森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

駒ケ岳と横津岳

2020-12-30 | 日記


 この小屋から二つの山が見えます。
 北に北海道駒ケ岳、南に横津岳です。
 今は二つとも、ただ真っ白く大きな塊になっているから、背景が青空でもない
 限りは形はよく分かりません。
 ともに1000mを超える山ですから、この辺りでは高い山といえます。
 駒ケ岳は北海道百名山に名を連ねていますが、横津岳はなぜかここに入って
 いません。
 たぶん、選定した人の山形の好みなのでしょう。
 
 駒ケ岳は全国に20山ほどあるそうです。
 中でも有名なのは、南アルプスの甲斐駒ケ岳と、中央アルプスの木曾駒ケ岳
 です。ともに3000mに近い山で、古くから修験道の人々の聖地です。
 近くは青森県の十和田湖の辺りにも、大駒ケ岳があります。
 一方横津岳は、日本中にただ一つだけの山です。



 朝夕に二山を眺めていると、雪の降る日はもちろん見えませんが、雨の日に
 は上の方は雲に覆われて、その下だけが八の字に広がって、面白く見えたりし
 ます。
 晴れた夕暮れには、真っ赤に燃えます。時には大きく見えたり、小さくポツン
 とした淋しい感じの日もあります。
 そして不思議なことに、稜線のどこかに、先に逝ってしまった人々が小さな
 集団をつくって、静かに暮らしているような感覚になります。

 宮沢賢治さんも『春と修羅』の「噴火湾(ノクターン)」の中で
  黒く立つものは樺の木と楊の木
  駒ケ岳駒ケ岳
  黒い金属の雲をかぶって立ってゐる
  そのまつくらな雲のなかに
  とし子がかくされてゐるかもしれない
 と書いています。
 あれほど敬虔な法華経徒だった人なのに、噴火湾にいきなり立ち上がる駒ケ岳
 を望み、思わず仏よりも、日本人の自然神思考が湧きだしたのでしょう。

 しかし、知る限りでは駒ケ岳にも横津岳にも神山霊山伝説は伝わっていません。
 いや、そもそも古くから北海道の我々には、山に信仰を求める精神性はなか
 ったのです。
 それはアイヌ文化に、弥生の稲に係わる生活がなかったからだと思うのです。

 そんな、山の見える場所が気に入って、もう長く暮らしています。



 2020年が終わります。
 自分としては、コロナ禍にあっても、山奥の利を活かして仕事は継続できたし、
 すばらしいクラフトのお手伝いもできました。
 また、ボランティア活動の新しいフイールドも開かせていただきましたし、例年
 より遥かに多くの本を読むことができました。
 みなさんに心より感謝いたします。
 
 さあ、来る歳はどんな歳なのでしょう。
 ワクチンが届くのを心待ちにしながら、生かされていることに応えていきたい
 と思います。

 よいお歳を!


コロナの歳の瀬

2020-12-23 | 日記


 先週のドカ雪のあとは、降雪も少なく風も吹かず、穏やかな日々が続いています。
 昨日からは寒さも和らぎ、今日は青空が広がりました。

 今年も残るところ一週間ほどになりました。
 毎日コロナの感染者数ばかり気になって、オリンピックが中止になったことや、
 あべちゃんがお腹ぴーぴーで辞めたことなど、どうでもよくなってしまいました。
 そして昨日は、とうとうコロナの死者が3千人を超えたと発表されました。
 さらに来年終息するまでには、かなりの人々が亡くなると予想されています。
 これはもう歴史的な大災害です。
 当初は、お偉いさんたちも「日本人は外人とは民度が違う」などと、意味不明な
 ことを口走っていましたが、今はシュンとしてしまいました。

 大災害といえば、東日本大震災から10年たって、未だに避難先から戻れない
 人々が大勢いるというのに、またの大災害です。
 そして今も思い出すのは、東日本大震災のさらに15年前に起きた、阪神淡路
 大震災です。
 この時の傷だって、まだまだ癒えてはいないのに。

 専門の先生たちは、よくスペイン風邪のことを引き合いにだして、「100年
 に一度のことです」などといいますが、災害としては、しょっちゅうあるよう
 な気がして、少し調べてみました。
 1919年のスペイン風邪で日本の死者45万人、以降1923年関東大震災
 死者不明者10万人超、1933年昭和三陸地震死者不明者3千人超・・・・
 などなど3千人を超える災害が100年間で10もありました。つまり平均す
 ると10年に一度大災害がおこっていることになります。千人以上の災害も加
 えるとなんと、5年に一度おこっています。

 こりゃ~想定外などと、のんびりしている場合ではありません。
 10年先にまた大きいのがきますよ。
 偉い人たちは遊んでいられませんよ。



 残念なのは、東日本大震災時の福島原発からの避難者が、避難先各地で差別され
 たことです。
 そして今、必死でコロナと闘う医療従事者が、差別を受けているとききます。
 変わっていません。なにも変わっていないのです。

 きたる歳もコロナで明けます。
 早くワクチンが届きますように。


ドカ雪

2020-12-15 | 日記


 昨日降り出した雪は、今朝まで続き、今年初のドカ雪となりました。
 それでも、お昼前には止んでくれたので、ソレッとばかりにこれも今冬初の
 雪掻きの準備です。
 軽い雪のうちに掻いておかないと、積もると重くなって大変です。
 車も動かなくなってしまいます。



 昨日まで眼に映るものはすべて茶色だったのに、それが一日で完全に真っ白
 になってしまいました。
 まるで回り舞台のように、一瞬で変わる自然の風景を観るのは、なんとも
 不思議な感覚です。
 そうです、旅の風景と同じなのです。列車でひと眠りして目が覚めると、ま
 るで違った景色が眼前に現れてびっくりします。これと同じなのです。
 ということは、森の中では居ながらにして旅を楽しめるのでしょうか。

 ぼんやり考えていないで、早く雪掻きを終えなくっちゃ、と雪の上に足を
 一歩踏み出すとズルㇼと滑りました。なんとかバランスをとってコケません
 でしたが、危ないところでした。
 打ちどころが悪ければ、ハイそれでおしまいです。
 頭ではわかっていても、体がまだ雪を認識できていないのです。

 一瞬の出来事で人生は一変します。
 いや、出来事じゃなくても、一本の電話、一通の手紙、一冊の本、ひとつの
 言葉、で人は生きる方向がガラリと変わります。
 そして、決して元へは戻れません。
 人は脆く儚く、最後は呆気ないものです。
 こんな誰もがいやというほど経験している、ありふれたことを、あらためて
 思い起こさせてくれる雪でした。

 そうだ、来年はコロナが終わるから、また旅をやろう。もう長い旅はできな
 いから短い旅をちょくちょくやろう。
 徐々に弛緩していく精神性を取り戻すには、それがいちばんいいようです。
 三木清さんの「旅において出会うのはつねに自己自身である。自然の中を行
 く旅においても我々は自己自身に出会うのである。旅は人生のほかにあるの
 ではなく、人生そのものの姿である。」この言葉を思い出しました。

 雪はお昼過ぎからまた降り出しました。
 明朝は、どんなふうになっていることやら。


冬眠

2020-12-09 | 日記


 よいお天気が続いています。
 朝いちばんに外のドアを開けると、眩しい朝日と冷たい空気がピリッと顔にきます。
 ありがたいことに、今のところ森では雪が少なくて、大変助かっています。
 先週降った雪が今年の根雪になるのかな、と思いましたが、ほとんど解けてしまい 
 ました。
 とても森の12月とは思えない景色です。



 今年も木々に、天然のイルミネーションが点灯しました。
 この森にも、クリスマスとお正月がやってくるのです。
 コンちゃんもピーちゃんも、ときどき山越えてやってくるエゾシカのノンちゃんも
 大喜びしていることでしょう。
 
 ヒグマのドンちゃんは、もう冬眠しているようです。
 ドングリが不作の年は、冬眠時期が早いのです。
 食べものがないと、サッサと穴ぐらに潜って寝てしまいます。利口ですね。
 動物園のクマが冬眠しないのは、一年中餌を与えるからです。
 
 エゾリスのピーちゃんは、しっかり冬眠はしないものの、冬は巣穴の中で、うとうと
 しながらじっとしています。
 2週間に一度ぐらいお腹が空いて目が覚めて、貯蔵していた食べものを食べたらまた
 うとうとに入ります。
 みんな知恵がありますね。
 コンちゃんやノンちゃんは冬眠しません。なんとか食べものを見つけるのです。
 冬眠できたら楽なのに。

 人も、せめて雪の深い2カ月間だけでも冬眠できたらいいのに。
 目覚めた春がなんとも新鮮でしょうね。
 新しいライフスタイルが生まれます。
 目覚めなかったら、たいへんですけど。

 12月は時間のたつのが早いです。あれよあれよで終わってしまいます。
 今年こそ、ゆっくり小屋のお掃除したいです。


待ち遠しい

2020-12-02 | 日記


 師走に入ったとたんに、まるで約束していたかのように、雪景色になりました。
 どうやらこれは、根雪になりそうです。
 来年の春まで土ともお別れなのか、と思うと少々淋しくなります。
 
 それとは逆に、湖では北からのお客さんが毎日到着して、賑やかになっています。
 ガンやカモたちの団体客です。
 水面に降り立つやいなや、旅の疲れもなんのその、すいすい泳ぎ回っています。
 
 これで白鳥たちが着いてくれたら、湖は華やかな冬のお祭りのようにになります。
 白鳥の到着が待ち遠しいです。



 例年なら、大沼湖畔には南の国から、雪を楽しむ観光客の団体さんが到着します。
 公園駅の周辺では、さまざまなお国の言葉が飛び交って、それは賑やかです。
 しかし、今年はそんな光景はまったく見られません。
 もちろんコロナが原因です。
 駅前通りも閑散としていて、人影もほとんどありません。
 すでに閉店に追い込まれた店もあると聞きます。 気の毒です。

 確かな報道によると、アメリカ、ドイツ、イギリスでは今月中にコロナワクチンの
 接種が始まるそうです。
 日本にはいつ来るのでしょうか。
 到着が待ち遠しいです。