森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

行く夏

2015-08-30 | 日記


 「遠い思い出の夏は~♪」 この森にサザンの曲は似合わないと思い込んでいた
ので、もう長いこと聴かなかったのです。古いCDを整理していて、久しぶりにサ
ザンを聴いてみました。それがなんと意外にも、この緑茂る森に良く合うのです。
夏の終わりのこの時期だからなのかもしれない。「夏をあきらめて」「素敵なバー
ディー」「真夏の果実」など、ゆく夏をおしむバラードがたくさんあります。茅ヶ
崎海岸ではなく、この茅部の森の奥にいても、ちょっと淋しいせつない気分になり
ました。
 来年も再来年も、間違いなく春の次には夏が来るというのに、人はどうして夏だ
けにこんな思いをするのでしょうか。たぶん夏には他の季節にない、特別な魅力が
あるのでしょうね。
 
 長い食生活で、すっかり鈍くなったオッチャンの頭の中にも、若い頃の百分の一
程の感受性がまだ残っていたのだと、勝手にきめて喜んでいました。
 とにかく、今年の夏は明日で終わります。






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名残り

2015-08-22 | 日記
 お盆を過ぎ、日中はまだ暖かいのですが、朝晩は二十度を切って涼しくなりました。
 アッという間の夏。「ちょっと待ってくれ、少なくとも今月いっぱいは夏だよ」と
思っても、空はどんどん高くなり、周りの景色は落ち着いてきて、もう秋の草花が出
てきました。あまりにも急な季節の変化です。
 秋の足音がすぐそばまできているのに、自分の気持ちがついていけなくて、未練が
ましく「まだ夏だ!」と無理に思い込ませています。

 これから暫らくは収穫の時期です。大地の恵みがド~ンと食卓を賑やかにしてくれ
ます。
















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キャンプ

2015-08-18 | 日記




子供達の夏休みも終わりに近付いた先週末に、キャンプ場の前を通りました。この
森からは三キロ程離れた所にあります。
 昔から、内地の若者がバイクで北海道一周するときに、一泊する場所として知ら
れていました。ですから、大自然の中に小さな一人用のテントが点在して、「ああ
がんばっているのだなぁ、一生の想い出になるように、良い旅を!」と応援しなが
ら通ったものです。
 ところがなんと、まるで様変わりしていたのです。僅かな間隔で大型テントがひ
ひめき、足の踏み場もないほどです。まるでどこかの難民キャンプでした。駐車場
は大型キャンピングカーや高級車で溢れ、道端に無秩序に停めてあります。そして
もっと驚いたのは、ほとんどが中高年、というより高齢者なのです。僅か数年前に
は考えられない光景でした。
 
 広い広い北海道でなぜこんなことが? そしてあの若者たちはどこへ行ったので
しょう?

 

 どうやら自然を愛する年配者の、アウトドアーブームがやってきたようです。嬉
しいことです。なにしろ健全ですから。
 森の中でボンヤリ暮らしていると、世の流れに疎くなって、現場に遭遇して初めて
ハッ!と気付くことが多々あります。

 巷は、豊かな良い方向へ行っているのですね。


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ひみつ

2015-08-13 | 日記


「オッチャンいい齢して、ひみつなんかあるの?」とコンチャンが笑います。
「齢に関係なく秘密はあるものさ」
「どうせつまらないことでしょう。僕たちにはそんなもの無いよ」
「それが人間とキツネの違いなのだ、コンチャンには分からんことだ」

 などと偉そうに言ってはみたものの、確かにコンチャンにとってはありふれた事
なのです。でもオッチャンにとっては大事なこと。この夏の楽しみ、真っ赤なキイ
チゴがたわわに実る場所、それが秘密なのです。



 キイチゴを狙っているのは、オッチャンの他に鳥と虫、一瞬のタイミングを逃が
すと大勢で来て全部取られてしまいます。そんな時は本当にガッカリします。かと
いって熟す直前に採ったのでは、味がありません。だから八月に入ると頭の中はい
つもキイチゴで真ッ赤ッ赤。もう人間性が変わるというか、本来に戻るというのか
とにかく負けられないのです。



 おかげで今年は大収穫ができました。
 キイチゴは正確にはナワシロイチゴだそうで、ジャムにしたり果実酒にするのが
一般的らしいのですが、オッチャンの場合は原始的にそのままいただきます。
 
 処暑に近ずく光の中で、ちょっと苦めのコーヒーと甘酸っぱいキイチゴそして
ガーシュイン、今年もやっとオッチャンの夏がきたのです。


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八月の紫陽花

2015-08-06 | 日記
 この森にはちょっと不似合いなブルーのアジサイが、今咲いています。アジサイ
の原種はガクアジサイで、この丸いのは観賞用に人の手で改良したものだそうです。

 水色というか、空色というのか、何とも平和で涼しげなこのブルーのアジサイが
好きです。



 実は十年前に、遠く南の方からわざわざ運んできて植えたものなのです。この小
屋の周りを空色のアジサイ山で囲もうと思いました。問題はこの火山灰土壌にうま
く着くのだろうか、ということでした。詳しい人が「アジサイは強いよ、ただ土に
よって色が変わるから、赤くなるかも知れないよ」とのお話でした。

 それから十年、残念ながら一度も花は咲きません。蕾の出た年はあるのですが、
きちんと咲いたことは、なかったのです。やっぱり無理なのかなぁ、と諦めていま
した。

 ところがなんと、この八月に入って蕾が出たと思ったら、直ぐに白い花が咲き、
そして見事に空色に変化したのです。
 嬉しいのはもちろんですが、「どうしたのだろう、何もなければいいが」と不安
にさえなりました。がんばって定着したのか、それとも異変なのか、無知なオッチ
ャンには分かりません。

 この数日眺めているうちに、また十年前の夢が頭をもたげて、「よし、ここをア
ジサイ小屋にしょう、そしてオッチャンは紫陽花ジイサンなって、森の仲間に自慢
してやるのだ」などと調子が上がってきました。
 
 もし来年の八月も咲いたら、十分可能性ありです。



 そういえば、やはり十年前に修道院の庭で初めて見て感動した、このオオハンゴ
ンソウが、今ではどこにでも群生して、八月を楽しませてくれています。

 植物は強いです。
                              動(yurugi)