森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

解氷

2021-03-28 | 日記


 湖の解氷が本格的になっています。
 いよいよ北国も春本番となりました。
 数日前には小川のほとりで、生まれたばかりのフキノトウを見つけました。
 あまりに小さかったので、採取しませんでしたが、いよいよ楽しい季節の
 幕開けを知らされました。



 今、白鳥たちが大沼に大集結しています。
 ここで越冬したのは20羽ほどでしたが、内地からの北帰行組が途中で一時
 滞在しているらしく、はっきりわかりませんが、その数は数百羽にもなりそ
 うです。
 そして早朝と夕方に彼らの大合唱が始まると、そのデッカイ声は湖面を渡
 って、この小屋まで届きます。
 森の一年で一番賑やかな時です。
 
 しかしそれも束の間、もうじきグループごとに、シベリアのコリマ川や
 インジギルカ川を目指して旅立っていきます。
 来月の半ばに最後のグループが飛び立つと、湖はシーンと静かになってしま
 います。
 半年間いつも近くのどこかにいて、一緒に冬を越してきた仲間が完全に消え
 てしまうのですから、なんとも淋しいものです。
 
 サンサーンスさんやチャイコフスキーさんが、白鳥の名曲を書いているのも、
 ただ白鳥の華やかさだけではない、さまざまな感慨があったのでしょうね。
 昭和の初めまで、東北のある地方には、秋に再来する白鳥に「今年もご無事
 でなあ 待ってましたよ~」と挨拶する習慣が残っていました。
 それは、別かれた自分の子に対する気持ちだったそうです。

 いつもの年なら白鳥がいなくなると、替わって観光のお客さんが増えてくれ
 たものです。
 今年は厳しそうですね。
 昔から「日本人は桜が咲けば元気になる」といいますが、今年はどうでしょう。


函館西部地区

2021-03-21 | 日記


 短い時間でしたが、早春の函館西部地区を歩きました。
 早朝でしたが、わりと暖かく空気も澄んでいたので、遠くの山々まで見通すこ
 とができました。
 少し高いところに登ると、いつもの懐かしい港の風景が展開されていました。



 函館といえば、ロシア正教会のハリストス教会が、街の象徴のように有名にな
 っています。
 白壁に薄緑色の屋根と塔をもつこの教会は、函館山の麓にいつも穏やかな佇ま
 いを見せてくれます。
 しかし本国のロシア正教会は、無神論を主張するソビエト連邦時代には、かなり
 酷い弾圧を受け、各地で聖堂の破壊や聖職者、信徒の虐殺がおこなわれたと伝え
 られています。
 日本のハリストス正教会は、ロシア正教会から独立していたことで、その災禍を
 免れています。
 
 日本でも、近代になってからも廃仏毀釈があったように、古くは曽我物部の戦い
 から始まって、たびたび宗教戦争がありましたから、宗教者は安閑と暮らしてい
 けないようです。
 ちなみにロシア正教会は、ソビエト連邦崩壊後には復活しています。
 現在は、聖堂や修道院の復興がおこなわれて、信徒が急増しているそうです。



 タイミングよく、公会堂の修復が完了したところでした。
 今度は黄色にブルーグレー系の落ち着いた感じになりました。
 新緑の季節には、周辺の木々に溶け込んだ美しい景観になることでしょう。
 そのころにはまた来なくっちゃ。

 早朝でしかもコロナのせいもあってなのか、観光客の姿を見ることはありません
 でした。
 撮影にはよかったのですが、ちょっと淋しい感じでした。
 コロナが終わったらこちらも復活して、もとの函館西部地区に戻ってほしいもの
 です。


ゆきどけ

2021-03-14 | 日記


 毎日おもしろいように雪が解けていきます。
 小屋の北窓を塞いでいたゴッツイ雪塊も、徐々に低くなって部屋が明るくなり
 ました。
 なんと嬉しいことでしょう。
 


 町へ出てみると、道路はすっかり乾いていました。
 ここまでくると、この先雪が降っても、解ける方のスピードが早いから、もう
 積もることはありません。
 たまに、4月にドカ雪なんてこともありますが、まあ今年は大丈夫でしょう。



 このところ、大沼に白鳥の姿がありません。
 シベリアへ帰るのはまだ1ヵ月も先なのに、どうしたのかなと心配でした。
 白鳥の心配など、よほどの暇人と思われるのでしょうが、やはりいつもいる
 ものがいなくなると、心配そして不安になるものです。

 もしや、と去年の秋に集団でいた辺りを探し回ってみました。
 すると、湖畔から7kmほど離れた、雪が解けて土が現れてる田んぼの方から
 グァーグァーと鳴き声が聞こえてきました。
 急いで近づくと、いましたいました、20羽ほどの集団が元気に動いていま
 した。
 白鳥は水草(マコモ)のほかに、モミを食べることが知られています。
 去年の稲刈り後の田んぼの土から、落ちているモミをより分けて食べている
 ようです。
 湖氷はまだ融けていないので、いち早く雪の消えた田んぼを見つけては飛ん
 できて、食料を確保しているのでしょう。
 昼間は田んぼで働いて、夜は湖へ戻る、つまり通勤族なのです。
 お勤めお疲れさまです。



 横津岳は、まだら模様になってきました。
 乗っかってる雲は、もうすっかり春の雲です。
 来週は彼岸の入り、そして春分です。速い速い。
 東京からは桜のたよりがありました。
 今年は全国的に温かい春のようです。


あれから10年

2021-03-08 | 日記


 三月になった直後に大雪の日が二日ばかりあって、その後は暖かい日が続いて
 います。
 山はまだ真っ白ですが、湖を覆っていた氷は徐々に融けてきました。
 これが始まると「ア~今年も春がきたんだ」と実感します。
 
 去年の秋の落葉が氷の中に閉じ込められてしまって、今それがそのまま融けだ
 してくるから、まるで秋にタイムスリップしたような景色が現れます。
 これも春の楽しみのひとつです。



 暖かくなると森の生きものたちは、急にいきいきと動きまわるようになります。
 小さな鳥たちは、雪が解けて土が顔をだしてる所を見つけて、小さな虫や、食
 べられそうな植物を探します。
 水辺の大きなサギなどは、湖水の融けた隙間から、クチバシを水中に入れて、
 上手に小魚を捕えます。
 みんな生活の知恵があって、工夫しながら生きています。



 早いもので、東日本大震災から10年になりました。
 あの時は関連死も含めて、2万2千人以上の方が亡くなりました。
 そして、未だに全国に散らばった避難者が数万人もいるとのことです。
 福島においては現在、帰還困難区域が7市町にも及び、帰還時期はもとより、
 除染計画もできていないそうです。

 そして今、コロナがきて、8千人の方が亡くなっています。すでに阪神淡路
 大震災(6434人)を上回っています。
 なんてことでしょう。

 ア~、それなのに「復興をアピールする五倫」とか言って被災地に聖火を走
 らせるとか。
 辛い気持ちの被災者も、たくさんいらっしゃることでしょう。
 さすがに気が引けたのか、最近は「人類がコロナに打ち勝った証としての
 五輪じゃ」などと変わっています。
 
 当初は既存の施設を使って7千億円でやるとのことでしたが、今では3兆円
 を超えて、さらにコロナ対策費がかかるそうです。
 日本はいくらでもお金は刷れるけれど、全部若い人たちに負担が及ぶのだか
 ら少しは考えないと気の毒です。

 10年前のあの大震災で、直接被害はなかったものの、価値観も人生観も変
 わって、生きる方向を変更した人を何人も知っています。
 今度のコロナも、人々にさまざまな心的な影響を与えることでしょう。
 それは自分も含めてのことです。

 なぜかこの時期になると、きまってカラスが大集合します。
 そして大合唱を始めます。
 変わらない自然です。