goo

アリオラムスの頭骨を観察しよう(5)




大きい画像

今回、最もがっかりしたのは後眼窩骨である。まず図をご覧下さい。

後眼窩骨はT字形で、前方突起、後方突起、腹方突起からなる。前方突起の腹側縁、つまり眼窩の後背方部分の上にあたるところに、最も顕著な粗面がある。アリオラムス・アルタイでは、ここにごつごつした稜があり、細かい溝と結節からなっている。この稜は、ティラノサウルス科にみられる角状突起cornual process (of postorbital) と相同なものである。
 後眼窩骨の角状突起は、ディロング、グァンロン、シオングァンロン、ラプトレックスのような基盤的なティラノサウロイドにはない。一方、ティラノサウルス科とビスタヒエヴェルソルでは、眼窩の後背方部の上にごつごつした隆起がある。多くの種類ではアリオラムスよりも大きく膨らんでいて、角といわれるような突出した構造に発達している。これはアルバートサウルス、ビスタヒエヴェルソル、ゴルゴサウルスにみられ、タルボサウルスとティラノサウルスで特によく発達している。最も発達した「角」はダスプレトサウルス成体にみられるという。
 アリオラムス・アルタイの角状突起は低い稜状で、ダスプレトサウルスの幼体と最もよく似ている。Kurzanov (1976) の図と記述によるとアリオラムス・レモトゥスも同様で、はっきりと膨らんではいないという。

Gaston社の「産状」頭骨では、あれ?確かにこの位置に角状突起があるのはいいが、膨らみすぎである。こんなに取っ手状に張り出してはいないはずである。このレプリカでは角状突起の後方にはっきりと崖ができており、ホロタイプの写真とは違いすぎる。「眉メイク」にもほどがある。

アリオラムス・アルタイのホロタイプの腹方突起には、眼窩の中に突出した眼窩下突起suborbital processはない。これはゴルゴサウルス、ダスプレトサウルス、ティラノサウルスの幼体と同様である。一方、多くのティラノサウルス科には眼窩下突起がみられる。Brochu (2003) は、眼窩下突起はタルボサウルスとティラノサウルスにみられ、ダスプレトサウルスでは萌芽的状態としている。またアルバートサウルスとゴルゴサウルスには眼窩下突起はないとしているが、Currie (2003) によると大型の個体にはある。眼窩下突起の大きさや形は成長段階により変化するもので、ティラノサウルス亜科でもアルバートサウルス亜科でも幼体にはない。

Gaston社の「産状」頭骨では、あれ?なんであるの?しかも形がどうも不自然である。腹方突起の先端が二股に分かれていて、そこに妙な楕円形の部分がある。これが本来の腹方突起の先端であるようにみえる。つまり、無理矢理、眼窩下突起を作ったようにみえる。眉メイクだけではなく、「つけまつげ」もつけられている。

要するにこの「産状」頭骨レプリカは、ティラノ・タルボ風にメイクされている。(激怒)この方がなんとなく見栄えがすると思ったのだろうか。


タルボサウルス(亜成体か若い成体と思われる)では角状突起が発達し、眼窩下突起もある。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )