瀬崎祐の本棚

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詩集「浮標」  若木由紀夫  (2014/03)  komayumiの会

2014-06-10 18:55:27 | 詩集
 第2詩集。88頁に20編を収める。
 作者は秋田県在住で、「あとがき」には「津波、原発被災地から遠く安全な地に居ても、私の空はいつも曇っている」とある。海辺を詩い、草原を詩い、夏草を詩っていても、作品の根底には鬱屈したものが流れている。
「ブランコに寄せる二つのソネット」の(Ⅰ)は、「ベン・シャーン「解放」に寄せて」と題されている。ベン・シャーンのその絵は、傾いた建物などの荒れた風景を背景にして吊り輪のような遊具にぶら下がって回っている三人の少女を描いている。彼は第二次世界大戦のパリ解放に際して描いたとのこと。”解放”であるから、希望とか明るさとかがありそうなものだが、私(瀬崎)が受けた絵の印象はどこまでも暗く沈んでいるものだった。若木のこの詩も、どこにも出口のない寂しさを漂わせている。少女たちはただ同じ空間を回っているだけのようなのだ。

   人気のない町に ブランコの音だけが響いている
    -いつまで、まわっているの?
    -夜が、追いかけて来なくなるまでよ。

   今日も一人、二人と 少女たちがやってくる
    -友だちは、みんな散り散りになったね
    -秋風が、眼の中を吹きぬけていったの。

 この作品をはじめ、この詩集のいくつかの作品はソネット形式で書かれている。それを読むとき、私は無意識に起承転結を念頭においてしまう。この形式を選んだからには、書く際にも当然それは意識されているのだろう。形式が内容を制限規定すると同時に、発想を豊かにすることもあるのだろう。
コメント
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