「無人駅」と言うと少し淋しい感じがします。
ちょっと前には大勢の人々で賑わった場所だったのに、今は寂れて乗客が減り、合理化で無人に
なった駅。あの頃改札にはいつも優しい駅員が立っていて「おはよう」「おつかれさん」と声をかけあ
って手渡しで切符を受け取っていました。今は改札口の脇に小さなボール紙の箱が、画鋲で止めら
れていて乗客はその中に切符をポトンと落して出て行く、駅舎を出ると足元にはぺんぺん草が・・・
一般的にはこんな風景を連想してしまいます。
しかしこの駅はそんなイメージとは全く違います。
大自然の中に小さな素朴な建物が二つあります。一つが駅舎、もう一つがトイレです。改札口も
なければ券売機もありません。最初から無人を想定して造ったのでしょうか。
駅舎の大半は待合室になっていて、近くの小学校へ通う子供たちのギャラリーになっています。
素直で力強い絵を見ていると、明るい声が聞こえてくるようです。
レトロな椅子に腰かけると、いきなり昭和に連れ戻されて、懐かしい想い出が頭を巡ります。
誰もいないのに、ここで一度も他人に会ったことがないのに、なぜか人の気配がするのです。
しばらく座ってボンヤリしていると、突然スピーカーから人間の声が流れてきて、ビックリ!
「列車が通過します。危険ですから線路内から出てください」でした。昔、自分も線路を歩いたこ
とがあります。一直線だから近いのです。今でも、どこの地でも同じ事をやるアホがいるのだと嬉
しくなりました。
このトイレが昔の「厠かわや」の名残りがあって実にいいのです。内部は清潔そのもの。誰もい
ない所で一生懸命清掃してくださる方に感謝です。
今、日本中に増えている無人駅ですが、その一つ一つが個性的で土地の歴史と文化をギッシリ
詰めて皆を楽しませてくれるなら、無人駅巡りなどおきるかもしれません。