森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

森時間

2020-02-24 | 日記


 今朝は久しぶりに薄日が射しましたが、午後からはやはり降雪です。
 今の時季は、たいがい夜半から雪が降り出し、翌朝まで続いて昼下がりに気温が上がると雪
 は雨に変わる、こんなパターンで過ぎていきます。
 今日は冷え込んでいるから、降り出しが早いのでしょう。大雪にならなければいいのですが。
 
 陽が出なくても雨が降ってくれると、積もった雪が沈みながら解けていきます。
 すべては春に向かう楽しいプロセスなのですが、山道はぐちゃぐちゃで車は走り難く、人も
 足を取られないように気をつけて歩きます。転んでしまったら大変、この寒いなか体中が
 びしょびしょに濡れてしまいます。

 おかげで小屋の前に土が現れました。去年のままの土です。
 懐かしいのでしばらく見入ってしまいました。



 あと一週間でいよいよ春がやってきます。
 完全に雪が解けるにはさらに一か月ほどかかりますから、雪の春ということです。
 しかしこの間は、雪の下で育まれていた植物たちが、次々と順序正しく顔を出してくれるし、
 お母さんキツネは生まれた子キツネを連れて誇らしげに見せてくれます。
 みんなで「おじさん 今年も会えたね」と生息確認しあいます。

 さあまた、春で始まり短い夏が過ぎると早い秋が来て冬になる。そんな円環の一年がスター
 トします。
 そんな森の時間はクルクル回る時間です。自然の法則に逆らうことなく、その循環の渦に任
 せてゆらりゆらりと流される、うたかたの生活時間です。
 まるでコイルをゆっくり回っているような、同じことの繰り返しなのですが、時にはゆっく
 り、時には早く、ある程度の微調整ができることが分かりました。



 たまに里に下りると、いやおうなしに人工物が眼に飛び込んできます。そのとたんに時間感
 覚は変化します。ぼんやりしていた脳が刺激されて街時間にシフトされます。
 街時間は自然とは無関係に時計に従って流れる時間です。それは早いスピードで一直線に流
 れているから、ついて行くのに精いっぱい。もちろん速度調整や振り返ることなどできませ
 ん。
 まるで一方通行の半導体、デジタル時間とでも言うのでしょうか。

 街時間の中にいると、無意識に残り時間を計算しながらものごとを組み立てています。
 森時間では、この自然に身を委ねていれば永遠に存在できるかのような錯覚に陥ります。

 どっちにしても、つまるところは同じなのでしょうが。

 
 「暇人や 蚊が出た出たと 触れ歩く」 一茶
 どうやら、こんな人に近くなっている私なのかもしれません。


 
 
 
 
 
 

おぼすなさま

2020-02-17 | 日記


 昨日から降り続いた雪は、今朝には止んで、お昼には待望の青空が広がりました。
 
 氷上のワカサギ釣りもそろそろ終わりです。
 オジサンの今季の成果はどうだったのでしょうか。
 あまり良くなかったような雰囲気が漂っています。家に帰ったらオバサンの機嫌が悪いの
 かもしれません。

 久しぶりに白鳥を観ようと、例年この時季に集合している場所へ行ってみました。
 すでに湖氷はかなり解けています。しかし白鳥の姿はまったくありません。
 どこか別の場所に移動しているのかと思って、湖畔道を一周してみましたが見つけること
 はできませんでした。
 暮に渡って来た時に、ずいぶん少数だったことを感じてはいたのですが、それにしても一
 羽も見れないとは驚きです。



 わずか百年前までは、白鳥は日本人の信仰の対象でした。
 北から渡来して、他のどんな存在よりも真っ白に大きくはばたく姿は、幽暗で神秘的だっ
 たのです。
 ヤマトタケルが東国遠征(北上川の下流)から帰った後も、天高く舞う白鳥の姿が眼に焼
 き付いていて、死んだときに白鳥になって飛んで行ったと『古事記』にあります。
 このことから特に東北では熱烈な白鳥信仰が伝承されて、白鳥を祀る神社が数多くあり、
 今でも「おぼすなさま(産土さま)」と呼ばれています。

 白鳥たちが、まさかこの大沼を見捨てたわけではないでしょうね。
 もう一度時間をかけて丁寧に探してみようと思います。
 白鳥以外のガンやカモはいつも通り大勢いるのですから、食料に不自由しているはずはな
 いのです。

 「おぼすなさま」どうか大沼に戻ってきてください。


 

少雪

2020-02-10 | 日記


 立春のあとは毎日雪が降り続いて、気がつけば森はいつもの年とあまり変わらない景色に
 なっていました。
 これまでの二カ月間の少雪は、雪掻き仕事がかなり減って、ずいぶんラクに過ごせました。
 ただし今日あたりは気温がグンと下がって、内陸の方では、またもや記録的な低温になっ
 ています。
 今までラクできた分、かえって骨身にしみていることでしょう。気の毒です。



 雪の止み間を見て、街へ食料の買い出しに行きました。
 トンネルを抜けると急に雪は少なくなり、主要幹線に入るとまったく解けていて、アスフ
 ァルトがむきだしです。
 やはりこの時季としては驚きの異常少雪です。



 実は、この温暖化によってめちゃくちゃ得している国はかなりあります。
 地球規模で穀倉地帯の北部への移動が徐々に始まっていますから、この恩恵に与っている国々。
 永久凍土と思われて諦めていた地下資源が、凍土融解によって採掘可能になった国々。すでに
 大車輪で稼働しています。
 氷山融解による極地交通の新ルートの出現。
 もともとなかった二酸化炭素排出権を設定して、それを売買する排出権取引所を運営する国。
 などなどです。

 今すぐCO2増加にストップかけなければ、大変な時代が来ることは分かっていても、これらの
 甘い蜜には勝てない。だから無関心を決めつけて、今しばらくこの恩恵を享受したいのです。
 新しい時代の新しい経済格差の構図が決まるまで。

 身近な所では、世界の有名ワイナリーがその葡萄園を、国境を越えて北部へ移動させ始めてい
 ます。葡萄栽培は本格的稼働までには何十年もかかるので、先を読んで動きが早いのです。

 しかし一番の問題は地球的高温環境による有害ウイルスの多発、蔓延です。国境も地域もなく
 移動する度に体内で変性していく耐性菌が出現したら、世界中が中世のペストのような状態に
 なるのでしょう。まさに人類の危機です。

 みんなで知恵を絞らなくちゃ。偉い人たちが桜を観てるのもいいけれど。

 
 寒さの中でも陽が出ると、ちょっとだけ春の柔らかさを感じます。
 ここまで来てしまえば、もう春は手の届くところにあります。


 
 
 



 

 

 
 
 
 




大沼公園

2020-02-03 | 日記


 早朝から降り出した雪は、午後になっても止みそうにありません。
 このまま降り続いたら、明日朝にはかなりの積雪になりそうです。

 今年の大沼公園は観光客がたいへん少なくて、淋しい状態になっています。
 というのも、去年からの政治のゴタゴタで韓国の人々が減っていたのに加え、今年に入っ
 てからは追い打ちをかけるように、中国からの人たちが新型肺炎の拡大で来なくなったの
 です。日本人はもともと冬の大沼には来ません。せいぜい周辺のスキー場へ来るだけなの
 です。
 だからこの数年、アジアからの外国人インバウンドで賑わっていた大沼観光業の人々は、
 大打撃を受けています。
 それでも週末になると、氷上のワカサギ釣りの親子さんが来てくれて、淋しい大沼に人の
 気配を感じさせてくれます。子どもたちにとっては、忘れられない想い出になるのでしょ
 う。
 中国の新型肺炎はしかたがないとしても、韓国の方はなんとかならないのでしょうか。
 どちらが正しいの次元ではなく、両国の政治屋さんたちが互いに目先の敵をつくることで
 自分たちの求心力を高め、時局の諸問題から視点をそらすことを目論んでいるようです。
 うまくいけば、ナショナリズムの高揚にも繋がると考えているから、解決しようと努力し
 ません。むしろ楽しんでいるように見えます。
 結果的に迷惑しているのは、善良な両国民です。

 
 このところ国営放送は2020オリンピック一色です。
 面白いのは、そのコンセプトが56年前のそれとまったく同じなのです。
 つまり「立派な日本を世界に見せよう」なのです。訪日外国人たちにすばらしい施設を観
 てもらって、おもてなしや日本の伝統文化を感じてもらい、それを世界に発信するのです。
 なので、都心部は建設ラッシュです。それは半世紀ぶりの大再開発となっています。

 オリンピック期間中はコンビニ店頭にビニ本を置かないようにしなさい。外国人に観られ
 たら日本の恥ですよ。とか、風俗の客引きもダメですよ。とか、ホームレスのブルーマン
 ションの撤去など、さまざまな規制、指導行われるようです。
 56年前も、夏の下町のオッチャンたちの街着だった、ステテコ、ダボシャツに腹巻が、
 外では禁止されました。また、みゆき通りにたむろしていた、IVYみゆき族は警察の大型
 護送車に乗せられて、どこかへ連れていかれました。やはり理由は外国人に観られたら恥
 ずかしいとのことでした。
 
 半世紀たって同じことをやる、それが日本人。いや、変わらないからこそ日本人は美しい。
 目標30個の金メダルに何兆円もかけるのはバカげている。いや、それこそ日本の豊かさ
 の象徴ではないか。などなど、さまざまな考えがあります。
 
 かって、アーリア人たちも手っ取り早くナショナリズムを高揚させる手段として盛んにス
 ポーツを利用しました。今はやっていませんが。
 先進国の人々は壮大な建築物や最先端の造物に食傷しています。関心は社会のシステム、
 生活のスタイル、つまりソフトの部分を見たいのです。体験ツアーがうけるのもそのせい
 です。

 世界中の人々は、すでに日本がすばらしいことを知っています。でも政治屋は「あんたが
 一番🎵 あんたが一番🎵」とクドく言って欲しいのでしょう。で、その後どうなるの?
 また半世紀たったら同じことをやるの?
 西洋の諺に「政治屋は次の選挙を考える 政治家は次の時代を考える」とあります。
 究極のアナクロニズムはかえって美しく見えるのかも知れません。

 明日はもう立春です。二月は短いからすぐ終わります。
 そしたら春がきます。嬉しい春が。