goo

アリオラムスの頭骨を観察しよう(6)



頬骨は左側しか見つかっていないが、左の頬骨はほとんど完全に保存されている。頬骨には、上顎骨および涙骨と結合する前方突起anterior ramus、後眼窩骨と結合する背方突起dorsal ramus、方形頬骨と結合する後方突起posterior ramusがある。
 頬骨の外側面は全般に平滑であるが、前方突起から眼窩の下にかけて粗い部分がある。アリオラムス・アルタイの頬骨で最も顕著な特徴は、眼窩の後縁の真下で側方に突出した骨の突起で、これを頬骨小角jugal hornlet という。頬骨小角jugal hornletは、他のどのティラノサウルス類にもみられないもので、アリオラムス・アルタイの固有の特徴である。ただしアリオラムス・レモトゥスについてははっきりしない。Kurzanov (1976)はこの部分に「角質で覆われていた可能性のある、結節のある表面」という記述を残している。

ティラノサウルス類全般には、眼窩の下方にこれとは別の構造がある。頬骨の腹側縁にある突起で、(頬骨の)角状突起cornual process (of jugal) という。角状突起はアリオラムス・アルタイにもあり、はっきりしている。これはビスタヒエヴェルソル、アルバートサウルス、ゴルゴサウルスなどと似ている。この突起はティラノサウルスの成体でははっきりしない。一方、ダスプレトサウルス成体では最も顕著であるという。



頬骨は、他のティラノサウルス類と同様に高度に含気性である。前方突起の外側面で、前眼窩窩の後腹側部分にあたるところに、大きな含気窩pneumatic recessがある。アリオラムス・アルタイでは、2つの穴がつながったような、ピーナッツ形をしている。つまり含気窩の前方ポケット(app, anterior pocket of pneumatic recess)と後方ポケット(ppp, posterior pocket of pneumatic recess)という2つの穴からなっている。他のティラノサウルス類では、多くの場合、後方ポケットしかない。前方ポケットが存在する場合でも、それは小さく後方ポケットとつながっていない。アリオラムス・アルタイの後方ポケットの形は、ゴルゴサウルスのものとよく似ており、涙形teardrop-shapedで45度傾いている。一方、ダスプレトサウルス、タルボサウルス、ティラノサウルスの含気窩は一般に小さく、水平または垂直であるという。またタルボサウルスの含気窩は、より円形に近いという。


タルボサウルスでは含気窩が1個で円形に近い
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )