森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

雪の朝

2016-02-29 | 日記


 二月最後の朝は、灰色の低い空です。風もあります。
 昨夜から降り続いた雪が、三十センチ程積もっていました。
 明日から三月、内地からは春の便りも届くのですが、この小屋はいまだ雪に埋も
れています。森の春はまだまだ先です。
 


 昨日は、仕事の区切りがついたので、湖に降りてみました。
 日曜日とあって、湖面はワカサギ釣りの小さなテントで、賑わっていました。い
つも見慣れたモノトーンの景色に、急に色がついて嬉しくなりました。子供たちの
元気な声を聞いたのも久しぶりです。

 冬鳥がせわしなく飛び回っています。
 ツグミは寒い間だけここに居て、暖かくなるとシベリア方面に移動するらしいの
です。二~三十センチの小さな体で、よくもそんな遠くへ行けるものだと、不思議
な力を感じて見ています。
 
 旅好きのオッチャンとしては、できることならこの子たちのように、手ぶらでフ
ワ~ッと行ければ、どんなに楽しいものかと思うのです。


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2016-02-19 | 日記


 「炎が好きなんです」と言うと、ちょっとおかしな人と思われてしまいます。
 「薪ストーブや 何十年も前の石油ストーブを騙し々使っています アルコールラ
ンプも使いますよ」と言ったものなら、完全に変人のレッテルを貼られて、それ以降
誰も口をきいてくれません。

 炎を見ていると妙に落ち着くのです。ゆらゆら揺れる形や色、ちょっとした風で劇
的に変化する炎の動きが、時を忘れて無心になれるのです。それに薪の燃える音や匂
い、アルコールの香りも好きです。灯油や蝋燭の匂いだって嫌いではありません。
 「要するに暇なんですよ」とバカにされるのですが、やめられません。

 炎の出る器具に出会うと、ついつい買ってしまいます。若いころに大変なおもいを
して外国から持ち帰ったものもあります。他人が見たら、ただのガラクタに過ぎない
のですが自分にとっては、想い出の湧き上がる懐かしい炎です。
 世の中には美しいものがたくさんあります。炎もその一つです。できれば一生観続
けていきたいものです。

 「年をとったら危ないから、ガスコンロはできるだけ電磁にしてくださ~い」と言
われて久しいのですが、ぜんぜんその気はありません。
 世の中がIoTに向かう中で、オッチャンのライフスタイルはまだまだ続きます。


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冬空

2016-02-15 | 日記
 昨日までの三日間気温が上昇し、季節外れの雨が降り続きました。おかげで屋根や窓
に垂れ下がっていた雪とツララが全部落ちて、小屋全体が明るくなりました。
 今日は一転してグッと冷え込み、低い空から雪が舞っています。カラマツがゆらゆら
揺れているから、風も出てきたようで、吹雪にならなければいいのですが。
 
 冬の空からは、実にいろいろなものが降りてきます。雨、雪、鳥、そして思い出も。
 
 二月なかばのこんな日は、急に春が待ち遠しくなります。雪が解けたらあれもしよう
これもしよう、と計画だけはしっかりするのですが、実際はその半分もできればいいと
ころです。ただ、冬空を眺めながら、さまざまな春のイメージを掻き立てるのが、至福
のひと時なのでしょう。

 この冬、いつも「忙しい 忙しい」と言って、ゆっくり話もできなかった友人が、ま
るで蝋燭の炎が僅かな風に吹かれた時のように、フ~ッと消えてしまいました。それぞ
れの役割を終えていったのでしょう。

 冬の空は決して暗く悲しくはない、春に繋がる希望の空です。


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食べる

2016-02-11 | 日記


 冬は木の葉がないから、鳥を見つけるには大変都合のよい季節です。
 この鳥は「コゲラ」、この森のキツツキの中では一番小さく、スズメ程の大きさ
しかありません。体は小さいのですが、一日中大きな音をたてて木を突っついては
虫を探しています。そのひたむきな姿を見ると、応援したくなります。



 こちらは「ダイサギ」、サギの仲間では最大級です。一メートルぐらいはあるで
しょうか。警戒心が非常に強く、人が見つける前に向こうが気が付いて逃げてしま
うから、めったに見ることはありません。大きいから動きはゆったりしていて、湖
の凍らない部分を探しては、岸辺でじっと魚の来るのを待ちます。この根気の良さ
は見習わなくっちゃ。

 静寂な風景の奥で、さまざまなドラマが展開されています。
 今は生きものたちにとって、生き残りをかけた厳しい試練の時、その
懸命さが伝わってきます。
 
 この辺りには実に多くの種類の鳥たちが暮らしています。また渡ってもきます。
つまり、それだけ彼らの食べ物が豊富ということの証です。これができるだけ長く
続きますようにと願うばかりです。
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2016-02-06 | 日記
 鱈が捕れなくなったのです。
 店に並んでいるのは、ノルウエーやアメリカのもの、同じ海でつながっているの
だから、どこで捕れてもいいのですが、ここは北海道だから、鮭、鱈は地のものが
食べたいと思っていました。しかし、たまに見つけてもビックリするほど高いので
す。
 
 この時期、鱈がないのは淋しいことです。
もともと北海道には、白身魚が少なく、昔からいくらでも捕れて安い鱈は庶民の味
方でした。サッパリしているから、調理次第で自分の味にできるし、なんといって
も寒い中に温かい鱈の湯豆腐は欠かせません。食べ終わって太い骨を眺めて「冬も
悪くないなぁ」と幸せな気持ちになるのです。

 諦め切れず、地元の鱈を求めて、三十キロ程離れた昔から鱈漁で有名な町を訪ね
ました。途中道の駅があって覗いたのですが、タラコはいっぱいあっても鱈はあり
ませんでした。そのタラコも全部ロシア産でした。

 ここでくじけてはいけないと、町中を歩き路面の小さな魚屋さんをみつけました。
おじさんは「ここでは もうかなり前から鱈なんか捕れないよ」と笑っていました。
 「でもこの町 昔も今も鱈やタラコで有名なんですよね」
 「あんた いつのこといってるの 相当古い人だね 今はロシアものを加工して
いるだけ それでもタラコの町には違いないのさ」

 鱈の来なくなった海は、もう元には戻れないのでしょうか。

 スーパーへ寄ると、こんがり狐色の「白身フライ」並んでいました。金曜日はフ
ライデーだから安くなっているとのこと、表示を見るとアフリカ産白身魚とだけ出
ていて、名前はありませんでした。店の人に尋ねたのですが「分かりませ~ん」で
した。  
 これはたぶん「シロミ」って名前なのだろうと、買って帰りました。
 
 これがなんと結構美味なのです。マックの白身バーガーに似た味で柔らかく食感
もいいのです。そうか、白身魚を食べたい時は「シロミ」を買えばいいのだ。どう
してオッチャンは名前や産地にこだわるのだろうと反省しました。もうそんな時代
ではないのです。

 この先、魚の名前も変化するのでしょうね。「シロミ」「アカミ」「ピンク」な
ど、分かりやすくていいかも知れない。もうすでに、子供たちは「さかな」で全部
ひとくくりですから。

 だけど少したった今、「あれは本当に魚だったのだろうか」と思うことがありま
す。
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