森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

濁川

2020-10-29 | 日記


 町を出て少し北へ走ると、噴火湾に流れ込む濁川(にごりがわ)が見えてきます。
 この川に沿った紅葉の道を4キロほど上流に進むと、静かな濁川温泉に到着します。
 街に入って間もなく、右側に地場野菜の直売所があって、それはもう大賑わいでし
 た。
 なにしろ、とれたての野菜がすぐに店頭に並ぶのですから、そのみずみずしいこと。
 しかも、かなり安いのです。
 所狭しと置かれた新鮮野菜を、元気な奥さんたちが、サッサと買い込んでは運んで
 いましたから、たまに来るオッチャンがウロウロしていると、跳ね飛ばされてしま
 いそうでした。
 それでも旬の野菜や、時には珍しい野菜をたくさん買って、喜んで店を後にしまし
 た。
 帰り道は噴火湾を、佐原岳と駒ケ岳の二山を眺めながら、楽しいドライブでした。

 そんなことを想い出して、濁川温泉に向かうことにしました。



 温泉郷に入って、そろそろ見えるかなと、右側を注意していたのですが、直売所
 らしきものは見当たりません。
 もしや移転したのかな、と思い念のため街を一周して見ましたが、直売所風の店
 はありませんでした。
 もとの場所に戻って、もう一度見ると確かに建物はありましたが、開いてなかっ
 たので気が付かなかったのです。
 どうやら、かなり長い間使っていないようすが感じられて、もう閉鎖してしまっ
 たようでした。



 野菜は買えなくて残念でしたが、そんな気持ちを吹き飛ばすように、帰り道の
 紅葉はすばらしいものでした。
 それは、今秋最後の燃え尽きるような紅色をでした。
 「よし、来年は自然を観に来ることにしよう」と思いました。
 
 良く考えてみると、最後に直売所に来たのは、ずいぶん昔のことです。
 人は変わって当たり前、だから変わらぬ自然に接して、ほっとするのでしょう。
 そんなことを考えながら、噴火湾の5号線の変わらぬ自然の中を、楽しく
 走って帰りました。


 

秋模様

2020-10-20 | 日記


 このところ、空高く清々しい晴れの日が続いています。
 気温もぐっと低くなって、朝晩は小さなストーブが欠かせません。
 


 町からの帰りに、いつもの道を変えて牧場の脇を通りました。
 それは行くたびに、鼻の白いこの子がご挨拶してくれるからです。
 何頭もいる中で、最初からこの子一頭だけがオッチャンに近づいてきました。
 そして、今もそうです。
 オッチャンは顔や首を、毛並みにそってなでてあげます。
 すると、この子は尾っぽを振って大喜びして「もっとやれ」といいます。

 馬の眼は優しく、キツネの眼は寂しげで、鳥の眼には厳しさがあります。
 それぞれの生活からくるものなのでしょうね。
 人間だけが、ひとりひとり違うのは不思議です。



 紅葉は今がピークです。
 数年前から森の紅葉事情は変化して、森全体が真っ紅に染まることはなくなりま
 した。
 木々が紅葉を保つ時間が短くなっているので、時間差で次々と紅くなるそばから
 前に紅葉した葉は茶色になって落ちてしまいます。
 最後の楓が紅くなるころには、他の木々はもうスカスカになってしまいます。
 
 大沼の紅葉も、以前は湖を取り囲むように紅い林の帯ができて、それが湖面に
 映り、なんとも幻想的な風景を見せてくれたものです。
 今は想いでだけになりました。
 
 しかし、樹木は気候の変化に負けているわけではなく、順応しています。
 彼らはとにかく強いです。なにしろ千年以上生きているヤツもいるのですから。
 むしろ、動物のほうが構造が複雑なだけに、変化には弱いです。

 道端にアザミがシャキッと咲いていました。
 もう霜が降りて、昨日は雪虫が飛んだというのに、強くキレイです。

 10月も残すところ、10日になりました。
 生きものたちは雪の降る前の静けさを楽しんでいるようです。
 そういえば、去年は極端に少なかった白鳥の飛来。
 今年はどうでしょうか。


冬の足音

2020-10-14 | 日記


 今朝は、この秋いちばんの冷え込みでした。
 おかげで一段と紅葉が進みました。
 予報によると、今晩は峠で雪が降るらしいのです。
 この調子じゃ、駒ケ岳の初冠雪もじきにきそうです。今年は早いです。



 こんな冷え込みのなかで、まだがんばっている子がいました。
 名前は「エゾノコンギク」。
 さすがに、森で咲いてる花はこれだけです。
 珍しいのか、虫たちがいっぱい集まってきます。
 みんな花が好きなのです。
 
 いつまで咲くのでしょうか?
 霜が降りるまででしょうか?
 いや、もしや今晩の寒さで終わるかもしれない。
 と思うと、応援したくなりました。



 今のところ、森ではまだ雪虫が舞っていません。
 真っ白でふわふわで、風にまかせて飛ぶ、というより舞う雪虫。
 その年によってですが、向こうの景色が良く見えないほどの大発生のときは、歩い
 ていても眼、口や鼻に入って困ります。
 それでも、なぜか憎めないのが雪虫です。
 しかも、アッという間に消えてしまうから、なんとも脆く儚く感じてしまうのです。
 
 「札幌ではもう飛んだよ」と聞きました。
 冬の足音が近づいています。


ふけゆく秋

2020-10-07 | 日記


 もう朝晩はグッと冷え込んできました。
 さすがに野の花たちも、今年は終了しました。

 そんな淋しいときに、シーグラスフラワーがこの小屋にやってきました。
 小さなクラフトで小屋の空気が一変、ぱっと明るくなりました。
 なんとありがたいことでしょう。
 そう、秋は芸術の秋なのです。



 紅葉が始まっています。
 森の紅葉はこれから驚くほどのスピードで進み、二週間ほどでピークに達します。
 しかし、紅葉は全部真っ赤に染まるよりも、紅くなり始めの今どきがいちばん
 きれいです。
 緑の中に黄と紅が出始めて、日々色彩が変わっていくようすは、大自然のドラマ
 を観るようです。



 辞書によると「ふけゆく」とは、「夜も更け行く」などの使い方と、年をとって
 「老け行く」の二つがあるとのことです。
 私の場合は両方あてはまります。 困ります。

 いっそ、食欲の秋だから「芋がふけゆく」もいいのかな。
 


 紅葉と同時に落葉が始まりました。
 賢い植物たちの、命を来年に繋げるための準備です。
 さあ、人も始めることにしましょう。
 

収穫

2020-10-01 | 日記


 十月です。
 田畑は黄金色に変わり、収穫の季節をむ迎えました。
 北海道のお米は品種改良の積み重ねで、今や全国的に有名になりました。
 農業者の長い努力が実りましたね。

 お米といえば、2500年ほど前に大陸からドッと大挙して来た、向こうの人たちが
 持ち込んだものとなっています。
 そして先住の縄文人と仲良くなって、しだいに列島の東へ北へと伝播していったとさ
 れています。
 それが弥生時代のはじまりで~す。と誰もが信じています。
 だからどうしても、高い文化を運んできた渡来人が偉い人、先住の縄文人は偉くない
 人との印象があります。
 へたすれば、渡来人はきれいな服を着て、上品な生活をする人。縄文人は毛皮のパン
 ツで石斧を振りかざして、動物を追いかける人。こんなイメージさえあります。
 
 しかし、若い学者のなかには、函館の「垣ノ島遺跡」から9000年前の漆塗の副葬
 品(現在世界最古)が出土していることなどから、当時列島にも高度な文化があった
 と考える人が少なからずいます。



 そんななかで、岡山の南溝手遺跡から、3500年前に作られた土器で籾の痕がつい
 ているものが出土したのです。
 これは大変なことです。古代の歴史が変わるのですから。
 しかし、偉い学者たちは、わが国の縄文時代に稲作があったなどとは、認めたくあり
 ません。自分たちの沽券に関わるからです。

 最近の科学は、炭素年代測定法とDNA鑑定法を組み合わせることで、古代遺跡の出土
 品のかなり正確な制作年代と、産地や成分を特定することができるようになりました。
 そんなことから、国立歴史民俗博物館は「日本の水田耕作は3000年以前から開始
 されていた」と認めました。
 さらに焼き畑の陸稲栽培となったら、もっともっとさかのぼっていくのでしょう。

 ごく最近も、熊本の大矢遺跡から、縄文中期(5000~4000年前)の土器に
 稲籾の痕が見つかっています。

 それじゃ、いままでのお話は全部作り話だったのですか? 本当はどんなだったの
 ですか? そもそも、稲はどこからどんなふうに伝わったのですか? さては、日
 本人はどこからきたのですか? 貴人たちとはどこの人なのですか?
 さまざまな疑問と妄想が駆け巡ります。



 最近の道南ではお米だけではなく、清酒の新規醸造所も計画されています。
 また、新しいワイナリーのための葡萄栽培も始まりました。
 収穫の秋が楽しみです。