
多賀宮から石段を下る途中から山の下に「風宮」が見えてきます。
拝殿の屋根の下に白い装束の神官がお祈りをされていました。
「風宮」は、風の神を祀る別宮で、内宮にも同じ風の神を祀る「風日祈宮」[かざひのみのみや]があります。
鎌倉時代、中国の元の大船団が九州に二度も攻めて来て、その都度、暴風雨が発生して船団の多くが沈没して征服を免れた歴史があります。(元寇)
その時、伊勢神宮では「風宮」「風日祈宮」にお祈りし、その暴風雨を風の神による「神風」と信じられたようです。
「神風」をおこし、元の侵略から国家を守った大きなご利益に、二つの別宮は、2~3階級特進とも言える、「別宮」に格上げされされたそうです。
平安時代の「延喜式神名帳」を見ると朝廷は、その中で神様を格付けしています。
格付けの目的には、多くの神様に対する認識を統一することでもあったようですが、神様に対して失礼ではないかとも思えます。

「風宮」の社殿です。
大変幸運な風の神様に参拝しました。
人々は、長い歴史の中で、風による大災害がないことを祈りながらも被害が絶えることはありませんでした。
50年前にも「伊勢湾台風」が東海地方一帯に大きな被害をもたらしました。
最近の地球温暖化で、とてつもない台風が来る時代でもあります。
このような、どうしようもない自然の脅威には神様に手を合わせ、お願いするしかないようです。

「風宮」の西隣に建つ別宮「土宮」の社殿です。
祭神は、土地の守り神「大土御祖神」[おおつちみおやのかみ]で、宮川の氾濫や、堤防を守護する神様でもあるようです。
調べてみると「風宮」の特別な昇格に先駆けて、少し早い時期に「土宮」が昇格したようです。
幾度も自然の脅威にさらされても、尚もこの神にすがるしかない思いから昇格したものと思われます。
こちらの神様も実に幸運です。
自然災害が発生しないことを祈り、災害が発生し続けても祈り続けていることがなんとなく分かったような気持ちになりました。