(以下、ニッケイ新聞から転載)
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群馬県太田市=外国人子弟教育の新機軸=2言語教員の末永さん=成果と動向に期待集まる
群馬県太田市でバイリンガル教員をする末永サンドラ輝美さんが10月に帰伯した折りに来社し、在日ブラジル人の子弟教育最前線の様子を語った。7年前からJICA留学生として早稲田大学の大学院修士課程でブラジルの日本語教育について研究、現職に就いてから5年目を迎える。
同市のバイリンガル教員は、従来の日本語を教える補助教員ではなく、一歩踏みこんで、日本語だけでなく母語をつかって教科も教える外国人教師という存在だ。
日本の公教育で、ブラジルで教員資格を持つバイリンガル教員という資格を作ること自体、自治体としては新しい取り組み。日本語を強化するために補助をする役割でなく、母語で情緒教育を補うなどの日本においては新しい考え方を始めたことで注目されている。
一般的に在日伯人は教育に対する理解が少ないという意見もあるが、末永さんは「けっこう教育熱心な両親が多い」という。そのような保護者に、さらに協力理解してもらうかについて、太田市教育研究所のメンバーとして3年前から検討にも加わっている。
末永さんが担当するのは市内の一つの地区で、その中に中学校1校、小学校2校があり、普段は太田小学校に常勤する。同校約500人の児童のうち、外国人は40人ていどだという。
昨年末からの経済危機で帰国したブラジル人は2家族のみで、今現在で大きな影響は現れていない。「ブラジル人学校の生徒はかなり減っているが、その分、公立学校で増えているわけではない。〃自宅待機〃の不就学児童が増えているようで心配」という。同市ではすでに、このような不就学児童に関する調査も行われているという。
バイリンガル教員とはいえ、2言語同等に教育するわけではない。ポ語の能力を積極的にのばすことは、公教育という性質上難しいといえる。
しかし、10歳前後までブラジルで教育を受けてから訪日した児童生徒の場合、ポ語で論理的な思考能力を十分につけてから、その能力を日本語での知識や学科教育に反映させた方が学習効率が高いという説もあり、その意味ではまだ限界があるようだ。
末永さんと池上摩希子さんによる論文「群馬県太田市のおける外国人児童生徒に対する日本語教育の現状と課題」(早稲田大学日本語教育学第4号)では、「日本語教育、教科教育、母語教育の場が相互に関わり合いを持つ必要があろう。それらの分断を乗り越え、三つの場をつなぐ存在として、バイリンガル教員の役割を確立していくことを今後の課題としたい」(25頁)とする。
同論文の最後には「太田市の一連の取り組みは、外国人児童生徒に対する日本の教育システムの不備を指摘しつつ補うものである。これは、硬直した教育を地域の特性にあわせて柔軟に改革していく実践を他の地域に示す嚆矢(こうし)となるではないだろうか」(26頁)と締め括る。
バイリンガル教員という制度は、新しい取り組みだけにその成果と動向に期待が集まっている。
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群馬県太田市=外国人子弟教育の新機軸=2言語教員の末永さん=成果と動向に期待集まる
群馬県太田市でバイリンガル教員をする末永サンドラ輝美さんが10月に帰伯した折りに来社し、在日ブラジル人の子弟教育最前線の様子を語った。7年前からJICA留学生として早稲田大学の大学院修士課程でブラジルの日本語教育について研究、現職に就いてから5年目を迎える。
同市のバイリンガル教員は、従来の日本語を教える補助教員ではなく、一歩踏みこんで、日本語だけでなく母語をつかって教科も教える外国人教師という存在だ。
日本の公教育で、ブラジルで教員資格を持つバイリンガル教員という資格を作ること自体、自治体としては新しい取り組み。日本語を強化するために補助をする役割でなく、母語で情緒教育を補うなどの日本においては新しい考え方を始めたことで注目されている。
一般的に在日伯人は教育に対する理解が少ないという意見もあるが、末永さんは「けっこう教育熱心な両親が多い」という。そのような保護者に、さらに協力理解してもらうかについて、太田市教育研究所のメンバーとして3年前から検討にも加わっている。
末永さんが担当するのは市内の一つの地区で、その中に中学校1校、小学校2校があり、普段は太田小学校に常勤する。同校約500人の児童のうち、外国人は40人ていどだという。
昨年末からの経済危機で帰国したブラジル人は2家族のみで、今現在で大きな影響は現れていない。「ブラジル人学校の生徒はかなり減っているが、その分、公立学校で増えているわけではない。〃自宅待機〃の不就学児童が増えているようで心配」という。同市ではすでに、このような不就学児童に関する調査も行われているという。
バイリンガル教員とはいえ、2言語同等に教育するわけではない。ポ語の能力を積極的にのばすことは、公教育という性質上難しいといえる。
しかし、10歳前後までブラジルで教育を受けてから訪日した児童生徒の場合、ポ語で論理的な思考能力を十分につけてから、その能力を日本語での知識や学科教育に反映させた方が学習効率が高いという説もあり、その意味ではまだ限界があるようだ。
末永さんと池上摩希子さんによる論文「群馬県太田市のおける外国人児童生徒に対する日本語教育の現状と課題」(早稲田大学日本語教育学第4号)では、「日本語教育、教科教育、母語教育の場が相互に関わり合いを持つ必要があろう。それらの分断を乗り越え、三つの場をつなぐ存在として、バイリンガル教員の役割を確立していくことを今後の課題としたい」(25頁)とする。
同論文の最後には「太田市の一連の取り組みは、外国人児童生徒に対する日本の教育システムの不備を指摘しつつ補うものである。これは、硬直した教育を地域の特性にあわせて柔軟に改革していく実践を他の地域に示す嚆矢(こうし)となるではないだろうか」(26頁)と締め括る。
バイリンガル教員という制度は、新しい取り組みだけにその成果と動向に期待が集まっている。
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