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書評:企業戦略としてのデザイン~アップルはいかにして顧客の心をつかんだか~

2009-12-22 20:54:34 | 書評
企業戦略としてのデザイン~アップルはいかにして顧客の心をつかんだか~
(Robert Brunner, Stewart Emery, Russ Hall著)

最近アップルがiPod & iTunesのビジネスで大きな成功をあげているからでしょうけど,アップルの成功を分析した本が結構出てます。ジョブスを語る本も多いようですが,この本は,アップルの成功をそのデザイン主導の戦略として,アップルのみならず様々な企業のデザイン戦略とその成功と失敗を書いた本です。
この本では,その製品のデザインの一番重要なものを「カスタマーエクスペリエンス」としてます。つまりその企業の製品により,買ったユーザが体験するものです。ユーザが体験するものは製品の見た目のみならず,使い心地や,シーンとか,そういうものを通して得るものです。それがユーザにとってがっかりするものなのか?,満足するものなのか?によりユーザが使い続けるか,または高付加価値として高額でも使うかを決定すると書いてます。そして様々な企業をとりあげ具体的な事例を多く書いてます。
それを読むと,デザイン主導で企業戦略を立てることは非常に重要であるというものの,実際は多くの会社がそれを行ってきておらず,多くの失敗をしてきているようです。またデザイン主導で行うものの,勘違い等で失敗するケースもあるようです。デザイン主導というのは,単に製品の見た目の設計ではなく,企業で物を作る人たち一人ひとりの意識まで浸透しないと,うまく行かない。見た目が良くても,故障が多かったり,ユーザがサポートがよくないだけでも,エクスペリエンスとしてはがっかりしたものとなるとしています。
まぁ,そりゃー,デザイン主導と呼ぶかどうかはともかく,カスタマーがその製品を使うことで特別な意識をもてるようにするということを,社員一人一人が意識できれば,企業は強いよなとは思いますけど,それが出来るかどうかはまぁ,それぞれでしょう:-p。
エクスペリエンスという言葉から判るように,それを与えるものをデザインとするなら,それは製品の見た目のみならず,音やさわり心地や機能や…つまり五感に訴えてくるものであることがわかります。この本であげているデザインの例はわりと見た目とさわり心地を主にあげてますが,たぶんここでいうデザインはわたしが思うところのデザインだと思います。
この本を読んでいて,そのつくりから「教科書的」だなと思いました。MOTやMBAのセミナで使いそうな,企業分析と戦略についての本だからでしょう。もしかしたら本当にどこかで教科書として使っているのかも知れません。わたしは企業戦略をデザイン主導でやっていけばもっと面白くていい製品が出てくると思うので,この本を教科書として扱う場が増えていけばいいと思います。ただ,やっぱり読んでいて,これを読んで勘違いする人が多いんじゃないかな?とおもいました。この本出てくる事例も,あの大企業がこれだけ失敗するのかというのがたくさんあります。それだけ,まだまだデザインするということを判っている企業や経営者は少ないのでしょう。
コメント
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