森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

トンネルの出口

2021-05-26 | 日記


 木々の葉はすっかり繁って、晴れた日には初夏の雰囲気さえ感じられます。
 来週はもう6月、梅雨のない北海道は最高の季節となります。
 


 キノコ類が、とにかく元気です。
 どのキノコを見ても美味しそうですが、食べられるものがわからないので、
 見てるだけです。
 それがわかったら、どんなに食生活向上に役立つのかと想像するのですが、
 かなりのベテランでも失敗して命を落としますから、怖さが先にたちます。
 どこかの偉い先生が、毒があるかないかを簡単に調べる「キノコチェッカー」
 を作ってくれませんかね。
 高価でも買います。



 もうすっかり終わったと思っていたスイセンが、この白い花だけが他が全部
 枯れたなかに、優しくしぶとく咲いていました。
 なにか話しかけているようで嬉しくなりました。



 花を見ていると、小さな子たちを想い出します。
 このコロナ禍で誕生した子たちは、人の顔といえばマスク顔しか知らないの
 でしょうね。
 マスク生活はまだしばらく続くでしょうから、貴重な幼児期の何年かを、
 表情のないマスク顔で過ごした影響は、大人になってから出てくるものと考
 えられます。
 かわいそうですよね。
 自分も、この1年半に新しく会った人々は、初めからマスク顔ですから、
 マスクをとった時は、互いにまた新しい感じになるのでしょうね。
 たぶん街ですれ違っても気が付かないでしょう。
 コロナ後には、さまざまな不思議な現象がおこりそうです。

 それでもワクチン接種が本格的に動きだしましたから、やっと暗い長いトン
 ネルの出口が見えてきました。
 久しぶりに明るい気持ちになっています。
 花たちから、元気ももらえます。



 
 
 
 
 
 
 

小満

2021-05-19 | 日記


 あさって21日は、24節気では小満です。
 小満(しょうまん)なんて聞きなれないものですが、草木が周囲に満ち始める
 の意味だそうです。
 確かにこの森でも、草木や花がどんどん満ちてきています。
 楓も秋の紅葉が人気ですが、こうして見るとこの時季の萌葱色のほうが若々し
 くていいですね。
 年齢によって観る眼が変わるのかもしれませんが。



 小満は知らなくても長野県佐久市の臼田稲荷神社の小満(こまん)祭は有名で
 すから、知る人は多いです。去年も今年もコロナで中止になりましたが、例年
 であれば、千曲川河川敷に300店もの露店が連なる賑やかさです。
 地元の人々は残念でしょうね。
 そうそう、佐久市といえば鼻顔稲荷神社が有名です。
 「はなづらいなりじんじゃ」と呼び、伏見稲荷を筆頭とする日本の五大稲荷のひ
 とつです。
 佐久にはまだまだ有名なものがありますが、なんといっても日本一は、海から
 いちばん遠い地点なのだそうです。いろいろな日本一があるもんですね。
 なんでもいちばんなら自慢できますかね。
 


 また暖かい地方のビワ農家では、小満の時季がいちばんおいしいといいます。
 その昔は、献上琵琶などと言って、都の貴人に献上したそうです。
 実際は搾取されたのかもしれませんが、おいしかったことには違いありません。

 さあ、これからは一雨ごとに緑が深くなっていきます。
 新緑の期間はごく短いです。人も同じです。





 

 
 
 
 

新緑バクハツ

2021-05-12 | 日記


 巷では感染爆発していますが、この森では新緑がバクハツしました。
 キタコブシが咲いて山桜が咲いたとおもったら、他の樹木たちが一斉に新緑の
 雲海をつくりました。
 2~3日前まで、スカスカだった枝はもう見られません。
 さあ、これから半年間はどこを向いても緑、緑の森です。



 バクハツといえば「芸術はバクハツだ!」の岡本太郎さんが想いだされます。
 岡本さんは国内では「変わったオジサン」ですが、海外では芸術家として
 高い評価を得ています。
 明治以降の芸術家で、国際的に高名なのは岡本太郎さんと、草間彌生さん 
 の二人だけでしょうか。
 活躍している若い人は大勢いますので、この先育ってほしいです。
 
 一方、海外で有名な作家はキラ星のごとく大勢います。
 阿部公房さん、三島由紀夫さん、川端康成さん、大江健三郎さん、村上春樹
 さんなどなど。
 カズオ・イシグロさんも血は純粋な日本人ですからね。
 すばらしいです。



 写真は美術芸術の分野ではありませんが、欧米では単なる記録媒体として
 ではなく、新しい表現法として確立されつつあります。
 額装して、絵画のように観るのとは違う方向に進んでいます。

 毎年必ずやってくるこの季節の若葉は、観るものに希望と勇気をもたらして
 くれます。
      新緑や もつたいなくて 帽子とる    太田土男
 年取ると、こんな気持ちよくわかりますね。
 
      新緑が 人のすきまを 埋めてゆく    中田美子
 人と人との距離、いや心の隙間さえ木々の枝に茂った若葉で、埋められてい
 くのでしょう。
 

 
      
      


 
 

オニウシ公園

2021-05-04 | 日記


 「オニウシ」とはアイヌ語で「木がたくさんある所」です。
 森町の名前の由来も「オニウシ」からきたものだそうです。
 ここのすぐ近くに「青葉ヶ丘公園」があって、この二つはともに桜の名所と
 なっています。
 自分は勝手に、桜の「ツインパーク」と呼んでいます。
 多種で多数の桜が時間差で次々と咲いていくから、一か月近くもの間、楽し
 むことができます。うれしいですね。



 森町にはかって、ここと室蘭を結ぶ「森蘭航路(シンラン)」がありました。
 明治になってすぐに始まり、半世紀以上もの間、人と貨物を運ぶ噴火湾の貴
 重な輸送航路でした。
 その時のようすは、かのイザベラ・バードさんの『日本奥地紀行』に書かれて
 います。森の街中のことも少しですがでていましたね。



 また宮沢賢治さんの詩にも登場します。
 彼が出版した生涯唯一の詩集『春と修羅』のなかの「噴火湾(ノクターン)」
 です。
 彼は妹トシを亡くした翌年、花巻から樺太へ旅立ちます。
 その帰り道に、列車が噴火湾を回って森町辺りにさしかかったときには、もう 
 日が暮れかかっていたようです。
  ……
  噴火湾のこの黎明の水明かり
  室蘭通ひの汽船には
  二つの赤い灯がともり
  東の天末は濁つた孔雀石の縞
  黒く立つものは樺の木と楊の木
  駒ケ岳駒ケ岳
  暗い金属の雲をかぶつて立つてゐる
  そのまつくらな雲のなかに
  とし子がかくされてゐるかもしれない
  ……
 トシの魂と交信するような詩を書いた5年後(1923年)に、森蘭航路は
 廃止されています。残念ですね。


 
 オニウシ公園の桜はコロナとは無縁に、見事に咲いていました。
 来年こそは大勢の花見客で賑わう「ツインパーク」でありたいですね。