森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

生きものたち

2016-01-31 | 日記


 冬のこの森で、いちばん食べ物に困るのは生きものたちです。
 寒くても雪さえ解けてくれれば、虫やネズミを捕まえられるのですが、こんな風
に全て真っ白に覆われていては、食べる物など何もありません。とにかく歩き回
って少しでも柔らかい物を見つけたら、かじっているようです。里に近い場所な
ら、身ごもった狐が夜中に民家をウロウロしたりするのですが、今は食べ物を外で
干したりニワトリを飼っている家などありません。ましてこの森の近くには里もあ
りません。
 なにせ、冬を越えられないと、それが寿命なのです。



 その昔内地では、この寒の時期に、修行を積んだ「稲荷おろし行者」が狐に食べ
物を出して、今年の豊凶などいろいろ聞き出す風習があったと記述されています。
 動物たちの、特に狐の予兆力を期待したのです。
 こういう仕事ならオッチャンにもできそう。

 猫の天気予報もそうですが、人と野生動物との繋がりには、楽しいことがたくさ
んあります。少しずつ書き留めていこうと思います。



 今の世の中、なんでも器械がやるようになり、人間にとって不要なものは害とさ
れます。その結果、狼は絶滅、狐は毛皮に、猫はペットか保健所行きとなりました。
 近代科学は、人間を生きものの頂点に登らせたけれど、幸せの頂点にはなりませ
んでした。人間は益々憎しみあい、世界中で殺しあいを続けています。
 何か、方向を違えちゃったようですね。
 いや、もしかすると、本当に怖いことだけれど、人間はそれが好きなのかもしれ
ません。
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青空

2016-01-22 | 日記


 三日間荒れ狂った、台風並みの吹雪がやっと終わりました。
今日は朝から、絵具を流し込んだような青空です。
 冬の青空は、四季の中でも一番深みがあるから、すべてのものが力強く浮き立っ
て見えます。




 お天気が良いと得した気分になります。
 今日は一日、ゆっくり外を眺めていようと思ったのですが、いやいや、そうして
はいられない。森のお天気はいつ変化するのか分からないので、行けるうちに食料
を確保しなくては、そうそう、雪掻きもやらなければ大変なことになる。
 
 結構用事はあるけれど、街の暮らしに比べたら、のんびりしたものです。
 たぶん、一日の速度は街の三分の一ぐらいかなぁ、これも得した気分です。






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雪景色

2016-01-15 | 日記


 一ケ月遅く、例年の雪景色になりました。
 キャンプ場には人っ子一人見当たりません。
 夏、溢れるばかり大勢のキャンプを楽しむ人々や、ギッシリ埋まって入り切れな
い車がウロウロしていた駐車場が夢のようです。
 今は、暖かい所へ行っているのでしょうか。



 もう少しすると湖氷が分厚くなって、氷上のワカサギ釣りや、凧あげができるよう
になります。
 久しぶりに子供たちの元気な声が、湖面に響きます。

 横津岳がパッチワークの山になりました。




 日毎に変化する風景が、厳しい寒さを忘れさせてくれます。


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カラマツ

2016-01-11 | 日記


 この小屋の周りにも、数本のカラマツがあります。
 毎朝、最初に目に飛び込んで来るのが、この木です。
 カラマツは唐松と書くから、中国から渡ってきたものだと思っていました。とこ
ろがそうではなく、日本の固有種なのだそうで、同種のものはヨーロッパの寒い地
方に多いそうです。
 ひたすら真直ぐに空に突き抜けるような樹形は、素朴で愚直な生き方を思わせま
す。
 
 松なのに落葉します。秋になると細かい針葉を落とし、周辺の地面を黄色の絨毯
で敷詰めます。
 冬は黒っぽい幹に、両手を大きく広げたような枝、そして帽子を被ったような樹
冠が周囲に圧倒的な存在感を示します。
 春には、淡い緑に光る葉をつけます。夏に向かって周りの広葉樹の大きな葉に隠
れて目立たなくなりますが、離れて見ると頭一つ飛び出しているのが分かります。

 若いとき、信州の山中で、眩しいほどの黄金色に照り輝くカラマツ林に出会いま
した。その時の心情もあったかと思うのですが、この樹に神秘的で宇宙的なものを
感じ、それ以来カラマツは自分にとって特別な樹になりました。



 木材には向かない木なのです。専門家は、加工しても曲がる、割れる、節が多い、
癖があってとにかく扱いにくいといいます。自分も倒木をマキにしようとやってみ
たのですが、確かに切りにくい、割りにくい、おまけに松脂がべったり多くて、煙
突が詰まりやすいのです。
 そんな訳だから、せいぜい土木工事か、小さく切って集成材にするぐらいの用途
しかありません。しかも外国から安い木材がどんどん入ってくるので、今はあまり
使われていないようです。

 誰にも見向きもされないカラマツですが、自分にとっては変わらぬ希望と憧れの
樹です。
 人を寄せ付けない崇高な佇まいに、昔のひとは「神待つ」といったそうで、これ
が語源なのかも知れません。

 今も、キツツキたちが幹に張り付いて、一生懸命突っついています。
たぶんカラマツは、人間には分からないだけで、自然界では大きな役割を担ってい
るような気がします。
                               動(yurugi)