一つわたしのこだわりみたいな話を。正しい認識とは限らないので,あしからず。
わたしは「博士(芸術工学)」という学位を持っています。珍しい学位なので,名刺に書いていると,どういう学位ですか?と良く聞かれます。その時々でいろいろ説明の仕方は変わりますが,一つは「英語で言うとDesignですよ」という説明です。で,なぜかこう説明すると相手はがっかりします(苦笑)。「なんだそうですか」という感じで。
どうも「芸術工学」という怪しげで,可能性を感じる単語が「デザイン」という聞き慣れた言葉に変換されて,身近というか,範囲が明確になってがっかりするのでしょうか?。でも,いつも思うのですが,そういう人にわたしは聞きたいのです「あなたが思うところのデザインってなんですか?」と。
「デザイン」というとどうも普通の人は,ある工業製品とかの見た目を設計するものだと思っているようなフシがあります。辞書で引いても「Design」は「設計,図案,下絵」などいう意味があります。あと「計画,目的,意図」というような漠然としたものもあります。確かに"design"を「設計」というのは間違ってませんが,「デザイナー」を「設計者」をいうと,少しニュアンスが違って感じます。というわけで少し整理すると,「設計」というのは狭い意味ではある生産物をつくるときの構造とかを決める作業でしょう。また「図案」とか「下絵」というのは具体的にその時に描いた絵のことを指すと思います。「計画」とかになるともう少し広くて構造だけではなく,ものを作る目的とか,線表とか,収支計算とかそういうものも含みます。そういうものも「デザイン」という事は可能ですが,日本人的な感覚では例えば生産計画をする人を「デザイナー」というのには抵抗があるでしょう。
日本で「デザインをする」というと,こういう「設計」というよりは,むしろ製品の見た目やパッケージを決める作業のことを指すことの方が多い気がします。「デザイン家電」という様な言葉がありますが,普通の家電ではなく見た目が変わった家電のことを指します。こういう事があるので,デザイナーは製品の「見栄え担当」と思っている人もいるんではないでしょうか。
わたしは「デザイン」というものは,ある工業製品や工芸品等をつくるときの設計だと思いますが,それは,その品の,機能,使いやすさ,外観等,そして物語を整える作業のことだと思ってます。つまり単なる見た目だけではなく,使った人が十分に満足が得られるための性能,使い心地,そしてそれを使ったことを誇らしげに思えること,それらの全てのレベルをあげるにはどうしたら良いかを考えて設計するのがデザインだということです。
ですから,物事をデザインするにはその製品に使われる技術の中身を知っていなければならないし,改良もしなければならない。そして一番大事なのが,その技術や製品が使う人の心や体にどの様に響くかを,常に意識していなければならないということです。単純にカタログスペックで,性能が上昇しても,ユーザが実感しないと意味がありません。そして,使いやすさやそのものの形や色も影響します。人と違ったものを使っているという満足感の,その製品の形や,それに込められた物語によってつくられます。同じ機能や形の製品でも,そのメーカのそれまでの積み重ねで,まったく違った意味を持つこともあります。それらを全て意識し,バランスをもってつくっていくのがデザインをするということです。
これらの事をやるには,工業製品の場合,それに使われている技術を知らなければ
なりません。工業的な知識も必要ですし,自然科学の知識も必要です。また外的な情報が人の五感や心にどの様に響くかも知らなくてはいけません。心理学や感性工学などがそうでしょう。そして,最後に,製品の特別感をつくための,アートの感性も必要です。あくまでもこれらを全て駆使する必要があります。例えばアートだけの観点でつくったら,作者の自己主張ばかりが際立った使いにくい作品になるかも知れませんし,工学的な観点ばかりでは,性能は凄いけどやっぱり使いにくいし,見た目も野暮…なものができてしまうでしょう。
また,「見た目」ということから絵画や造形的な部分に目が行きがちですが,使いやすさや体験のためのアート的観点ですから,音だったり,触覚だったり,臭いだったり,五感に訴えてくるもの全てが,対象になります。
「design」というと「デザイン」ですが,実は「芸術工学」という和訳は特殊ながら上に書いた,工学からアートまで…という範囲を明確に示していて,わたしは凄く好きな言葉です。そして芸術工学という言葉からデザインという言葉を再びみると,デザインというのは単にものの見た目だけではない,もっとその工業製品を,それを使う人達の体験自体という観点から見て造ることだという事に気づきます。
奇しくも,いまAppleがiPodで成功を続けていることから,工業製品にデザインを
重視する…という動きがビジネス界で拡がってきてるように思います。ですが,その多くが,製品の見た目を優先するというところに陥っていて,使いやすさ,機能,そしてストーリそれらも含めてのデザイン…というところには至っていないように思います。いや,Appleはこれらがすばらしく出来てるのですが,それ以外のメーカにはどうもバランスが悪い製品を出しているところが多い,ということです。
これからのデザイン…というか,成功するデザインというのは,「芸術工学」としてのデザイン…という風に考えて行くべきだろう…とわたしは考えます。そう考えると,「デザイン?…なぁーんだ…」って事にはならないと思うんですけどね(苦笑)。
わたしは「博士(芸術工学)」という学位を持っています。珍しい学位なので,名刺に書いていると,どういう学位ですか?と良く聞かれます。その時々でいろいろ説明の仕方は変わりますが,一つは「英語で言うとDesignですよ」という説明です。で,なぜかこう説明すると相手はがっかりします(苦笑)。「なんだそうですか」という感じで。
どうも「芸術工学」という怪しげで,可能性を感じる単語が「デザイン」という聞き慣れた言葉に変換されて,身近というか,範囲が明確になってがっかりするのでしょうか?。でも,いつも思うのですが,そういう人にわたしは聞きたいのです「あなたが思うところのデザインってなんですか?」と。
「デザイン」というとどうも普通の人は,ある工業製品とかの見た目を設計するものだと思っているようなフシがあります。辞書で引いても「Design」は「設計,図案,下絵」などいう意味があります。あと「計画,目的,意図」というような漠然としたものもあります。確かに"design"を「設計」というのは間違ってませんが,「デザイナー」を「設計者」をいうと,少しニュアンスが違って感じます。というわけで少し整理すると,「設計」というのは狭い意味ではある生産物をつくるときの構造とかを決める作業でしょう。また「図案」とか「下絵」というのは具体的にその時に描いた絵のことを指すと思います。「計画」とかになるともう少し広くて構造だけではなく,ものを作る目的とか,線表とか,収支計算とかそういうものも含みます。そういうものも「デザイン」という事は可能ですが,日本人的な感覚では例えば生産計画をする人を「デザイナー」というのには抵抗があるでしょう。
日本で「デザインをする」というと,こういう「設計」というよりは,むしろ製品の見た目やパッケージを決める作業のことを指すことの方が多い気がします。「デザイン家電」という様な言葉がありますが,普通の家電ではなく見た目が変わった家電のことを指します。こういう事があるので,デザイナーは製品の「見栄え担当」と思っている人もいるんではないでしょうか。
わたしは「デザイン」というものは,ある工業製品や工芸品等をつくるときの設計だと思いますが,それは,その品の,機能,使いやすさ,外観等,そして物語を整える作業のことだと思ってます。つまり単なる見た目だけではなく,使った人が十分に満足が得られるための性能,使い心地,そしてそれを使ったことを誇らしげに思えること,それらの全てのレベルをあげるにはどうしたら良いかを考えて設計するのがデザインだということです。
ですから,物事をデザインするにはその製品に使われる技術の中身を知っていなければならないし,改良もしなければならない。そして一番大事なのが,その技術や製品が使う人の心や体にどの様に響くかを,常に意識していなければならないということです。単純にカタログスペックで,性能が上昇しても,ユーザが実感しないと意味がありません。そして,使いやすさやそのものの形や色も影響します。人と違ったものを使っているという満足感の,その製品の形や,それに込められた物語によってつくられます。同じ機能や形の製品でも,そのメーカのそれまでの積み重ねで,まったく違った意味を持つこともあります。それらを全て意識し,バランスをもってつくっていくのがデザインをするということです。
これらの事をやるには,工業製品の場合,それに使われている技術を知らなければ
なりません。工業的な知識も必要ですし,自然科学の知識も必要です。また外的な情報が人の五感や心にどの様に響くかも知らなくてはいけません。心理学や感性工学などがそうでしょう。そして,最後に,製品の特別感をつくための,アートの感性も必要です。あくまでもこれらを全て駆使する必要があります。例えばアートだけの観点でつくったら,作者の自己主張ばかりが際立った使いにくい作品になるかも知れませんし,工学的な観点ばかりでは,性能は凄いけどやっぱり使いにくいし,見た目も野暮…なものができてしまうでしょう。
また,「見た目」ということから絵画や造形的な部分に目が行きがちですが,使いやすさや体験のためのアート的観点ですから,音だったり,触覚だったり,臭いだったり,五感に訴えてくるもの全てが,対象になります。
「design」というと「デザイン」ですが,実は「芸術工学」という和訳は特殊ながら上に書いた,工学からアートまで…という範囲を明確に示していて,わたしは凄く好きな言葉です。そして芸術工学という言葉からデザインという言葉を再びみると,デザインというのは単にものの見た目だけではない,もっとその工業製品を,それを使う人達の体験自体という観点から見て造ることだという事に気づきます。
奇しくも,いまAppleがiPodで成功を続けていることから,工業製品にデザインを
重視する…という動きがビジネス界で拡がってきてるように思います。ですが,その多くが,製品の見た目を優先するというところに陥っていて,使いやすさ,機能,そしてストーリそれらも含めてのデザイン…というところには至っていないように思います。いや,Appleはこれらがすばらしく出来てるのですが,それ以外のメーカにはどうもバランスが悪い製品を出しているところが多い,ということです。
これからのデザイン…というか,成功するデザインというのは,「芸術工学」としてのデザイン…という風に考えて行くべきだろう…とわたしは考えます。そう考えると,「デザイン?…なぁーんだ…」って事にはならないと思うんですけどね(苦笑)。