彦四郎の中国生活

中国滞在記

ポンペオ国務長官の戦略参謀となっている華人・余茂春氏―中国では「漢奸」と怨嗟に包まれる

2020-08-01 21:31:56 | 滞在記

 なかなか優れた報道番組として土曜日の午前9:30から毎週生放送されている朝日TVの「正義のミカタ」。8月1日(土)の今日の特集報道は①新型コロナウイルス第二次感染拡大問題、②米中対立―戦争前夜?、③北朝鮮問題。特に①と②に関する報道が中心だった。この二つは、今の日本人にとっても生活に直結する問題。今後の数年間、最も重要な問題となるだろう。

 ②の米中対立に関する報道では、報道画面のテレップ文字として、「米中対立 戦争前夜? 総領事館閉鎖の衝撃 報復合戦が向かう先は!?」「倍返しだ!」「報復合戦」「大使館閉鎖したら 戦争です」「知的財産と個人情報の保護 スパイ活動の拠点となっている」などが。

 「香港 中国アプリTik Tok禁止検討 南シナ海 ファーウェー排除 総領事館閉鎖」「アメリカVS中国 対立激化」「米中戦争が起きるのか?」のテレップ。

 「アメリカの対中国への世論調査 (※今年2月 中国に好意的33% 好意的ではない67%)」(※6月中旬~7月中旬に行われたアメリカ人の対中国への世論調査では、約4分の3の約73%が中国を否定的に捉えているとの報道。この73%のうちの42%は"中国がとても嫌い"との比率。これは1年前の23%の2倍になっている。また、78%の人が"中国政府には、新型コロナウイルスが武漢から全世界に拡散したことに対する責任がある"と答えている。また、73%の人が、"米国は、米中関係に害となっても中国の人権問題を改善するために努力すべきだと回答している。)  「ウイグルとチベット情報を担う 在成都アメリカ領事館(四川省)」のテロップ。

   そして、ポンペオ演説については「歴史的な演説・宣言となる!?」「反中国は票になる バイデン潰したる!」とのテロップ。この問題に関してコメンテーターを勤めた上智大学の教授は、このポンペオ演説について、「今後、教科書に掲載されるような歴史に残るものになる可能性もある。アフタートランプ大統領の対中政策に空白を生じさせない、影響のある内容の宣言演説」とコメントしていた。

 米中対立の焦点の一つとなっている「スパイ」問題。「中国での正式名称 国家海外高級人材導入計画」➡「2008年から中国の国家プロジェクトとして始まり、これまでに8000人の外国人が対象として選ばれている」➡「スパイ行為で逮捕される事態が続出」➡「今年1月 ハーバード大学のリーバー教授が中国の大学から月給約550万円と生活費など、年1700万円をうけとった。報告義務を怠ったとして米国司法当局に逮捕される。」など。

 今日の「正義のミカタ」の②「米中対立」にかんしては以上のような内容の報道がされていた。

 夕刊紙「フジ」の8月1日号には、「開戦間近 北京に空襲警報ポスター」(河添恵子氏寄稿20弾)の見出し記事も。内容は、北京市内で先日、50年近く見られなかった「空襲への警戒」を呼びかけるポスターが貼られていたというもの。このポスター画像がSNSで拡散されたが、ポスターには、爆撃の写真とともに、「警報が鳴ったら、どのように迅速に防空対策をとるかなど、有事の際の行動がイラストとともに描かれていたという記事。

 2〜3日前に、私も中国のインターネット記事サイトを閲覧していたら、「大陸城市加強防空襲準備―美国成都領事館降旗閉」(※「美国」=アメリカ)という見出し記事があった。見出し記事には米国の爆撃機や核兵器爆発のキノコ雲の写真とともに、ポンペオ国務長官の参謀とも言われている中華人の余茂春氏の若き日の顔写真があった。

 米中関係の緊張という状況下、ついに、「北朝鮮 金正恩委員長―核兵器保有によって我が国の安全と未来を 確実に永遠に保障させると、初めて "核を捨てない"という意思をはっきり示した」と、「正義のミカタ」で報道されていた。

 米国下院外交委員会アジア太平洋小委員会のデッド・ヨーホー委員長(共和党)は7月29日、中国による台湾への武力侵攻を阻止するため、米大統領に一定の武力行使権限を与えるとする「台湾侵略防止法案」を提出した。法案の提出の主旨として、「台湾が侵攻の危機にさらされた場合、米国が守るという保証をより強固ではっきりとした形で示すことが目的」と説明。これら米国での動きやポンペオ演説に対して、中国外交部の汪文斌報道官は31日の記者会見で、「"台湾独立は袋小路だ」と強調。「台湾独立勢力に誤ったシグナルを出すな」と述べ、米国を牽制。「中国の国家統一と民族復興は歴史の大勢で、いかなる人も阻止できない。」と述べた。

 ―中国が「漢奸」と憎み恐れる米国の対中ブレーン―、米国ポンペオ国務長官の参謀・余茂春氏とは―

 ポンペオ国務長官の中国政策チーフアドバイザーを務め、現在の対中強硬策を立てるにあたって重要な役割を果たしている人物が余茂春氏だ。トランプ大統領やポンペオ国務長官の背後で対中国政策を設計している人物。米国では彼を「国宝」のような貴重な存在と評するが、中国メディアでは「売国奴」「漢奸」と呼び憎しみと恐れをにじませている。新聞・インターネット記事だけでなく、テレビ報道でも「漢奸」として報道されている。 

 大陸城市加強防空襲準備のポスターの顔写真は余茂春氏の若い時の顔だ。彼が立案して中国を攻撃するとの趣旨でつくられたポスター。ポンペオ国務長官は「茂春は我々のチームの中核」「中国政策の主席顧問」と述べているが、中国のネットユーザーは「根本と祖先を忘れ、ポンペオの頭の悪い参謀となったのか」「ホワイトハウスの手先になるなんて」と非難を浴びせている。

 余茂春氏は1962年、中国の重慶で生まれる。青少年期に狂乱の文化大革命の10年を経て、1979年の「高考」(中国の大学統一試験)では全国最高の得点者文系「状元」となり、周恩来も卒業した天津の「南開大学歴史学部」に入学し、1983年に卒業。1985年に米国に渡り留学。1994年にカリフォルニア大学バークレー校で歴史学の博士号を取得。同年から、米海軍の教官となり東アジアと軍事史を講義した。現在、米国の要職には余氏の教え子が少なからず布陣しているという。

 彼は、米政府が70年代末に北京と修交して以来、米中関係を自らの意のままに導いていけると誇示したのが間違いの始まりだったと言う。米高官が中国共産党政権と中国人民を区別せずに「中国人」と総称したのは間違いだとも。また、米国はこれまでの対中政策を立案する際に北京の弱点を正確に把握できていなかつたことを指摘する。余氏は「実のところ、中共政権の核心は脆弱で、自らの人民を最も恐れている」と言う。「中国共産党員の米国訪問全面禁止案検討」などの米国の動きには余氏の存在があるようだ。中国共産党は伝統的に人民を水、共産党員を魚に例える。余氏の政策立案の主張の核心は「魚を水から離そう」とする戦略だ。

 最近の、トランプ政権、ポンペオ国務長官演説など、対中国政策は余氏からの影響は大きく、米政府では「中国に関する百科事典」とも呼ばれている。

 中国では、「南開大学がこんな恩知らずな人物を輩出したのか」「米国のあくどい対中政策はこの華人から出た」「華人のカス」と、怨嗟と恐れの声が。余氏の母校である永川中学は状元者である偉大な先輩の存在を記念するために校庭の記念碑に余氏の名前が刻まれていたが、名前は除去されたようだ。

 

 


衝撃の米ポンペオ国務長官"中国共産党と習近平総書記個人への怒り"の演説―歴史的宣言になるかも

2020-08-01 15:18:34 | 滞在記

 アメリカが7月21日、米国ヒューストンの中国領事館の閉鎖を命じたかと思えば、中国は24日、中国成都のアメリカ領事館の閉鎖を命じた。退去期限はそれぞれ72時間以内だった。これほど激しい米中対立の攻防は、1979年に正式に国交正常化を果たして41年で、初の事態である。私が勤務する閩江大学外国語学部英語学科のアメリカ人教員たちは今、私と同じく母国滞在にてONLINE授業を行ってきただろうが、米中対立が激化する中、中国の大学に戻れるかどうかも心配になる状況となってきている。

 さらにアメリカは、南シナ海に中国が建設した人工島や基地を空爆するというシナリオも選択肢の一つとして立案しているとの報道もある。

 こんな状況下、7月23日に米国・カリフォルニアで行ったマイク・ポンペオ国務長官のスピーチ・演説は3つの理由で米中冷戦を本格化を決定づける内容であった。つまりトランプ政権内の対中論争に終止符を打つものでもあった。歴史に残る(※将来、教科書に掲載されるような)演説、宣言になるかもしれない?!とも言われる内容だった。内容の3つのポイントとは。

 一つ目に、トランプ政権下には、中国とどう対峙するかについて2つの勢力が存在した。一つは、貿易不均衡や雇用を是正することに主眼を置く、いわば「通商強硬派」。トランプ大統領自身がその代表格で、長女イヴァンカの夫・クシュナー大統領上級顧問などかなりの多くの幹部たちがこの派に属していた。もう一つのグループは、中国という台頭する共産党一党支配の国が許せない「軍事強硬派」。政権から外されたバノン元大統領首席戦略兼上級顧問やボルトン前大統領安保担当補佐官などがこのグループに属する。そして、現職のペンス副大統領やポンペオ国務長官もこのグループに属する。

 トランプ政権下においては、その時々で、この2つのグループが頭をそれぞれがもたげつつも、全体的にはバランスを保ちつつ、中国との関係は推移してきた。ところが、今年3月から本格的にアメリカを襲い始めた新型コロナウイルス(※7月下旬段階で約450万人の感染数、約15万人の死者数)は、この両グループの力関係に、決定的な作用を及ぼした。中国に対してより強硬な「軍事強硬派」が「通商強硬派」を圧倒したのである。

 トランプ的な「通商強硬派」の方針のままでは、来たる11月3日(あと100日間後)の大統領選挙で敗北してしまうという共和党の危機感の中、トランプ大統領自身もそのことは重々承知しているので、「にわか軍事強硬派」に方針を変えてきている。

 今回のポンペオ演説が「米中冷戦」を決定づけた理由の二つ目は、中国という国家に加えて、9100万中国共産党員のトップに君臨する習近平総書記個人を攻撃したことである。これまでアメリカが中国をいくら批判しても、習近平総書記個人は非難してこなかった。これまで、トランプ政権幹部によるこれまでで最も過激な中国批判と言えば、2018年10月のペンス副大統領の演説だったが、あの強烈なスピーチの中でさえ、習近平総書記個人は批判していない。ところが、今回のポンペオ演説はその「一線」を越えた。ポンペオ国務長官は語気を強め、次のように述べた。

 「習近平総書記は破綻した全体主義思想の信奉者であるということに、我々は心を留め置かねばならない」「われわれが許さない限り、習総書記は中国国内外で、永遠に暴君でいられる運命ではないのだ」「ニクソン大統領はかって、世界を中国共産党に開放した時、フランケンシュタインを作り出してしまうかもしれないと恐れた。だが、今存在しているのが、まさにそれだ」「われわれはまた、中国共産党とは完全に異なり、ダイナミックで自由を愛する中国人に関わり、力を与えていかなければならない」

 「もし、今、われわれが行動を起こさなければ、最終的に中国共産党は、われわれの自由を侵食し、われわれの社会が懸命に築きあげてきたルールーに基づいた秩序をひっくり返すだろう。今 われわれが膝を屈したら、孫たちは中国共産党の慈悲の傘下に下るかもしれない。それほど、中国共産党の行動は自由世界にとっては喫緊の挑戦だということだ」「中国政府の行動は我々の国民の繁栄を脅かしている。中国を普通の国として扱うことはできない」「習近平総書記は中国共産(全体)主義に基づく覇権の野望を長年抱き続けている。中国共産(全体)主義から自由を守ることは私たちの時代の使命だ」「‥‥‥‥」「‥‥‥‥」「‥‥‥‥」。

 そして、三つ目には、単にトランプ政権のことだけではなく、「アメリカの問題」として対中国問題を提起していることだ。ポンペオ国務長官は、「どの党の誰が今後の大統領に就こうとも、これからのアメリカは習近平政権と正面から対決することとなる」というニアンスで演説していることだ。この対中国対応の変化・転換は米国では民主党政権となっても基本的に終わらないだろう。また、中国人民(国民)と中国共産党とを分けて演説していることもその特徴だ。

 このポンペオ演説ははリチャード・ニクソン図書館で行われた。1972年のニクソン・毛沢東会談での米中国交回復の始まりから48年目の今年、アメリカは中国共産党(中国・中国人民ではなく)との宣戦を布告したに等しいのが今回のポンペオ・スピーチだった。一方の中国共産党は「戦狼」戦略を5月の全人代で確認・採択し、アメリカとの対決姿勢を鮮明にし始め中国国民にも反米感情の高まりの宣伝を強化してきている。

   朝日新聞にはこのポンペオ演説に関して、「米、対中"関与政策"岐路に―"失敗"と国務長官"決別宣言"―変わらぬ"政治体制不信感"」「民主"幻想なき共存"模索 トランプ氏は実利を追求」という見出し記事を掲載。

 このポンペオ演説を念頭においてか、習近平総書記(国家主席)は、7月28日、北京での座談会を主宰し、「いかなる国や人物も、中華民族が偉大な復興を実現する歴史的な歩みを阻むことはできない」と強調し、中国共産党の一党支配を批判して攻勢をかけるトランプ米政権を牽制(けんせい)した。10月に北京で党第19期中央委員会第5回総会(5中総会)を開くことを決定。2021年~25年までの中期方針と35年までの長期方針の策定が討議される。