森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

暮の秋

2019-10-28 | 日記


 去年より少し遅くカエデ類が紅くなって、いよいよ紅葉の真っ盛りとなりました。
 と、いうことは秋も残りわずかということです。淋しくなるということです。
 街の人々は祭りの後の淋しさを紛らすように、さまざまな祭りを作り出して連ねていく
 知恵があります。森の生きものたちには何もありません。だからド派手な紅葉祭りの後
 のことばかり考えているのです。



 高い所に実るのは鳥たちのためなのでしょうか。
 熟する時期を正確に知っていて、集団でバタバタバタとやってきて食べつくします。
 まあこの森にはいくらでもあるから、鳥たちにとっては天国なのでしょう。

 生きものたちはこの時期にしっかり食べておかないと冬場に体がもたないから、必死です。
 リスのピーちゃんだけは保存を知ってるから、土に埋めたりもしています。



    何ごとも まねき果たる すすき哉     松尾芭蕉

 あのころはこんな晩秋のすすきが風に揺れている姿を見ると「人を招いている」といった
 そうです。たしかに終わる直前のすすきはキレイだけどちょっと不気味でもあります。
 今、もしお招きがきても「もう少し遊ばせてくれ~」とお断りするつもりですが。



    啄木鳥や 落葉をいそぐ 牧の木々     水原秋櫻子

 キツツキの叩く音が終日森中に響き渡ります。
 カタカタカタはこげら、カンカンカンはあかげら、そして金槌で叩くようなでっかい音は
 くまげら。その忙しない音にせっつかれるように葉が落ちていきます。
 今も昔も、やっぱり秋は淋しいものです。


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ふかまる秋

2019-10-21 | 日記


 紅葉が進んでいます。
 今年の紅葉は例年より少し遅いようですが、それでももう緑と紅茶が半々になりました。



 もう長い習慣になっていますが、朝いちばんにすることはドアを開けて外の景色を見るこ
 とです。さまざまな変化を確認してホッとする、というのか妙に安心します。
 たぶんこの森の生きものすべてがやっていることなのでしょう。

 今朝は紫陽花の葉に落ちた紅葉が乗っかって、なんとも珍しい光景が目に入ってきました。
 紫陽花に紅葉なんて季節感がメチャクチャです。
 夏場には涼しげなブルーでおおいに楽しませてくれた紫陽花が、朝霜の降りる今になっても
 元気に咲いているのです。花色はすっかり変わってしまいましたが。
 いつもの年ならとおに枯れているのですから、不思議です。
 下町出自のこの花が大自然にしっかり根づいて、この時期まで力強く咲いているのを見てい
 ると、もしや、都会でひ弱に老いた者に対して「まだまだ元気で生きろ!」とエールを送っ
 てくれているのかなと思いました。



 水辺も秋がふかまっています。
 鳥たちの動きが一段と活発になりました。
 今は一生懸命食べてしっかり体力をつけて、きたる大移動に備える時です。
 だれが設定したのか、ダイナミックな生き方を天授されたものです。



 北国の、立冬に向かう残り少ない秋が、色彩を楽しむには最高の秋が、静かに移ろって
 いきます。


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台風

2019-10-13 | 日記


 ありがたいことに、この森では今回の巨大台風の風雨もそれほど酷くはなく、今朝には
 通り過ぎてくれました。
 内地では大きな被害が発生して、みなさん大変なご苦労をしておられます。つい先の台
 風の傷跡が癒えるどころか、二つ重なり合っての災禍はあまりにも気の毒です。



 ひと雨ごとに秋が深まり、風景が色づいていきます。
 キノコたちも傘が開いてきたから、そろそろ今年の活躍は終わりです。
 まちがいなく来年も元気な顔を見せてくれるでしょう。



 台風にも朝晩の冷え込みにもめげず、けなげに咲いている野の花がいます。
 だれに観られるでもなく、北国の短い秋を彩って終えていきます。しかしこの子たちに
 はまた来年があるから淋しさは感じられません。

 人はどうなのかなぁ?
  
  「人生はとても短い。振り返って間違いがあったと気づいても、それを正すチャンス
   はない。人は多くの間違いを犯したことを受け入れ、生きていくしかないのです」

 カズオイシグロさんが東京へきたときの言葉です。またこんなことも話しておられました。
   
  「わたしにとって小説を書くことは、小さな部屋で自分と静かに向き合うことなのです」

 確かに人生は短いです。アッという間のできごとです。
 この短い間に、すべてを受け入れて生きていこうとする人、自分以外を受け入れたくない人
 さまざまな人を観てきました。でも、みんなじきに終わってそれまでです。
 
 さて、ところで自分はどうなんだろう?
 時々立ち止まって己と向き合うことが必要かもしれません。とくにこんな台風の後には。



 大風に吹き飛ばされた紅い葉が二枚だけ残っていました。 
 まるで双子さんのようです。
 「今年はもう台風がこなければいいね」と話しあっているようでした。


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はじまる

2019-10-06 | 日記


 今年の紅葉がはじまりました。
 
 今日は久しぶりに泳ぎ出したくなるような澄んだ青空が広がっています。
 泳ぎ出したくなるというのも、昨日まではシャツ一枚で過ごせる真夏のような温かい日
 が続いていました。例年の北海道なら、とおにカゼをひいて寝込んでいたことでしょう。
 東京の昨日は30℃超えの真夏日で、なんと10月の記録だそうです。



 異常気象や環境問題はもはや動植物の減少、絶滅だけではなく我々の生活に深刻な支障を
 きたしています。台風は巨大になり、各地で豪雨が頻発し、家畜の感染はたえづおきてい
 ます。ひとたび災害がおこると、今回の千葉県のように長期の停電、断水が続き先進国?
 とは思えない状態になります。先の北海道のブラックアウトも大変だったけれどその比で
 はありません。首都圏から僅かに離れただけで意外と脆弱な生活インフラが露呈したので
 す。今のままじゃ、この先もしょっちゅうおこるのでしょうね。

 年寄りは「みんなでこんなふうにしたんだから 文句をいわずに耐えていきましょう だ
 ってこの先もどんどん進むのだから 下手な対策をしたところでいつでも想定外の事態に
 なってきりがないよ 変化のまま流されていきましょう」という。
 若者は「冗談じゃない あんたたちのやりたい放題のツケを回されたんじゃ たまったも
 んじゃない なんとかしろ」という気持ちでしょう。実際には大人しいよいこの若者は何
 もいいませんが。
 役所は「災害対策なんか、特に電線の地中化なんかまったく無理 今の日本は金がないん
 だもん」という。

 スゥエーデンの16歳のグレタ・トゥーンベリさんがあれほど訴えても、主要国のトップ
 たちが彼女をバカにした対応をしているのをみると、どこの国も同じようです。ヨーロッ
 パの一部を除いては。



 今も福島の東日本大震災の仮設住宅では、多くの人々がカビだらけのベニヤ板壁の中でラ
 グビーワールドカップを応援しているのでしょう。 美しい国ジャパン!。



 紅葉がはじまると一気に秋が深まります。
 今年も残り3カ月をきりました。
 早すぎます。


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大野平野

2019-10-01 | 日記


 遠くからきた友人の出迎えに、新幹線の駅まで大野平野を走りました。
 平野の真ん中にできた駅ですが、JRが当初想定していたほど利用客が伸びず、何年か
 たった今でも周辺の開発は進んでいません。
 おかげで、手つかずの大野平野が昔のままの美しい景観を見せてくれます。なによりも
 北海道に降り立つ旅行者たちに、最初の大きなプレゼントとなります。
 JRにとっては大変なようですが。



 ステンドグラスのような色彩の組み合わせでできている田園地帯を走りながら、この
 平野に、内地ではよくあるように、突然、畑の真ん中にドカ~ンと巨大なパチンコ店
 や西洋の城のような妙な建物ができなければいいなぁ、と思ったのです。

 北海道でもIRを積極的に誘致している街があります。
 なにも賭博関係は山口さんたちに任せておけばいいものを、同じことをやっても自治体
 なら罪にはならないとばかりに、また経済の数字合わせのためとばかりに、イケイケの
 人々が元気に活動していると聞きます。
 国もまたいつものように神話を作って啓蒙していくのでしょう。


 
 ここでも秋花は元気に咲いていました。

 この地、七飯や大野は明治時代になって、いち早く近代西洋農法を取り入れた進取の土
 地柄です。その気概は今も農業者に受け継がれ、特に若者たちの活動を支えているよう
 です。
 
 刈り入れ直前の大野平野、つぎに訪れるときは色彩が一変していることでしょう。
  

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