彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本震撼、安倍元首相凶弾テロに倒れる➋―恨みに思い続けてきた宗教教団、山上徹也容疑者とは

2022-07-12 10:04:36 | 滞在記

 7月10日付京都新聞には、「安倍元首相銃撃—母が寄付、宗教団体 恨む―容疑男、安倍氏と関係憶測/前日、岡山でも狙ったか」「安倍元首相銃撃—真面目な印象 今年に入り変化/5月まで府内工場勤務 /同僚と口論、無断欠勤」の見出し記事が、同日付朝日新聞には、「母入信 献金で生活苦—容疑者の親族が証言」の見出し記事が掲載されていた。

 7月8日に、「宗教団体に恨みがある」として、その宗教団体とつながり深いと憶測した安倍元首相に対して、銃殺テロを起こした山上徹也容疑者とは、いったいどのような人物なのか?、また、その「宗教団体」とはどの宗教団体なのか?。安倍氏とつながりの深い宗教団体として、まず、うかんでくるのは「統一教会」と「生長の家」だったのだが‥。でも、「生長の家」と安倍氏とは2017年頃から関係が微妙なはずだが‥。そうすると「統一教会系」か‥。

 そんなことを思いながら、インターネットのYahooを検索すると、7月8日からすでに「統一教会と安倍晋三氏とのつながり」「山上容疑者の恨む宗教団体とは統一教会」などの記事がたくさん掲載され始めていた。翌日9日に入ると、「山上徹也容疑者とは?」に関する記事も掲載され始めていた。

 一般のマスコミ(テレビ局・新聞)は、この「宗教団体名」を正式に公表することはなく、昨日までに至ってはいるが、さまざまな国内外の報道機関(ワシントンポスト紙など)が9日~10日にかけて統一教会(現在の教会名は「世界平和統一家庭連合」)にすでに問い合わせをし、「世界平和統一家庭連合」日本支部広報担当者は、山上徹也容疑者の母が会員であることを認めているので、9日中には「山上容疑者が恨む宗教団体とは統一教会」であることがほぼ周知のこととなってはいた。

 山上徹也とはどんな人物なのか。1980年又は81年に三重県で生まれている。両親と兄・妹との5人家族だったが、5歳の頃に父親が死去したともされる。このため、母親の実家(徹也容疑者の祖父が一人暮らす)である奈良市に転居。奈良市の西ノ京と呼ばれる薬師寺や唐招提寺などが近くにある地区であった。

 1996年に奈良県県立郡山高校に入学している。この高校は、奈良県内屈指の歴史と伝統がある名門高校(文武両道の進学校)。大和郡山城の二の丸跡地にあるこの高校には、二度ほど行ったことがあるが、名門高校の佇まいだ。奈良市の西の京地区からも、近鉄電車で二駅目とほど近い。この高校では、山上徹也は応援団と文芸部に所属し1999年に卒業。

 この頃までは山上徹也容疑者も、家族とともにそれなりに平穏な暮らしだったのだろうが、頼りにもしていた祖父も亡くなる。母親が、統一教会に入信したのはこの祖父が亡くなってからだろうか…。母親の心の中に、さまざまな不安が大きくなった時期でもあったのだろうか。1999年にはこの実家を売却し、奈良市内の賃貸に転居した。実家売却の理由は、この入信とも関連があるのかもしれない‥。そして、2002年に母親は自己破産を申請したとされる。

 高校卒業後、山上徹也は同志社大学工学部に入学したが、学費が続かなくなり中退を余儀なくされたとも、専門学校に行ったともネットでは報道されてもいるが、この時期の真偽のほどは今のところ不明だ。ただ、祖父の死去、母親の統一教会入信と教会への多額?の寄付行為、新たに暮らし始めた賃貸住居の家賃の滞納、母親の自己破産など、家庭はなかなか大変な状況だったことが推測はされている。

 私は、とても身近な家族の一人が新興宗教に入っているだけに、新興宗教などに入信する人の気持ちもある程度わかる。それがその人の人生の生きる救いにもなることを。だが宗教によっては家庭崩壊に陥るケースがあることもよくある。特にこの統一教会なども、長年、社会問題になるほど、この家庭崩壊がよくおきる新興宗教の一つだった。多額の寄付・献金や霊感商法、集団結婚などの問題だ。「カルト宗教」と呼ばれもしていて、政治的な面も強い宗教団体でもあった。

 2003年から2006年の三年間、山上徹也は海上自衛官となっている。任期制自衛官と呼ばれる任期(海上自衛隊は約3年、陸上自衛隊は約2年、航空自衛隊は約3年)制の自衛官だ。任期を終えると、再延長としてさらに自衛官の職務を続けることもできるし、除隊して民間企業などに勤めることもできる。除隊後、山上徹也は地元の奈良県に戻り、さまざまな仕事を経ながら奈良市内のアパートで一人暮らしを続けていた。2020年からは、派遣社員として、京都府内の工場でフォークリフトの運転手として荷物運搬の業務に携わっていたが、2022年5月にこの工場を辞めていた。(奈良のアパートから車やバイクで京都府内の工場まで通勤。)

 山上徹也容疑者(41歳)とは年齢の少し若い息子が私にはいるが、この35歳~45歳の年齢の人たちは就職氷河期ともよばれる平成不況の時期に大学や高校を卒業している。2000年代に入り、小泉内閣のもと、竹中平蔵氏らによる新自由主義政策による非正規労働者の拡充が図られ、非正規(バイト・派遣労働者・契約社員など)労働者がとても多くなり始めた時代でもあった。山上容疑者自身も、不安定なこの非正規労働者として働きつづけてもいる。名門高校を卒業したにも関わらず、このような境遇、とりわけ高校の同窓生たちの多くは難関国公立・私立大学を卒業し、それなりの会社などへ正社員として就職しているのに、私の境遇は‥。といった思いもあったかと推測もされる。5〜6年前には、山上徹也容疑者の兄が自殺(病気を苦にして)しているとも伝わる。

 「家庭崩壊」と「不遇な我が身」、このような境遇となった最大の原因は、あの「統一教会教団だ」との恨みはひときわ強くもち続けたのだろう。「教団をいつか成敗してやりたかった」という思いを奈良県警の取り調べにも話しているようだ。(この気持ちは理解はできる部分はあるが‥)   この安倍元首相銃撃テロは、ここ10年でよく起きている「多くの人々を殺傷する通り魔殺人」、「障害者施設での殺傷事件」、2019年に起きた「京都アニメ放火殺人事件」などとも、ある種共通した事件などとの社会的・個人的背景もあるような気もしている。「世間に自分の苦悩と、そしてこれまでその苦悩の中で生きてきた存在を知らしめたい」との‥。1年ほど前から、このような事件を起こすことを考え始め、爆弾や銃などを試作しはじめたと、奈良県警の取り調べで語ってもいるようだ。

 では、なぜ安倍元首相にその凶弾を向けたのだろうか。統一教会系の教団とはどんな教団なのか‥。次号へ‥。