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出所の高齢・障害者支援

2014-02-04 16:21:26 | ダイバーシティ
(以下、読売新聞から転載)
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出所の高齢・障害者支援


社会復帰へ 住まい探し、福祉の手配


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 刑務所を出ても帰る場のない障害者や高齢者の社会復帰をサポートする自治体の取り組みが広がっている。

 全ての都道府県で開設された地域生活定着支援センターがその拠点だが、課題も明らかになっている。

 「もう刑務所には戻りたくないです」

 千葉県内の福祉施設で暮らす60歳代の男性は話す。2年ほど前、20回目の服役を終えて刑務所を出所した。それまでは服役を終えても行き先はなく、所持金がなくなると、刑務所に戻ろうと無賃乗車をした。服役期間は計40年近くに上った。

 最初の服役は20歳代の初め。母親への傷害事件が理由だったが、後はすべてタクシーの無賃乗車だ。家族には頼れず、知的な障害も疑われた男性を手助けしたのは千葉県地域生活定着支援センターだった。

 出所の半年ほど前、刑務所から連絡を受けた保護観察所で、男性の家族は身元を引き受けられないことを確認。出身地である千葉県の同センターが入れる福祉施設を探すことになった。

 岸恵子センター長が刑務所で男性の意向を聞き、住民票のあった自治体に生活保護の支給を要請した。お陰で男性は出所直後から安定した生活を始められた。

 「家族や社会の支援がなく道を踏み外した受刑者は多い。刑務所に隔離するだけでは解決にならない」と岸さんは言う。

 同センターの支援でアパート暮らしをする女性(70)も、夫が病気で倒れた後、生活苦から万引きを繰り返し服役した。「出所後はホームレスだと覚悟していたけど、住まいまで探してもらえた。もう間違いは犯しません」と感謝する。

 法務省によると、刑務所から出る人は年間約3万人。そのうち、高齢や障害のため自立が困難な人は、2006年の調査で約1000人に上った。

 行き場のない出所者は、更生保護施設に最長6か月間滞在できるが、再就職が見込める若い人が優先される。高齢者や障害者で入れる人は少なく、当てもなく出所する人が多かった。

 身元引受人のない高齢出所者は再犯率が高い。07年の犯罪白書によると、65歳以上で刑期満了まで刑務所にいた人は7割が5年以内に再犯し、その4分の3は2年以内の再犯だった。

 こうした状況を受け、国は08年に犯罪対策の行動計画を策定。各都道府県に地域生活定着支援センターの設置を求め、49か所が開設された。各センターは、保護観察所の依頼を受けて出所前から面接を行い、釈放後の住まいを探し、生活保護や介護など福祉サービスの手配を行う。

 「再犯を重ねていた人が定着したなど、効果を上げているセンターもある」と厚生労働省の担当はいう。

就労など課題

 一方、課題もある。

 神奈川県のセンターでは3年間で定住を目指して支援した35人のうち、6人が再犯で収監され6人は失踪。9人は簡易宿泊所など一時的な居場所にいる。犯罪歴を持つ高齢者や障害者を受け入れる福祉施設が県内に少なく、仕事に就ける人もほとんどないからだ。

 生活保護だと1人年200万円の公費が必要だが、服役すると年300万円、裁判などでさらに500万円かかるとの試算もある。

 更生保護に詳しい藤本哲也・常磐大学教授は「これまで司法と福祉のはざまで放置されてきた人たちを支援する仕組みが全国に整備されたことは評価できる。今後は、一般の労働市場で働くことが難しい人を雇用する『社会的企業』などを増やしていくことも必要だろう」と話している。(針原陽子)

 地域生活定着支援センター 刑務所から出ても引受先のない高齢者や障害者に個別の支援計画を作り、住居や福祉サービスなどを手配し、再犯を防ぐ。

(2014年2月4日 読売新聞)

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