森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

花春

2023-03-30 | 日記


 暖かい日が続いています。
 三日前にクロッカスの赤ちゃんを見つけました。
 今年もやってきたのです。
 まだ小さくて淡い色がなんとも初々しかったのですが、今日はドーンと
 大挙して咲き誇っていました。
 こんなになると可愛らしいというより、自然の力強い生命力を感じます。
 


 カタクリの赤ちゃんも顔をだしました。
 花はまだ二センチもありません。
 花色も白っぽく、いかにもこの世に生まれたばかりのようです。
 そして、小さい時はまだ花は上を向いています。
 大きくなると下を向くようになるのは、なにか人間に似ています。
 
 もともとカタクリはどこにでも自生していて、この根っこから
 片栗粉を作っていたわけです。
 今では自然のカタクリはすっかり減少してしまい、代わってジャガイモが
 片栗粉の原材料になっているそうです。
 ジャガイモなら大量栽培できるので、いくらでも作れるようになったの
 ですが、なぜか呼び名は「芋粉」にはならず「片栗粉」を継承している
 のだそうです。
 片栗粉のほうが美味しそうな感じはしますけどね。

 一方クロッカスの球根は食べません。
 カタクリと同じく雪の下でコツコツ成長してきたですから、大地の栄養を
 たっぷり含んでいて、食べたらさぞかしパワーをもらえそうなのですが、
 食べる人はいません。
 漢方でも使わないようです。
 もしや人間にとって、毒があるのかな。



 早いもので三月も明日で終わります。
 昨日二十九日は「マリモの日」でした。
 阿寒湖のマリモが、国の特別天然記念物に指定されたのがこの日なのだそう
 です。
 以前はこの日に釧路でマリモ祭りなどやっていたらしいのですが、観光客
 がおおぜい押し寄せて、保存に支障をきたしてしまい、中止したそうです。
 今は地味にパネル展などをやっています。
 
 阿寒湖のマリモは当然、湖から持ち出すことはできません。
 特別天然記念物ですから、持ち帰ったら罪になります。
 ところが時々他の観光地のお土産屋などで、小さなマリモを売っているのを
 みかけます。
 あれはなにかと調べたら、ロシアから輸入している細長い「藻」を手で丸めて
 球にして「毬藻」にしているのだそうです。
 ただの「藻」では商品にはならないけれど、丸くすれば立派な商品として
 お金になります。
 日本とロシアが手を組み知恵を絞って共同開発した、すばらしいアイテム
 といえます。
 もしや、このような国際共同開発品は、気が付かないだけで身近にけっこう
 あるのかもしれません。
 人間の知恵はすばらしいです。
 そもそも、資本主義社会はありとあらゆるモノやコトを商品として売り続け
 なければ継続できない設定になっているのですから、この先もなにが現れる
 かわかりません。
 楽しみでもありますね。

 フキノトウがすっかり大きくなって、キレイな花弁を作っていました。
 一人でがんばっているようすを見ていると、フキノトウのことを地方に
 よっては、「フキノジイ」とか「フキノシュウトメ」と呼びますが、
 なんとなくわかるような気がしてきました。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

希望の春

2023-03-23 | 日記


 この暖かい一週間で、大沼の湖氷は全面融解しました。
 例年よりだいぶ早いです。
 小屋の前の小道も懐かしい土が現れました。
 こうなると、できるだけ早く車のタイヤを交換しなければなりません。
 冬タイヤは雪上を走るために軟らかいゴムを使っています。
 それゆえ、アスファルトの道を走るとすぐにすり減ってしまいます。
 物置から夏タイヤを引っ張り出して、ジャッキで上げて一本ずつ
 交換する作業はけっこう面倒なものです。
 それでも昔に比べたら、今はずいぶんらくになりました。
 スタッドレスタイヤがなかったころは、いちいちタイヤチェーンを
 脱着しましたし、ラジエターの不凍液を交換したり、雪用ワイパー
 もなかったから、ウィンドウが凍るとよく壊れました。
 懐かしい想い出です。

 雪解けあとに現れた去年の落ち葉を押しのけて、スイセンの
 集団が飛び出してきました。
 若々しい緑色で元気いっぱいに。



 この春の自身の食生活改善運動として、毎日食べるフランスパンを
 ライ麦パンに変えていこうと計画しています。
 もともと、フワフワのやわらかい食パンよりも歯ごたえのある
 硬いパンが好みでした。
 なかでもライ麦パンの重く詰まった食感と、ちょっと酸っぱい味が
 好きでよく食べていました。
 しかしこの山奥の周辺では、ライ麦パンを置いているお店は
 ありません。
 ずいぶん遠くまでいってやっと見つけたことはあるのですが、
 値段がかなり高くてとても毎日食べることなどできません。
 それじゃなくても、エンゲル係数が高いのですから。
 
 そんなとき、ホームベーカリーでライ麦粉さえ入手すれば自分で
 作れることがわかりました。
 ところがこのライ麦粉が国産されていなかったのです。
 それゆえ、輸入のものは普通の強力粉の五倍もの価格で売られて
 いました。
 「はぁ~こりゃ~ダメだ」とライ麦パンを諦め、硬い食感だけを
 求めてフランスパンを作ることにしました。
 そして今日にいたったのです。

 ところが最近NHKのニュースで、北海道の酪農家が牛の飼育の餌の
 価格が急騰して経営危機に陥ってしまい、試行錯誤のうえ自分の畑で
 育てたライ麦を餌とすれば充分代替できることがわかったそう
 なのです。
 ライ麦は寒冷な北海道でも問題なく生育するし、それほど手間も
 かからないというのです。
 そして今後ライ麦栽培をどんどん広げて、餌代の高騰の切り札にして
 いこうとのことでした。

 これを聴いて自分の心にパッと希望の灯がともりました。
 そして北海道のライ麦栽培農家を調べてみると、すでに何軒か
 ありました。
 牛用だけではなく、人間用もあり値段もかなり下がっていました。
 強力粉の二倍ぐらいのもありましたから、これなら自分にも買え
 るでしょう。
 そんなわけで、この春やっと念願の食生活改善が実現しそうなのです。
 なんと希望的なことでしょう。
 やはり人間は「食」がいちばんですね。

 明日、24日はもう彼岸明けです。
 いよいよ森も本格的な春に入ります。


 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

春すすむ

2023-03-16 | 日記


 冬のあいだ湖面を覆っていた分厚い氷が融けだして、ザラザラの
 シャーベット状になり、さらにそれが割れて湖水が現れました。
 ワカサギ、フナ、ヘラブナや水生の昆虫、それに水草たちも久しぶり
 に水中に日光が入るから大喜びしていることでしょう。
 もちろん人も嬉しいものです。
 なぜかわかりませんが。

 湖岸に近い湿地では、まだ数センチの雪が残っています。
 その雪を破って早くも水芭蕉の赤ちゃんが顔をだしました。
 またひとつ新しい命が春の舞台に登場したのです。
 これからの毎日がその成長を観られると思うと、これまた嬉しい
 ことです。
 水芭蕉はやがて真っ白い花をつけますが、それが落ちたあとでも葉は
 どんどん成長し、おばけのように大きくなって秋までがんばります。



 早いもので週末は、春のお彼岸に入ります。
 春はぼたもちでこしあん、秋はおはぎでつぶあん。
 などといいますが、若い時は年中つぶあんが良かったものです。
 しかしなぜか今は、こしあんのほうがよくなりました。
 春のイメージがいいのか、すっかりお上品になってしまったのか、
 よくわかりません。

 ちなみに、小豆の産地といえば丹波や備中が有名でしたが、今は
 国内産の9割が北海道だそうです。
 たしかにこの近くでも、小豆生産者は多いです。
 


 今やお彼岸は仏教行事と思われていますが、もとは神道、仏教、儒教に
 各地方の土俗信仰が混淆して生まれたものです。
 ですから、各地でその地方色が濃く反映されています。
 佐賀県ではお彼岸を神社で行いますし、会津若松では有名な
 「会津彼岸獅子」を舞って奉納します。
 また、沖縄では墓所前で家族会食を楽しみます。
 各地で多様な形のお彼岸があって、それぞれ先祖の供養をしながら
 一年の生活のリズムを刻み、それを楽んでいったのでしょう。
 現日本人のガチガチの形式主義とは違った、昔の日本人の寛容さと知恵を
 感じます。

 遠くから視ると木の枝が赤みを増しています。
 近づくと蕾がかなり膨らんでいました。
 みんなどんどん成長しています。
 あやかりたいです。




 


 
 
 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

フキノトウの赤ちゃん

2023-03-09 | 日記


 冬のあいだに降り積もった雪がどんどん解けていきます。
 雪層の下部はひと冬ぶんの重みで氷結状態になっていますから、
 そう簡単には解けないと思いきや、これもじつに難なく解けだし
 てきました。
 あれほど頑強に構えていた道路脇の雪壁も、すっかりへたって
 情けない表情を見せています。
 もうこうなれば、この先多少の雪降りがあっても、解けるスピード
 のほうが早まって積もる心配はありません。
 つまり、もう春なのです。



 日当たりのよい斜面の雪が崩れ落ち、それから2~3日たって訪ねて
 みると、早速2cmほどのフキノトウの赤ちゃんが顔を出していました。
 今春の野の植物「初お目見え」です。
 長い間、雪の下で準備万端してじっと出番を待っていたのです。
 なんと、希望的なことでしょう。

 若い時から芽吹きや新緑は好きだったのですが、それがこの齢になると
 ある種の感動を覚えるようになりました。
 また、自分は小さな子供と接する機会があるので、いつもその可愛
 らしさに元気をもらっているのですが、最近はより小さな子、つまり
 赤ちゃんのような誕生して間もない人に、可愛らしさとは違う不思議な
 力強い感動を覚えるようになりました。
 なぜそうなったのかわかりません。
 誰もが年老いるとなる現象なのでしょうか。

 もしかして、これは自分自身の残り時間に関係していることなのかと
 思うのです。
 意識の下で、発芽や芽吹き、誕生や更新、などに儚くも明るい未来を
 感じているのかもしれません。

 暗いニュースばかりの毎日ですが、フキノトウの赤ちゃんがそれを
 吹き飛ばしてくれました。
 コロナも収束しそうなので、やっと開放的な春を楽しめます。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

春三月

2023-03-02 | 日記


 森に春がやってきました。
 とはいっても周りは雪だらけですが、三月に入ると森の空気が一変
 します。
 冬の間は、一度も解けることなく積み重なっていた分厚い雪が、
 いよいよ解けだしたのです。
 この先一か月かかって雪が消える四月になると、ほんとうの春といえる
 のでしょうが、自分としては早く気持ちを切り替えたいので、勝手に
 春三月にしています。
 
 例年三月は晴れの日が多いので、回りを樹木で囲まれたこの小屋では、
 枝に葉の無いこの時季が年間通していちばん陽光が室内に入ります。
 気持ちが明るく希望的になるのも、そのせいでしょう
 もちろん健康にもいい筈です。
 
 この森は基本的には落葉広葉樹林ですが、小屋を取り囲むように高木
 の針葉樹カラマツがあります。
 カラマツは珍しい落葉針葉樹ですから、冬にはまったく緑の葉は見ら
 れません
 その分冬季間小屋に陽が当たるとはいえ、風景がただ白い雪と枝に
 囲まれているだけではやはり淋しいものがあります。
 なんとか色彩を観たいものだと考え、二十数年前に小屋の脇にモミの木
 を植えました。
 植えた当時はひざの高さしかなかったのですが、それでもなにもない
 ただ真っ白な空間に若々しい緑はよく目立ちました。
 しかし大自然の中では、あまりにも小さく弱々しく見えたので、うまく
 育つものかと心配でした。
 それが今では小屋の高さを超え、広げた枝は小屋の窓まで届きそうに
 なりました。
 たぶんこの駒ケ岳の火山灰質の土壌が合っていたのでしょう。
 その堂々たる緑の樹形は、冬場の白いだけの世界にあって観る者に
 活力を与えてくれています。



 雪が解けだし、少しでも土が現れると急に鳥たちの動きが活発になります。
 そして森で唯一の緑葉を保つ、この小屋のモミに集まってきます。
 小鳥の名前はよく分からないのですが、早朝からさまざまな種類の鳥たちが
 絶え間なく飛んできては、モミの枝を揺らしていきます。
 少し前には、今話題の「シマエナガ」が集団でやってきて暫く遊んでいき
 ました。
 スズメより小さな体に尾が長く、真っ白なお顔はまるで雪だるまのようでした。
 
 こんな風に暖かい室内から一日中野鳥を観られ、そして合唱を聴けるなんて、
 なんとありがたいことかと思います。
 モミを植えた時には想像もしなかったことです。
 植木屋さんからは、ちょっと高価だったのでがんばって買ったのを覚えています。
 しかし今になって思えば、じつに安い買い物でした。
 こんな風にPCを打ちながらも、鳥たちの声を聴きながら彼らと同じ空間で過ごせ
 るのですから。
 
 三月は一年で一番希望的な季節です。
 毎日どんどん雪が解けて、四月には山以外のほぼすべての白いものが
 見えなくなります。
 そして土が現れると、待ってましたとばかりに緑が顔を出してきます。
 さらに出番を間違えない虫たちも。
 モノクロ風景がカラーに劇的に転換するそのプロセスを日々追える
 楽しい一か月です。