彦四郎の中国生活

中国滞在記

安倍元首相の国葬は国民世論を二分、憲法改正の議論は"必要だが、急ぐべからず"との世論かな

2022-07-23 09:49:34 | 滞在記

 2022年7月10日に行われた参議院議員選挙は、自民党や日本維新の会が議席を伸ばし、立憲民主党や日本共産党が議席を大きく減らすという結果となった。全国的には岸田政権の圧勝、立憲や日本共産党の完全敗北の感がある。私が暮らす京都選挙区(2人区)では、自民候補が先行し、立憲と維新の会の候補が2議席目を激しく争い、立憲の前幹事長・福山哲郎が僅差で当選した。日本共産党は、国政選挙の候補者としては、候補者がとてもさえなかったことや、維新の会の京都府内での影響力浸透もあり、13万票余りだけの得票となり、とても大きく得票を減少させた。(前回2019年の参議院選挙では、京都選挙区の日本共産党倉林候補は25万票余りを獲得し当選していたので、今回は約50%減の得票となり大敗北。)

 選挙後の11日~12日、NNN(日本テレビ系列)と読売新聞の共同世論調査が実施された。その世論調査結果について、日本テレビ(日テレ)が、「改憲議論が活発に行われることを期待、半数以上に」と題して、次のように報道していた。①Q:岸田内閣を支持するか➡支持する65%、支持しない24%、②Q:憲法改正に向け議論が活発に行われることを期待するか➡期待する58%、期待しない38%、③Q:今後、岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題とは➡「景気や雇用91%と最も高い」、「憲法改正37%と、10項目中最も低い」などとなっていた。

 今回の選挙結果を受けて、改憲に向けて必要な衆議院・参議院のそれぞれ3分の2以上の議員数(自民・公明・維新・国民)がそろったことともなった。(自民・維新・国民は改憲に積極的、公明は慎重だが‥) 共同通信も11日~12日に世論調査を行った。それによると、「憲法改正を急ぐべきだ37.5%、憲法改正を急ぐべきではない58.4%」と報道されていた。

 NHKは7月16日~18日に世論調査を行った。それによると、①Q:岸田内閣を支持するか➡支持する59%、支持しない21%、②Q:岸田政権が取り組むべき課題とは➡「1、経済対策38%、2、社会保障16%、3、外交・安全保障14%、4、新型コロナ対策9%、5、エネルギー・環境9%、6、憲法改正6%」、③安倍元首相の国葬実施の評価➡評価する49%、評価しない38%、わからない・無回答13%、④憲法改正を進める必要➡必要45%、必要ない13%、どちらともいえない33%、わからない・無回答9%などとなっていた。

■この3つの世論調査を見ると、①「憲法改正」については、「改正に向けた議論を行っていく必要がある」との世論が過半数を上回ってきていることがわかる。ただ、「憲法改正に向けた取り組みを急ぐべきではない」という世論も過半数を上回っている。つまり、「憲法改正議論は必要だが、急ぐべきではない」という世論が大きいかとも思われる。②「安倍元首相の国葬については、世論は大きく二分されている感がある。

 7月15日付朝日新聞には、「安倍元首相 秋に国葬—岸田首相表明/吉田元首相以来」、「異例国葬 党内に配慮—"法的根拠に留意""国論を分裂"/まだ功罪検証されず」の見出し記事が掲載。13日付夕刊フジには、「安倍元首相が死去前日に語った"日本愛"―"安部路線"国内外から求める声」「安倍氏が死去前日に語っていた"経済・安全保障・改憲"」の見出し記事が掲載。

 7月13日付の日刊ゲンダイには、「元首相銃撃事件動機—統一教会との接点—国民の関心は、安倍"負の遺産"の行方」の見出し記事。7月16日付日刊ゲンダイには、「安倍"広告塔"利用—統一教会勧誘手口—なぜ大手マスコミは自民党と統一教会の関係を報じないのか」、7月18日付日刊ゲンダイには、「自民党・統一教会—親密議員リスト—いよいよ国全体が狂ってきた/安倍国葬—一番の問題は気味悪さ」「統一教会関連議員112人リスト入手/自民議員は98人―閣僚もズラリ」などの見出し記事が掲載されていた。このリストには、自民党以外では国民民主党の前原誠司議員なども入っている。

■日本の夕刊紙を代表する「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」の二紙。安倍元首相銃撃事や国葬などを巡る問題では、「夕刊フジ」は自民党政権擁護の傾向が強く現れているようだ。

 7月18日・19日・20日付の朝日新聞には、「元首相銃撃で今問われるもの」と題された次の3回シリーズ記事が連載された。①18日「暴力で意思表明 民主主義の敗北/不満・怒り、個人の問題とせずに」(宇野重規氏・東京大学教授)、②19日「"寄る辺なき個人"包み込む社会を―バラバラな人々に巣くう病理」(宮台真司氏・社会学者/東京都立大学教授)、③「カルト思想の脅威今も―2世が相談しやすい社会に」(江川紹子氏・ジャーナリスト)。江川紹子氏は、1995年から2000年代初頭にかけての、あのオウム真理教問題以来の久々の記事登場だ。特に、宮台氏の記事は、とても読み応えがある内容だった。

 7月19日付朝日新聞の広告には、7月28日号の「週刊文春」と「週刊新潮」、最新号の広告が。週刊新潮には、「カルト宗教と関係―国会議員112人リスト」の記事も掲載されている。また、「もっとこの世にいて欲しかった」と題された古市憲寿氏(社会学者・作家・慶応大学研究員)の文章も掲載されている。古市氏はテレビ報道番組などのコメンテーターとしても多く出演している人だが、安倍元首相や妻の昭恵夫人とも親しい間柄。7月18日付の日刊ゲンダイには、古市氏が「安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、"安部さんが統一教会と近い"という陰謀論を信じ込んだ犯行だった」とフジテレビの報道番組で述べていたと批判的に報じていたが、この古市氏の「陰謀論云々(うんぬん)」は、事実とは異なる間違った論評だ。安倍元首相と統一教会が近い関係というのは、公然たる事実なのだが、こんな論評レベルの社会学者だったのかと残念だが‥。 

 7月18日(月)のABC「羽鳥慎一モーニングショー」に、有田芳生氏(前参議院議員[立憲民主党])が出演していた。久々の報道番組への出演だ。「オウム真理教とともに、反社会的な教団・統一教会教団の活動規制に関する取り組みが、かって自民党議員らの政治的圧力によってつぶされた」と有田氏は述べていた。同日、読売テレビ報道番組のミヤネ屋にも有田氏は出演。

 有田芳生氏(70)とは、私は学生時代に面識があり、何度かお互いの友人の片岡君の下宿(京都市の銀閣寺近く)で顔をあわせている。缶ビールを飲みながらいろいろと話し合ったことがあった。有田君は当時、立命館大学経済学部の学生で、「京都社会科学研究会連絡会(京都社研連)」の委員長だった。京都社研連とは京都市内の各大学の社会科学研究会の連合的な組織。物静かな、理路整然と話す、とても頭のいい学生という印象がある。懐かしい‥。

 今日、7月23日付朝日新聞には、「安倍元首相国葬 閣議決定/9月27日」、「首相支持 国葬にこだわり/野党は批判"なし崩し的""内心の自由侵害"」の見出し記事が掲載されていた。今朝の中国の各インターネット報道を閲覧していると、この国葬についての記事が一面に掲載されているものもあった。「不要美化"安部政治"」など、日本国内での国葬反対の市民デモなどの写真が大きく扱われてもいた。

■「日本会議」という団体がある。宗教団体である「生長の家」などが大きく関与し、長い年月をかけて作られた組織だている団体だ。HPを見ると、「誇りある国づくりへ―国を愛する新しい国民運動ネットワーク」とまず記されている。『日本の息吹』という月刊誌が機関紙として毎月発行もされている。

 この「日本会議」は、「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」の二つの政治団体が統合されて、1997年に設立された日本の政治団体。現在、会員数は4万人ちかくにのぼり、日本で最大の保守主義・ナショナリスト団体となっている。現在の憲法改正、自衛隊明記などを求める国民運動の中心となっている政治団体だ。自民党の国会議員だけに限らず、国民民主党の玉木代表や日本維新の会の松井代表らも会員となっている。(※「生長の家」は現在、方針転換により改憲には反対の意見をもつている。)

 2016年、『日本会議の正体』(平凡社新書)[青木理著]が出版された。表紙の帯には、「安倍政権と響き合うように運動を展開する、日本最大の"草の根右派組織"とは」と記されている。

 7月20日付の朝日新聞の「天声人語」の「安倍元首相国葬」に関する文章は秀逸。「▼‥‥‥。▼非業の死をとげた政治家を追悼したい。そう感じる人が多いのは自然だろう。そうであっても国葬という選択は問題があると思う。みなで悼むことが、みなでたたえることに自動的につながってしまうと感じるからだ。▼‥‥。」。この天声人語の中の一部分だが、同感だ。この「国葬」、日本の未来への さらなる危うさがのぞいている感がする。