森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

小春日

2019-11-24 | 日記


 初雪のあとに冷たい雨が降り、この二日ばかりは暖かい小春日のようなお天気です。
 おかげで山道の雪はすっかり解けて、歩きやすくなりました。車道は乾いてる部分もある
 くらいです。
 函館からこの森までは約40km、小一時間の距離です。
 街を訪れたあとに森へ戻るこの距離は、さまざまな想いが現れては消えていく、楽しくほ
 ど良い距離なのです。
 今日の活動の総括、反省、追憶、森生活への頭の切り替え、そして次の予定などが函館か
 ら七飯町へと変化する風景にまるで同期しているかのように移ろっていきます。



 次に雪が降ったら、春までの根雪になるかもしれない。
 毎年今頃は、冬ごもりの中で本を読もうと思います。
 一冊読むとそれが入口となって、同じ著者の本をもう一冊読みます。その著者の世界にも
 う少しいたいからです。そしてそれがまた引き金になって、関連の書がどんどん繋がって
 読み続けていきます。
 最初の一冊のきっかけは、他人に教えてもらったり、ネットで知ったり、さまざまです。
 それはその本との縁なのでしょう。いや出会いというべきでしょうか。
 
 そして冬があけます。

 そんなこと考えているうちに、大沼の町へきました。
 さあ、ここから駒ケ岳に向かってあと15分走ります。
 日はとっぷり暮れたけど、山に吸い込まれていく感じがなんともいえません。


                              動(yurugi)

 
 

森の初雪

2019-11-17 | 日記


 おとといの朝はいきなりこんな風景になっていました。
 前日までの色鮮やかな秋景色は一瞬で消え去ってしまいました。
 今年の初雪です。森に冬がきました。



 冬はうしろから突然ドンと訪れます。
 だからこの時季森の生きものたちは、絶えず身構えながら生きなくてはなりません。
 それでもひとたび雪を見ると「よし!」とばかりに無意識に冬モードにギヤが変わるから
 不思議です。
 一方春は前方からゆっくり優しい笑顔でやってきます。冬場の身も心も弛緩していきます。
 
 頭の中だけいつでも春という人もいますが、どうなのでしょうか。

 一瞬で変わるのは風景ばかりではありません。
 人生もまた一瞬のできごとで大きく変化することを誰もが知っています。
 一本の電話、一通の手紙によって人生のすべての歯車の回転が変わることだって、よくあ
 る話です。
 一人々が自分固有の人生ストーリーを創り上げて歩んできたけれど、誰にもこの先が見え
 ません。
 だから人はヒントを得ようと本を読むのでしょうか。
 


 初雪が春までの根雪になることはほとんどありません。
 しばらくの間、降ったり解けたり、みぞれや雨になったり、変化しながら徐々に寒さが増
 していき本格的な冬になります。
 ただもう葉は落ちてモノトーンの世界になってしまったから、色彩は春まで復活しません。
 色彩は空や鳥たちに求めるしかありません。
 その冬空は空気が澄み渡って、なんともいえない微妙な色彩を見せてくれます。
 
 さあ、冬の長い時間を有効に使うのだ。


                             動(yurugi)

 
 
 
 

冠雪

2019-11-10 | 日記


 森はこの一週間でグッと冷え込んできました。
 駒ケ岳山頂には真っ白な雪がおりて、森のみんなに緊張が走りました。
 「さあいよいよくるぞ」とばかりに、冬を迎える心がまえと生活の備えにかかります。
 一番大切なのは食料と燃料です。昔ながらのやりかたで大根とマキを作っている人も
 かなりいます。自分も夏場からこつこつマキを溜めています。



    身にしみて 大根からし 秋の風     芭蕉

 この時季の風情を大根でいいあらわすなんて、この方ならではですね。
 芭蕉さんは大根がお好きだったようで、大根の句がいくつものこっています。「からし」
 とあるから、おろして食べたのでしょうね。晩秋の大根はとくに美味ですからね。



 コンちゃんはちょっと淋しそうですが、すでに冬毛に衣替えして準備完了のようです。
 ゆく秋が名残り惜しいのでしょうか。



 ピーちゃんは貯蔵の知恵があります。木の実を土に埋めておいて、真冬のなにもない時
 に掘り出します。雪が降り積もっても正確にその場所を記憶しています。
 人もピーちゃんに習って大根やキャベツを埋めています。雪の下から取り出した野菜は
 甘みが増して、これまた美味なのです。
 もし埋めた場所が分からなくなったら、ピーちゃんに聞くことですね。



 はるか遠くから渡ってきた白鳥たちはお疲れ様です。
 いつも家族で助け合って行動します。いいですね。

 今日は久しぶりの快晴で、山の雪もかなり解けました。
 気温の上がった昼間にタイヤとワイパーを交換しときました。
 地上に雪がくる前に雪囲いや雪かき道具の整備、それに心の引き締めをやらなくちゃ。
 当面忙しい日が続きます。


                           動(yurugi)


 

修道院

2019-11-05 | 日記


 いつのころからか、秋の終わりの雪がくる前に修道院を訪れるのがならわしになりまし
 た。
 海岸からさほど離れていない丸山は暖かく、今が紅葉の真っ盛りです。
 ここには森とはまた違った穏やかな時間、空間が広がっています。
 実際に他人と出会うことはほとんどないのですが、なぜか大勢の人々の存在を感じるか
 ら不思議です。



 子どものころから縁があって、丸山の上には何度か登りました。
 一度クマに遭遇したことがあって、それからはルルドのマリア像より上へはいかないよ
 うにしています。



 1891年創立開院とあるから、128年前です。
 この早い時期にこの地を選び、フランス人とカナダ人が入植開墾して修道院を創立した
 のは、千軒岳の殉教が要因でしょうか。 なにもわかりません。

 「赤とんぼ」を作曲した三木露風さんや「男爵イモ」の川田龍吉さんがここで洗礼を受
 けています。



 一年ぶりに思いっきり異国の空気を吸って、さあまた森の生活に戻ります。
 すこし前に真っ白い雪虫が舞っていたから、じきに駒ケ岳の冠雪がありそうです。いや
 へたすると地上にも降るかもしれない。

 いよいよ残り少なくなった秋です。
 一日々、暦のマス目の数字を眼で追っています。


                              動(yurugi)