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アリオラムスの頭骨を観察しよう(7)





口蓋骨は、左右ともほとんど完全に保存されている。口蓋骨は四放射状で、4つの突起からなっている。上顎骨突起maxillary process、頬骨突起jugal process、鋤骨翼状骨突起vomeropterygoid process、内側突起medial processである。口蓋骨は頭骨内部の骨であるが、一部は前眼窩窓を通して見ることができる。

鋤骨翼状骨突起vomeropterygoid processは背方にのびている突起で、上方突起ascending process、背内側突起dorsomedial processなど他の名前でもよばれる。アリオラムス・アルタイでは、鋤骨翼状骨突起が前後に拡大しており、前方突起anterior projection と後方突起posterior projectionがある。後方突起は短いが、前方突起は非常に長く伸びて、先細りの三角形をしている。このような形態は他のティラノサウルス類と比べて特徴的である。
 タルボサウルスとティラノサウルスでは鋤骨翼状骨突起の上端は拡大しておらず、長方形をしている(前方突起と後方突起はあるが、短い)。アルバートサウルスとダスプレトサウルスでは上端が拡大しているが、尖った先端に向かって先細りになってはいない。アリオラムス・アルタイの鋤骨翼状骨突起の形は、アパラチオサウルスと似ている。

頬骨突起の基部付近に、大きく深い含気孔である口蓋骨窩palatine recessがある。アリオラムス・アルタイでは、口蓋骨窩が鋤骨翼状骨突起の後端よりもずっと後方までのびている。このことはBrusatte et al. (2009) ではアリオラムス・アルタイの固有形質とされたが、ダスプレトサウルスの少なくとも一つの標本にはみられる。しかしそれ以外のティラノサウルス類にはみられない。他のティラノサウルス類では、口蓋骨窩は鋤骨翼状骨突起の後端よりも前方にあるか、ちょうど後端の位置にある。


ティラノサウルス(スタン)の右の口蓋骨。長方形というのは四角いテーブル状ということかと思われる。左の口蓋骨では鋤骨翼状骨突起が欠けているらしい。
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