瀬崎祐の本棚

http://blog.goo.ne.jp/tak4088

サクラコいずビューティフルと愉快な仲間たち  8号  (2014/02)  東京

2014-06-03 22:01:01 | 「さ行」で始まる詩誌
 いつも刺激を受ける散文詩誌。同人は榎本櫻湖、加藤思可理、小林坩堝、高塚謙太郎、望月遊馬。
 ゲストの野木京子の作品「いきもののあぶく」。
 私は「夢のなかで、自分が生まれる前の生家に入っ」ていくのである。その家で寝た私は夢の中で、朝、庭で小さなあぶくを吐き出す草に出会う。三つのあぶくのなからはお話が出てくる。
 一番目のあぶくから出てきたのは薄紫色の夕方を歩く少女の話。二番目のあぶくから出てきたのは浜辺をさまよっている男の話。三番目のあぶくから出てきたのは、年老いた夫人の話。
夕暮れを歩く少女は、壊さないでくれよと大声で泣く影に押し寄せられる。二枚貝を拾った男は、涙が貝殻の姿になって集まっている場所にいる。そして花の言葉を聞いた老婦人は、おかあさんに忘れられることをずっと待っていた子どもと出会う。
 私の夢のなかで知る物語は淡く重なり合うようで、どれもいつか知っていたような懐かしさを感じさせる。それなのに初めて知る物語なので、なぜか寂しさがつきまとっている。

    じゃあ、昨日の夢にはおとといの夢が。おとといの夢にはその前日の夢が入っているのだろ
   うか。(略)薄い布や薄い紙が何枚も重なっているように、私が生まれてからこれまでの日々、
   夜や朝方に見て忘れてしまった夢が、私が気付かないだけで、私の内部に折りたたまれている
   のか。
    その細い姿の者は、歩いて、部屋の外へ出て行った。
    いや、出て行ったのは私のほうだったかもしれない。

 私(瀬崎)も、こんな物語を届けてくれるあぶくに夢で出会いたい。しかし、普段から特別なおまじないでもしていないと無理なのだろうな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする