(以下、INTERNATIONAL BUSINESS TIMESから転載)
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2014年2月9日 23時05分 更新
「大量移民反対イニシアチブ」可決、スイス経済に激震
外国人労働者数の制限を求めた「大量移民反対イニシアチブ」が、9日の国民投票で僅差で可決された。ヨーロッパからの外国人労働者に経済を支えられているスイスは、欧州連合(EU)との関係を見直し、新たな外交政策を模索せざるを得なくなった。なお、鉄道インフラに関する連邦決議「FABI法案」は可決、「人工妊娠中絶費用の個人負担イニシアチブ」は否決された。
最後まで揺れた「大量移民反対イニシアチブ」
「大量移民反対イニシアチブ」は、スイスにやって来る移民の数に制限を設けることを求めた国民発議。提案したのは、右派の国民党だ。投票日の数週間前から、賛成派と反対派は新聞や駅構内に広告を連日掲載・掲出し、激論を繰り広げていた。
スイスはEUとの間で1999年、働く場所と居住地の自由化を定めた「第1次2者間協定」を結んだ。これにより、EU出身の外国人のうち、スイスにある企業と有効な雇用契約を結んだ人、自営業者、生活費を賄えるだけの試算があり健康保険に加入している人は、スイスに居住できるようになった。
その結果、ヨーロッパからの移民が急増。国民党は、近年問題となっている交通渋滞、不動産価格の上昇、住居不足、犯罪率の増加などはこうした移民が原因だとし、今回のイニシアチブを立ち上げた。
具体的には、国が1年間に発給する労働および居住許可の数に上限を設け、外国人労働者の受け入れ人数を制限することを求めている。これまで、スイスの労働市場に自由にアクセスできていたEU加盟国出身の外国人も制限の対象となる。
政府と連邦議会は、「このイニシアチブは第1次2者間協定を無効にし、スイスの重要な経済パートナーであるEUとの関係を大きく損なう」と反対。国民党以外の主要政党も「EUとの良好な関係から築き上げられたスイス経済が、このイニシアチブで台無しにされる」と不支持を表明していた。
EUとの関係を損ねてまで、国民はイニシアチブを支持はしないだろうとにらんでいた政府と連邦議会だったが、調査機関gfs.bernが行った1月の世論調査では、このイニシアチブに賛成する有権者の数が前回調査に比べて上昇し、4割が賛成に。結局、投票日まで予想がつかない状況となっていた。
投票結果は、賛成50.3%、反対49.7%、26州中14.5州の過半数が賛成し、可決となった(準州は0.5州として数える)。投票結果には、言語圏の差が明確に現れた。ドイツ語圏のツーク州ではわずか50票の僅差で反対過半数となったが、そのほかのドイツ語圏の州は賛成過半数、フランス語圏の州は反対過半数という結果になった。
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2014年2月9日 23時05分 更新
「大量移民反対イニシアチブ」可決、スイス経済に激震
外国人労働者数の制限を求めた「大量移民反対イニシアチブ」が、9日の国民投票で僅差で可決された。ヨーロッパからの外国人労働者に経済を支えられているスイスは、欧州連合(EU)との関係を見直し、新たな外交政策を模索せざるを得なくなった。なお、鉄道インフラに関する連邦決議「FABI法案」は可決、「人工妊娠中絶費用の個人負担イニシアチブ」は否決された。
最後まで揺れた「大量移民反対イニシアチブ」
「大量移民反対イニシアチブ」は、スイスにやって来る移民の数に制限を設けることを求めた国民発議。提案したのは、右派の国民党だ。投票日の数週間前から、賛成派と反対派は新聞や駅構内に広告を連日掲載・掲出し、激論を繰り広げていた。
スイスはEUとの間で1999年、働く場所と居住地の自由化を定めた「第1次2者間協定」を結んだ。これにより、EU出身の外国人のうち、スイスにある企業と有効な雇用契約を結んだ人、自営業者、生活費を賄えるだけの試算があり健康保険に加入している人は、スイスに居住できるようになった。
その結果、ヨーロッパからの移民が急増。国民党は、近年問題となっている交通渋滞、不動産価格の上昇、住居不足、犯罪率の増加などはこうした移民が原因だとし、今回のイニシアチブを立ち上げた。
具体的には、国が1年間に発給する労働および居住許可の数に上限を設け、外国人労働者の受け入れ人数を制限することを求めている。これまで、スイスの労働市場に自由にアクセスできていたEU加盟国出身の外国人も制限の対象となる。
政府と連邦議会は、「このイニシアチブは第1次2者間協定を無効にし、スイスの重要な経済パートナーであるEUとの関係を大きく損なう」と反対。国民党以外の主要政党も「EUとの良好な関係から築き上げられたスイス経済が、このイニシアチブで台無しにされる」と不支持を表明していた。
EUとの関係を損ねてまで、国民はイニシアチブを支持はしないだろうとにらんでいた政府と連邦議会だったが、調査機関gfs.bernが行った1月の世論調査では、このイニシアチブに賛成する有権者の数が前回調査に比べて上昇し、4割が賛成に。結局、投票日まで予想がつかない状況となっていた。
投票結果は、賛成50.3%、反対49.7%、26州中14.5州の過半数が賛成し、可決となった(準州は0.5州として数える)。投票結果には、言語圏の差が明確に現れた。ドイツ語圏のツーク州ではわずか50票の僅差で反対過半数となったが、そのほかのドイツ語圏の州は賛成過半数、フランス語圏の州は反対過半数という結果になった。