一昨日から、
末木文美士(ふみひこ)さんの「日本宗教史」を読んでいました。
末木さんは、仏教学者であり、
東京大学の教授から名誉教授になっている方で、
2006年4月20日に出版された本です。
古事記や日本書紀の神話から始まり、
オウム真理教事件や世界的宗教戦争まで、
宗教の動きを俯瞰して述べています。
新書版の240ページですが、
古代が「仏教の浸透と神々」、中世が「神仏論の展開」、
近世が「世俗と宗教」、近代が「近代化と宗教」とのタイトルで、
宗教の動きを的確にコンパクトに述べていて、分かりやすいと思いました。
著者の主な関心は、
歴史時代以前から歴史を一貫して貫く「古層」なるものはなく、
古層自体が歴史的に形成されてきた点にあるようです。
記紀神話自体が7~8世紀に形成されたものであり、
その150年程度前に日本に入って来ていた仏教の影響を受けており、
現在の記紀神話をもって
仏教以前の古層の信仰と考えるのは不適当であるとしています。
最近、保守系の人で、
神道は縄文時代から引き継がれて来たと言う人がいますが、
これは、少なくても実証的な話ではないのでしょうね。
仏教と神道の間には、歴史的に複雑な関係があります。
日本に仏教が到来した当初は「仏教が主、神道が従」であり、
平安時代には、「仏、菩薩が仮に神の姿となった」とし、
「阿弥陀如来の垂迹を八幡神」「大日如来の垂迹が伊勢大神」とする
本地垂迹説が台頭するなどしました。
そして、江戸時代末期には、神仏分離が唱えられ、
更に強権的な廃仏毀釈が行われ、貴重な文化財が廃棄されたりしました。
こうした歴史的な変転について、この著作の中では、
思想的な背景などについても述べられています。
日本の宗教では、
仏教とキリスト教の伝来が大きなインパクトのある出来事でしたが、
キリスト教が伝来後、短期間で信者が増えた原因として、
浄土真宗など一神教的な仏教の下地があったからとする指摘も
なるほどなぁと思いました。
その他、とても簡単には書き切れない豊富な内容であり、
何か所か、そうだったのかと目から鱗の思いもありました。
また、僕の知識が足りなくて、理解するのが難しい点もありました。
僕は、本は基本的には図書館から借りて読んでいますが、
この本は購入して、もっと腰を据えて読んでみたいなぁとも思いました。
いずれにしても、久しぶりに本当に良い本を読んだと言う気がしています。