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日本人以上の就職難――ベトナム人留学生、日本で就活をする

2011-11-24 10:54:29 | 多文化共生
(以下、BusinessMedia誠から転載)
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日本人以上の就職難――ベトナム人留学生、日本で就活をする
ひょんなことから筆者が関わることになった、ベトナム人留学生の就活を支援する“フォー・プロジェクト”。その背景には、外国人留学生が日本社会で十分に活用されていない現状があった。

 2年はぼんやり、3年で焦り出し、4年で走り出すものなーんだ? それは就活。

 中途半端に大学をドロップアウトしていた私にも、それは気が進まないものだった。自分に向く仕事は何? 会社とはどんなところ? そこで働く自分の姿が想像できなかった。だから、就活に身が入らない。ふらりと大企業の説明会に行く。集団面接でしっかり落とされる。自分がイヤになった。

 だが、今はもっときつい。文部科学省と厚生労働省の調査によると、2011年10月1日時点の大学4年生の就職内定率は59.9%。昨年より改善傾向とはいえ厳しい。再来年卒業の3年生の多くも、内定にたどり着こうともがいている。

 日本人学生でこの厳しさなのだから、留学生にとってはなおさら厳しい。日本語と日本社会という2つの壁が立ちはだかるからだ。

 そんなベトナム人留学生の就活支援を、ひょんなことから盟友MAKIKOさんと私は夏から行うこととなった。就活講座の講師として、どこにもない内容を教えている。

 カリキュラムは、ベトナムと日本をまたがる事例テーマの講義と討議、両国の歴史や文化比較、就活に役立つトピックス、有望会社の紹介や悩みごと相談までと幅広い。1都3県の大学や大学院に通学する彼らが、毎週都内の会議室や私の運営するギャラリーに集まる。

 1回の講義には5~10人が参加。事例テーマは「PHO(フォー=ベトナムの米粉の麺)」「コーヒーと貿易」「下着」「陶磁器」「面白いIT」など、実社会の事業や消費がテーマ。壇上から教える講義ではない。イスを寄せ合って語り、意見を言い、笑い、ホワイトボードで発表する。無味乾燥な会社研究や面接スキルアップセミナーではない。もっと本質的なものだ。

 講座の目的は、日本語で雑談・質問・討議ができるようになること。両国の経済・企業・消費者・文化について浅くても広い知識を持ち、自分の中で再構成し、“アイデアを入れて”語れるようになること。面接で経営者に「君いいこと言うな、採用!」と言わせるのがゴールだ。

 そんなことができるのか? 結論から言えばできる。国費留学生の彼らは頭脳は明晰。躍動する若い国(CIAによると平均年齢は27.8歳、ちなみに日本は44.8歳)で明るく育った。目がキラキラしている。「給与水準の高い日本で働いてしっかりとお金を貯め、いずれ母国のために飛躍したい」と志が高い。

 MAKIKOさんと付けた講座のコードネームは“フォー・プロジェクト”。その背景と成り立ちをご紹介しよう。

留学生が生かされない実情

 日本には現在、約3600人のベトナム人留学生がいる(中国、韓国、台湾に次いで第4位)。単純に大学に4年、大学院に2年通うとして6で割ると、毎年少なくとも600人の就職希望者がいることになる。だが、600人のうち“在留資格許可”を得た人、つまり企業や団体に就職したのは167人と、わずか3割弱である(2010年)。では、残りの7割はどこに行ったのか?

国別の外国人留学生数(出典:社会実情データ図録)

 正式な統計はないが、大学院へ進学(就職浪人の人も)、非正社員として雇用、あるいはベトナムへ帰国……といった道筋が主流。8万6000人と留学生数トップの中国人でも在留資格許可数は約5000人と、推定1万4000人の就職希望者のおよそ3割にとどまっている。留学生が7割も活用されていない現状。国費留学生なら、まさに国家的損失だ。

 そこで、ベトナム人留学生の就職を支援しているのが、一般財団法人エムピーケン(MP研)だ。MP研は外国人への職業紹介や採用支援、留学生の教育訓練や就職指導を実施する団体。MAKIKOさんと私がお邪魔した時、代表理事の宮本宜明さんの“熱い(そして長い)お喋り”に共鳴した。

 プランニング事業で成功した宮本さんは今、ベトナムのための公益事業を現地と日本で行っている。2時間語り続ける彼のパワーに圧倒され、またその本質にある純粋さに打たれ、「MP研の留学生就活支援講座」にMAKIKOさんと協力することになった。
雑学が就活のカギを握る

 しかし、なぜ私設の就活講座なのか? そこには宮本さんの思いと大学の苦境がある。

 就活成功の秘けつはさまざまあるが、大切なのは「喋れること」。自分を面接相手に印象付けることだ。語れるようになるためには、浅くても広い雑学知識が必要である。といってもバラバラではダメ。マーケティングやマネジメント、消費者や文化を横断的に理解し、その本質をワシづかみにするキーワードがあって初めて、「いいこと言うね!」になるのだ。

 まずは大学が支援するべき? いやいや、そうはいっても教授は自分の教育カリキュラムを崩してまで就活支援はしたくない。学生課も、中退者の食い止めや日本人学生の就活支援で手一杯。留学生にまで手が及ばない。

 そんな時、ITやマーケティングを中心にコンサルティング活動をしてきたMAKIKOさんと私がいたというわけだ。さらに私は「utte」というWebサイトを中心にアーティスト支援の文化活動を実践、連載『うふふマーケティング』でも幅広いトピックスで読者を煙に巻いている。雑な生き方もたまには役に立つ

フォーとラーメンをつなげる
ベトナムの代表的な料理フォー

 とはいえ、学生を喋らせるのは簡単ではない。試行錯誤の末たどり着いたのが、机を取っ払って輪になって座り、講義ではなく雑談、自分から語るようなスタイル。

 メニューも工夫し、就活トピックス編では「質問の仕方ハウツー」「会社HPの就活分析」「面接の黄金法則」などすぐに役立つノウハウを、文化・歴史編では両国の「世界遺産」「伝統芸能」「性格」などをテーマにする。さらに、最近ハマったことを語る“1分間スピーチ”では、日本語で汗をかいてもらう。ワイワイやりながら、ベトナムのフォーはだんだん日本のラーメンとつながっていく。

 この度、タイミング良く参加者から内定が2人もでた。ゴクさんは大手IT企業、パンクさんはエンターテインメント系開発企業に。僕らの小さな支援で、彼らのでっかい笑顔を見ることができた。MP研の“就活の母”ホアさんも大喜びだった。

MP研で就活支援を行うホアさん(撮影:MAKIKO)

 意欲的な若い留学生を受け入れれば、停滞気味の企業も、老いた国もフレッシュになる。留学生の母国とも仲良くなり平和が広がる。もちろん、おいしいフォーだって、たくさん輸入される。

 成長と開国はいつの時代でもトレードオフ。参加・不参加で迷うTPPもそこが試されている。西洋医学の最新情報を伝えたシーボルトからサッカー日本代表のザッケローニ監督まで、振り返れば日本は外から優れた人を受け入れて成長してきた。これからもそうなのだ。

 PHOプロジェクト第1期は12月で終了。しかし、第2期として引き続きベトナム人留学生の参加者を募集している(日本語レベルに合わせて実施)。講義費用は無料なので、関心を持たれた人はMP研の問い合わせフォームまでぜひご連絡を。

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