン」がある。
カタチ。
色。
素材。
歴史。
社会性。
人。
など、幾つもの要素をつなぎとめ、それを構成して結果を生み出すのがデザインだが、デンマークの近代のそれは明らかにシンプルであることのようなのであった。

このシンプル。
実は日本の文化に大きく影響を受けているということも今回の展覧会では紹介されていた。

日本のデザインはできる限り無駄を省くシンプルさが特徴だ。
中には東照宮のようなケバケバなものも存在するのだが、建築であれば桂離宮のように装飾を省き全体の形状がシンボリックで自然と調和するものが尊ばれる傾向になる。
この「無駄を削ぎ落とした」形状は日本という存在を知った欧州ではそれなりにインパクトがあって、各国の芸術や産業にも影響を及ぼした。

今回の展覧会では家具が多く展示されていた。
中でも見どころはケネディ大統領が座ったという椅子なのであったが、注目すべき点は別のところにあった。
つまり無駄な装飾を与えずに機能性を確保して、なおかつあらゆる時代にまっちするような洗練された落ち着きが存在しているということかもしれない。
派手な色使いももちろんないが、原色のケバケバしさではないマットな色彩感覚は豊かで温かみもあるのだ。

ふとそこで気がついたのだが、三重県は伊勢神宮の擁した聖地でもある。
伊勢神宮は1300年以上に渡り式年遷宮という儀式を通じて20年おきの社殿の作り変えを続けている。
社殿はもちろん日本を代表する建築であると同時に、そのデザインは他の神社・仏閣にも大きな影響を与え続けている。

そのシンプルさと日本のデザインの基幹の一つを抱える三重県の美術館がデンマークのシンプルなデザインを取り上げるのは至極当然だったのかも。
強烈なポジティブな印象を残した素晴らしい展覧会なのであった。









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