瀬崎祐の本棚

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空の魚  1号  (2014/02)  埼玉

2014-06-22 17:24:59 | 「さ行」で始まる詩誌
 「空の魚」藍川外内美。
 童話のような面持ちの散文詩。むかしは「太陽は沈まずいつまでも明るい昼が続いていた」のだが、ある日、太陽がカリブ海に沈むようになり、互いに恋い焦がれていた太陽と海はむすばれる。

   海は、その大きな懐に太陽をかき抱き、炎のような情熱も石のよう
   な頑迷さも深く迎え入れた。そして太陽は、潜って潜り、安堵を得
   て毬藻のように眠った。(略)空の蒼と海の蒼が交わる水平線の辺
   りに、太陽は毎日沈み、海の底で眠り、朝になると空へ帰されるよ
   うになった。

 誰もが目にしている夕陽、朝日を見て、こんな物語に入っていくことの出来た作者に、まず感心する。何にでも物語は孕まれているのだろうけれども、それを自分だけのものとして引き出すためには、やはり感性を磨いておかなくてはいけないのだろう。
 さて。ある日、年老いた女の魚が一生を終える日に、太陽に空に連れて行ってくれと頼む。太陽の背に乗って空へ昇った魚は、

   ここには、経度も緯度もない。赤道も国境も日付変更線もないなん
   て!争う必要がない。雲の上はからりと晴れているばかりだわ。

 老婆の魚はやがて魚座になったという。意味などこじつけずに、ただ物語を楽しむ。ただ、物語が、太陽と海の恋の部分と、空の魚の生命の部分の2つに分かれてしまっているので、やや散漫な感じもするのが残念だった。
 「空の魚」というタイトルで私が物語を考えるとしたら・・・。
コメント
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