tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

山犬は眠れない

2011-03-08 22:52:04 | プチ放浪 都会編

 
 
 
 

パナマで暗殺任務にあたるアメリカ軍の狙撃兵を、トム・ベレンジャーとビリー・ゼインが演じた「山猫は眠らない」という映画があった。(原題"Sniper"、1993年公開)。。
主人公のモデルは“ベトナム戦争の英雄”カルロス・ハスコック。アメリカ海兵隊の経験豊富な狙撃兵だ。主人公はパナマ人の麻薬王を狙撃するため、経験が浅いが腕のいいSWATの狙撃兵とチームを組む。狙撃シーンを筆頭に、ジャングルの景観など美しい映像が印象的な映画だった。

さて、成田19:30発のエアバスA330-200。香港到着は日本時間の24:40。古い街並が続く九龍城(Kowloon City)へ到着したのは、他の数か所のホテルへツアー客を案内した後の午前2時(日本時間)のことだった。
「香港なんて1日あれば全部見て回れる」
台湾の友人が言っていたのだが、実際には1998 年の空港移転後から、周辺には新しい高層ビルが立ち並び、新らたに人々もやってきた九龍城は、午前2時を回っても古びた低層階の建物に挟まれた薄暗い街路に人通りが途絶えることはなく、・・・眠らない庶民の街だった。

建物すれすれに離着陸を余儀なくされ、世界一着陸が難しい空港として有名だった香港啓徳空港。その空港に直結していた「富豪東方酒店(Regal Oriental Hotel)」。市内の中心からはだいぶ離れ、MTR沿線ではないことから日本人旅行者がめったに使わないホテル。だが、このホテルのある九龍城周辺は香港人が集まるローカル色豊かなエリアだ。

前に香港を訪れたのは、今から20年前。1991年のことだ。九龍城砦が取り壊される直前の頃で、当時は、約200m×120~150mのごく狭い土地に5万人もの人々がひしめき合って暮らしていた。人口密度は約190万人/km2で世界で最も高く、なんと畳1枚の広さに対して3人の勘定である。

イギリスは、中国清朝から香港島や九龍に隣接する新界、及びランタオ島をはじめとする香港周辺200余りの島嶼部を99年間租借したのだが、九龍城砦は例外として租借地から除外され清の飛び地だった。中国大陸が中国国民党率いる中華民国となってからも、九龍城はどこの国の法も及ばない住民たちの独自のルールが施行された非法治地区だった。
この非法治地区に、中国大陸からの流民がなだれ込み、バラックを建設。その後、九龍城はスラム街として14階もの高層建築へと拡大していった。法律を無視して勝手につくった世界最大規模の巨大建築は、「東洋の魔窟」と呼ばれ、「アジアン・カオス」の象徴的存在だった。

20年前に香港を訪れたのは、まさに香港政庁が無法地帯の九龍城砦を取り壊し、住民を強制移住させる直前の頃。当時は、俗に「ここに足を踏み入れると二度と生きて出られない」などと言われていて、一般の旅行者は、危なすぎて九龍城砦(正式には(九龍塞城(Jiulong Saicheng)))の中どころか、周辺にさえ近寄ることができなかった。

九龍城砦に住む住民の猛抗議の中、1993年にはあっさりと取り壊されて、現在は「九龍寨城公園」と名付けられたきれいな公園となり、香港の観光名所になっている。
夜明けのころに、迷路のように入り組んだ公園内の通路を行けば、あちこちでお年寄りたちがゆったりとした動作で、太極拳をしている。写真屋にとって、まさに九龍塞城は眠れない町だ。


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