MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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The Routledge Companion to Translation Studies

2009年01月16日 | 翻訳研究

The Routledge Companion to Translation Studiesが届いた。編者はJeremy Munday。(目次は11月2日に紹介済みです。) 同様なコンセプトで作られたKuhiwczak and LittauのA Companion to Translation Studies (Multilingual Matters)は180ページだが、こちらは300ページある。しかしそのうち75ページはKey Conceptsという用語集になっているので、実質的な分量はほぼ同じ。特徴は、Kuhiwczak and LittauにはないTranslation as a cognitive activityとIssues in inerpreting studies (by Pochhacker)が扱われていることだろうか。認知活動としての翻訳の章は前半が翻訳プロセス分析のモデルとして、Seleskovitch, Bell, Kiraly, Wilss, Gutt, Gileのモデルを解説し、後半はTranslation Competenceの問題に充てられている。モデルは簡単な紹介だけで、問題点の指摘や批判的考察はないし、そもそも(TAPは別にして)翻訳(者)の内的プロセスを解明することにどれほどの意義があるのだろうかという疑問が生じる。分析すべきはむしろ起点言語と目標言語の「読者」の認知プロセスではないのか。その紹介も少なくとも最先端の研究の紹介ではない。SeleskovitchモデルはDelisleが翻訳モデルとして作り直している程だから翻訳とも関係するが、Gileの努力モデルは翻訳モデルとしてはふさわしくないだろう。また両者に欠けているテーマとして、認知言語学的アプローチがある。ないないづくしのようだが、この手の本はこういうものであって、あまり求めすぎてはいけない。研究のとっかかりとして、また知識を整理するためには便利なのである。しかし、そういう目的なら、この春に出版予定の『翻訳学入門』(みすず書房)(Jeremy MundayのIntroducing Translation Studies第2版の翻訳)をまず読むことだろう(と宣伝しておく)。

研究社から出ていた『英語青年』が廃刊になるというので、神保町に行ったついでに最終号を見てみた。(三省堂には見あたらなくて、東京堂でようやく1冊見つけた。)特集は「翻訳書の最前線から」というのであるが、内容に興味がもてず結局買わなかった。その代わりでもないが、庭野吉弘『日本英学史叙説:英語の受容から教育へ』(研究社)を見つけた。内容の大部分は特に目新しいものでもないのだが、「訳読史における浦口グループ・メソッド:その評価と問題点」という章があったので購入した。グループ・メソッドについては研究があるのかもしれないが、読んだことがなかったからである。このメソッドはいわゆる「直読直解法」とも関係があり、「順送りの訳」とも関係がある。従って通訳・翻訳理論とも関連する。ざっと目を通しただけだが、庭野の評価と批判はあまり的確ではないと思う。もっと理論的な評価と批判が可能であるはずだ。なおこの本には「米国通訳官ヒュースケンの「明と暗」という章もある。