森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

春三月

2023-03-02 | 日記


 森に春がやってきました。
 とはいっても周りは雪だらけですが、三月に入ると森の空気が一変
 します。
 冬の間は、一度も解けることなく積み重なっていた分厚い雪が、
 いよいよ解けだしたのです。
 この先一か月かかって雪が消える四月になると、ほんとうの春といえる
 のでしょうが、自分としては早く気持ちを切り替えたいので、勝手に
 春三月にしています。
 
 例年三月は晴れの日が多いので、回りを樹木で囲まれたこの小屋では、
 枝に葉の無いこの時季が年間通していちばん陽光が室内に入ります。
 気持ちが明るく希望的になるのも、そのせいでしょう
 もちろん健康にもいい筈です。
 
 この森は基本的には落葉広葉樹林ですが、小屋を取り囲むように高木
 の針葉樹カラマツがあります。
 カラマツは珍しい落葉針葉樹ですから、冬にはまったく緑の葉は見ら
 れません
 その分冬季間小屋に陽が当たるとはいえ、風景がただ白い雪と枝に
 囲まれているだけではやはり淋しいものがあります。
 なんとか色彩を観たいものだと考え、二十数年前に小屋の脇にモミの木
 を植えました。
 植えた当時はひざの高さしかなかったのですが、それでもなにもない
 ただ真っ白な空間に若々しい緑はよく目立ちました。
 しかし大自然の中では、あまりにも小さく弱々しく見えたので、うまく
 育つものかと心配でした。
 それが今では小屋の高さを超え、広げた枝は小屋の窓まで届きそうに
 なりました。
 たぶんこの駒ケ岳の火山灰質の土壌が合っていたのでしょう。
 その堂々たる緑の樹形は、冬場の白いだけの世界にあって観る者に
 活力を与えてくれています。



 雪が解けだし、少しでも土が現れると急に鳥たちの動きが活発になります。
 そして森で唯一の緑葉を保つ、この小屋のモミに集まってきます。
 小鳥の名前はよく分からないのですが、早朝からさまざまな種類の鳥たちが
 絶え間なく飛んできては、モミの枝を揺らしていきます。
 少し前には、今話題の「シマエナガ」が集団でやってきて暫く遊んでいき
 ました。
 スズメより小さな体に尾が長く、真っ白なお顔はまるで雪だるまのようでした。
 
 こんな風に暖かい室内から一日中野鳥を観られ、そして合唱を聴けるなんて、
 なんとありがたいことかと思います。
 モミを植えた時には想像もしなかったことです。
 植木屋さんからは、ちょっと高価だったのでがんばって買ったのを覚えています。
 しかし今になって思えば、じつに安い買い物でした。
 こんな風にPCを打ちながらも、鳥たちの声を聴きながら彼らと同じ空間で過ごせ
 るのですから。
 
 三月は一年で一番希望的な季節です。
 毎日どんどん雪が解けて、四月には山以外のほぼすべての白いものが
 見えなくなります。
 そして土が現れると、待ってましたとばかりに緑が顔を出してきます。
 さらに出番を間違えない虫たちも。
 モノクロ風景がカラーに劇的に転換するそのプロセスを日々追える
 楽しい一か月です。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 

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