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仕事やめ被災地の前線へ 外国人ボランティアの献身

2012-03-14 11:43:22 | 多文化共生
(以下、日本経済新聞から転載)
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仕事やめ被災地の前線へ 外国人ボランティアの献身
「これからも忘れない」 広がる絆
2012/3/14 7:00

 米軍のトモダチ作戦、台湾などからの多額の寄付――。昨年の東日本大震災の際に、多くの国・地域から被災地に寄せられた支援が、今なお絶えることなく続いている。被災地には連日、外国人ボランティアが訪れ、次の支援活動を計画する団体や個人も多い。「あの日を忘れない」外国人ボランティアの今を追った。

被災者に笑顔を――。被災者にフラダンスを教える、米国人ボランティアのキャサリン・スーさん

 「自分のできることで、できるだけ長く被災者をサポートし続けたいと思った」。米カリフォルニア州からやってきたバートン・スーさん(39)とキャサリン・スーさん(32)夫妻は、今年1月から岩手県一関市でフラダンスや絵で被災者の心をケアする活動を続けている。きっかけは昨年5月にボランティアとして日本を訪れたこと。被災した人々の心が深く傷ついているのを実感し、1年間の予定で日本に戻ってきた。

■経済損失約2500万円

 簡単な決断ではなかったはずだ。バートンさんはソフトウエアエンジニア、キャサリンさんは企業の人事担当者の仕事を辞め、車も売った。夫妻が日本に来なかった場合に得ていた年収と、来日中の出費をあわせると、経済的損失は約30万米ドル(約2460万円)にもなるという。しかも日本語は話せない。

 それでも「経済的には厳しいが、1人でも多くの人を励ますことができるなら、何よりうれしい」と屈託がない2人。絵やフラダンスを被災者たちに教え寄り添い続けることが、何よりの支えになると信じている。

震災発生直後の3月下旬、福島県いわき市でボランティアをする、米ジョージア州から来たグレッグ・トンプソンさん

 「たくさんの災害を見てきたが、東日本大震災の被害ほど、ひどいものは見たことがない」。こう話すのは、家族ぐるみで被災地での支援活動を続けている米ジョージア州のグレッグ・トンプソンさん(57)。妻(57)と、震災直後の昨年3月下旬に被災地を訪れ、12日間の支援活動に参加。その後も9月に10日間、10月にも1週間、被災地を訪れた。息子のウィルさん(23)も大学の休みに3週間、岩手県でボランティア活動を行ったという。

 世界中の被災地を訪れた経験があるグレッグさんは、人手が不足する活動も心得ている。昨年3月の訪問時には、原子力発電所の事故の影響でボランティアの希望者が少ない福島県での活動を志願。いわき市の避難所に食料などを届け続けた。

 「私たちの力は小さいかもしれないが、1人でも助けられればと思う。まだまだ支援は必要。米国の人々にも決して忘れてほしくない」とグレッグさん。今年9月にまたボランティアに訪れるつもりだという。

■すでに今夏のボランティア殺到

 被災地の復興の支え手として存在感を増す外国人ボランティアたち。その実数はどれくらいだろうか。被災3県の社会福祉協議会によると、震災ボランティアの延べ人数は宮城県が45万9063人(3月11日時点)、福島県が14万6943人(同)、岩手県が33万6840人(同9日時点)。「その少なくない割合を外国人が占め、今もサポートを続けている」と多くのボランティアセンターは口をそろえる。

被災地で活動する外国人ボランティアは後を絶たない

 被災地支援のボランティア派遣を手掛ける非政府組織(NGO)クラッシュジャパン(東京都東久留米市)の場合、これまでに活動した約2400人の震災ボランティアの半数を外国人が占める。しかも、今なお海外からの問い合わせやボランティアの申し出はひっきりなし。年明けからは今年6~9月の夏休みに被災地で活動したいという申し出が増えており、調整に追われているという。

 震災から1年たち、受け入れ体制が充実したことが大きい。当初、ボランティアは4人以上の団体に限っていたが、昨年10月ごろから個人での参加も受け入れ始めた。その結果、新たな参加者だけでなく活動を繰り返す外国人も増え、今も確実に一定数のボランティアを被災地に派遣できるという。

■安全確保を徹底

 原発事故で避難区域が設定されていることもあり、ボランティアの安全確保も進めている。今年1月、米海軍に勤務経験のあるナタン・ウィリアムスさん(41)を安全管理を担うセーフティーチーフとして採用。ボランティア派遣先の放射能測定などリスク管理の体制を整えた。

福島県で放射線量を測定する、クラッシュジャパンのナタン・ウィリアムスさん

 もっとも、個別の組織が体制を整えるだけでは不十分との見方もある。クラッシュジャパンのエグゼクティブアシスタント、鈴木りべかさん(25)は「日本でのボランティア活動では、政府と非営利組織(NPO)の連携など課題が多い。今後も外国の人々から助けを受けるため、日本側でやるべきことも多い」と指摘する。たとえば地域ごとの放射能の汚染レベルなどは国レベルで対外的に情報発信することが不可欠とみる。既に多くのボランティアが放射能などのリスクを承知の上で、日本を訪れている。その覚悟に何もせず甘えることは許されないのも確かだろう。

 「放射能拡散の不安を感じながら暮らす被災地の人々を思えば、私たちが短期間の支援活動をするのは大したリスクではない」。そう話すのは米ミシガン州に住むケビン・クロースさん(38)。今夏、ボランティアとして初めて来日する予定だ。

 こうした「これからも忘れない」海外の人々の友情と善意に応えるためにも、日本人は彼らの安全を全力で確保しつつ、より一層復興に力を注いでいく必要がある。復興を陰から支え続ける外国人ボランティアの日々の献身を決して忘れてはならない。

(電子報道部 岸田幸子)

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