欧州・米国・東欧諸国の軍事同盟「NATO」の拡大によるロシアへの脅威から祖国を防衛するためを、ウクライナ全土への侵攻の第一の理由にあげていたロシア・プーチン大統領だったが‥。そのプーチンの侵略行動は、かえってNATOの拡大を招き、そして世界を分断していった。
彼のウクライナ軍事侵略の本当の、最も大きな理由は、「自己権力の永続化」と「ロシアの民主化への恐れ」だ。そして、「歪んだ歴史観と野望による領土拡大と世界の分断」ということに尽きる。そしてそのロシアに同調支援したり、経済的実利により吸い込まれる多くの「様子見」の国々による実質的な支援構造。それに対抗する欧米日豪カなどを核とした民主主義諸国との戦いの様相をきたしている。5カ月間を経た戦争の行方は、いつまで続くのか、いまのところわからない。今年中に一応の停戦を迎えるのか、1年以上続くのか‥。
6月30日付朝日新聞には、「北欧2カ国NATO加盟へ―トルコ一転容認、対テロ協力が条件」「(NATO)戦略改定 対ロ・対中国」「NATO拡大(方針)続ける」、7月1日付同紙には「NATO、アジアとの連携—米大統領"中国が国際秩序に挑戦/NATO首脳会議閉幕」、「要衝の島(スネーク島)、ウクライナ奪還—穀物輸出の再開焦点」などの見出し記事。7月1日付読売新聞には、「ウクライナ兵器欧米化―長期支援を確認」「対中国、戦略の柱—露は敵、新たな鉄のカーテン」などの見出し記事。
7月上旬のABC(朝日)放送の報道番組「大下容子ワイドスクランブル」。7月4日・5日にスイスで開催された「ウクライナ復興会議」のようすを伝えていた。この会議には日米欧など40ヵ国余りとEU諸国、NATO諸国、ウクライナなどが参加。開幕式では、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインを通じて、「ウクライナの再建は1国のプログラムではなく、民主国家世界全体の共通の課題」であると訴えた。
現時点での復興に要する費用は7500億ドル(100兆円)以上の巨額となると報告された。この会議に出席したウクライナのシュミハリ首相は、「この費用は、主に、ロシアのオリガリヒ(新興財閥)から欧米諸国が没収している(凍結している)資産などをあてるべき」などと述べていた。戦争終結又は停戦となれば、当然に、この復興にも使われる巨額の賠償金額の全額は、ロシア国家が支払うべきものではあるが‥。
同報道番組では、「窮地 ウクライナ兵"苦渋の撤退"―東部の拠点をロシア制圧」との報道も。長期戦となり、ウクライナ軍の兵士及び義勇兵の間にも、先行きの見えにくい戦況に、極度の不安と疲れが蓄積されていて、戦線離脱を望む人も出始めてもいるようだ。
7月5日付朝日新聞、「平和を取り戻せるのは今—ゼレンスキー氏、日本の学生に講演・東洋大学」の見出し記事。7月4日、東京にある東洋大学講堂で、学生たちに対してゼレンスキー大統領がオンライン講演を行い、学生たちの質問に答えたことが、大下容子ワイドスクランブルでも報道されていた。同大学にはウクライナからの留学生を、この戦争が始まってから12名を受け入れてもいる。
7月5日付朝日新聞、「ロシア・ルハンスク州制圧、ドンバス支配へ攻勢」「消耗戦の末、東部1州制圧—ロシア・予想以上に時間・戦力消費」、「愛国心と命のはざま—ウクライナ軍の前線、武器足りず劣勢、"疲れた"と戦線離脱望む声も」などの見出し記事。
7月下旬、ウクライナ侵略戦争が始まって5カ月間が経過した。ウクライナ東部のドンバス地方(ルハンシク州・ドネツク州)で、ロシア軍はこの5月・6月の2カ月間余り、軍を集結させて攻勢をかけてきた。そして、7月上旬にルハンシク州全域を制圧、さらにドネツク州全域の制圧に向けて軍事行動を行っている。一方のウクライナ軍は、ウクライナ南部ヘルソン州でのロシア軍制圧地域への反転攻勢を行ってきている。欧米からの新たな支援武器(高機動ロケット砲システム「ハイマース」[射程80km]など)が一部ではあるが、ようやく戦線に届き始めてもいるようだ。
6月29日、プーチン大統領は、「現在の目標は?」との質問に、「ドンバスを解放し、その国民を保護し、ロシアの安全を保証する条件を整えること、それだけだ」と語る。また、7月4日には、「ルハンシク州制圧に勝利をおさめた部隊は休息し、戦闘能力を高めるべきだ」と語る。6月29日、米国ヘインズ国家情報長官は、「プーチンはまだ、ウクライナの大部分の占領を狙っている」との見方を示した。
7月23日、ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、「軍はこの地域(ヘルソン州)で一歩一歩前進している」と述べ、反転攻勢に転じたことを示唆していた。ロシア軍は東部ドンバス地方での支配地域の拡大を目指しているが、進軍のペースは失速している。英国国防省は、7月25日付の報告で、「ロシア軍司令部が、ドンバス地方の作戦とヘルソン州での"防衛"のいずれに戦力を重点投入するかでジレンマに立たされている」と分析している。
7月21日、英国の対外情報機関・秘密情報部(M16)のムーア長官は、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍について、「失速し、力を失う寸前にある」とする見解を明らかにした。長官は、「今後数週間、人的資源の供給がますます困難になるだろう」と述べ、ロシア軍が作戦行動を何らかの形で一時的に停止せざるを得なくなる可能性を指摘した。
7月22日、ゼレンスキー大統領はインタビューに応じ、「ロシアがウクライナ領土を支配し続ける形での停戦はさらなる紛争拡大を招き、ロシアに次の作戦に向けて軍の立て直しを図る絶好の機会を与えることになると危機感を示したうえで、2月24日のロシア軍侵略戦争後の失地回復なしでの停戦には応じない」と語った。これは、プーチン大統領が、「ゼレンスキー氏が戦闘停止につながる外交的解決を望んでいない」と非難したことに対して、反論したものだ。
また、このインタビューで、ゼレンスキー大統領は、武器や支援を提供する諸国に謝意を示しながら、「防空システムが早急に必要」だと訴えた。ロシアが前線から遠く離れたウクライナの都市に長距離ミサイルを打ち込むのを阻止するには、ミサイルを打ち落とす防空システムが不可欠との考えを示した。米国とドイツは供与を約束したものの、いまだにウクライナに届いていない。2月以降に国外に脱出したウクライナ人は600万人以上に上り、今もその大半は欧州にとどまっているが、この防空システムが備わらないと、不安のため、国内になかなか戻れないので、経済も機能できにくいとも語る。
7月9日朝日新聞、「G20分断あらわに―外相会合閉幕/対ロシア 構成国の立場様々」の見出し記事。この記事によると、対ロシアの立場は次のようになる。①「3月7日の国連総会ロシア非難決議及び対ロシア経済制裁などに参加」(G7諸国[米国・カナダ・日本・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア]、オーストラリア、韓国、欧州連合[EU])。 ②[3月7日のロシア非難決議に賛成も、経済制裁などに参加せず」(ブラジル・トルコ・メキシコ・サウジアラビア・アルゼンチン・インドネシアの6カ国)。③3月7日のロシア非難決議には棄権、及び、経済制裁などに参加せず」(中国・南アフリカ・インドの3カ国)。 G20の20ヵ国中、①は10ヵ国・地域、②は6カ国、③は3カ国。ロシアを含めると②と③で10ヵ国。G20は、今年は11月15・16日にインドネシアで開催予定。
先週、中国のインターネット記事を閲覧していたら、ゼレンスキー大統領が泣き顔で降伏文書に署名しているとするフェイク動画が見受けられた。このような動画を容認していることからも、中国政府のこのロシア・ウクライナ侵略戦争への対応の一端が見て取れる。(上記・2枚の写真)
7月21日、久しぶりに立命館大学に行くこととなった。「大学院修了証明書が、来学期からの新規就労ビザ取得に必要」との連絡が閩江大学からあったからだ。立命館大学の独立研究科事務室前に、「ウクライナ戦争と経済制裁」と題された講座のチラシが置かれていた。6/13「制裁と外交・軍事戦略」、7/11「制裁の主体」、8/1「"民"の制裁」の3回シリーズの講座のようだ。
大学からの帰り、三条川原町にある「六曜社珈琲店」に入り、店内に置かれた京都新聞を読んでいると、「侵攻と平和—中学生の対話/ウクライナ"武器が必要。戦争に勝つしかない"、広島"過去変わらぬ。未来は変えられる"」の見出し記事。7月9日、日本の広島市の中学生40人と、ウクライナの中学生4人との、オンラインでの交流会が行われたとの記事。ロシアのウクライナ侵攻についての思いを、日本の中学生たちに伝えていた。記事は以下のように伝えていた。
‥‥。日本の中学生の「平和な世界になるためには何が必要だと思いますか」との質問に、ウクライナの中学生たちは、「武器が必要です。武器がないと平和をつくることはできません。武器があれば戦争で勝つことができます。戦争に勝ったら平和になると思います」と語っていた。この言葉に広島の中学生たちは、ショックを受けた。自分たちと同じ中学生が、武器を持つべきだとはっきり言うなんて。「戦争に勝つしか、平和への道はない」。そう考えざるをえなくなった彼らの気持ちを想像した‥。‥。
「戦争に勝つしか、平和への道はない。」この思い、この言葉。真実だ。プーチンのロシアに勝つしか、平和への道はないのだろう‥。
■ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって2カ月後の4月下旬頃から、ウクライナ人学生の受け入れが、日本の大学や日本語学校で少しずつ増え始めた。5月中旬時点では、27の国公立・私立の大学が受け入れを表明、28の日本語学校も受け入れを表明していた。大学・日本語学校共に、学費免除、住居提供、そして月々の生活費として8万円前後を支給するという。(上記写真は東洋大学でのウクライナ人理由学生の日本語授業)
京都市にある大学では、京都大学、立命館大学、同志社女子大学、龍谷大学、京都先端科学大学などが、ウクライナからの緊急留学生受け入れを行っている。また、京都市内の日本語学校「日本語センター」でも留学生を受け入れている。
今日7月27日付朝日新聞、「民主派死刑執行を非難 ミャンマー国軍に日米欧」の見出し記事。同紙社説には、「ミャンマー 国軍の罪こそ直視せよ」の社説記事が掲載されていた。26日の政治犯4人の死刑を執行したことを受けての記事だ。この4人は、ミャンマー国軍によるクーデターに対する抗議活動で刑務所に収監されているうちの4人だが、アウンサンスーチー氏の側近もいる。
朝日の社説には、「中国の王毅外相は今月、政変後初めてミャンマーを訪ね、経済関係の強化などで合意した。中国はかねて民主派にも一定の配慮をしてきたが、ここにきて軍政側に一歩近寄った。ミンアウンフライン国軍最高司令官は直後にロシアを訪れ、軍事協力や合同訓練について協議した‥」とも記されていた。
この6月、アウンサン・スーチー氏(76)は、6月22日に、軟禁場所から刑務所に移送され独房に入れられた。ロシア軍によるウクライナ侵略は、世界を分断し、ここミャンマーの軍政政権も欧米日などの諸国の非難を気にしなくなり、中国・ロシアとのパイプをこの6月に再確認し、ミャンマー軍事政権は死刑執行に踏み切り、アウンサン・スーチーを独房に収監した。この6月19日(スーチーの誕生日)、東京の国連大学前で、在日ミャンマー人たちが集まり、アウンサン・スー・チーの無事を祈ったところだつた。