瀬崎祐の本棚

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黴  10号  (2014/06)  埼玉

2014-06-14 11:19:28 | 「か行」で始まる詩誌
 「キーワード」秋山公哉。
 ”キーワード”という目には見えないものを、可視的なイメージで追った作品。それは「転がり出してしまった/ビー玉のよう」で「手を離れた/ナイフのよう」でもあるのだ。それは「いつも/ここではないどこかへ」逃げていくようなのだ。
 ”キーワード”が逃げていく先の草原の風景が軽やかなイメージで描かれ、見える世界がどんどんと広がっていく。そして”キーワード”の逃げ方も軽やかなのだ。「窓から/飛び出そうとする言葉のように」であり、「ページから/飛び散る文字のように」なのだ。

   追いかけるのは自分
   いつも
   ここではないどこかへ

 逃げていくそれは、まるでひらひらと舞う蝶のようなイメージである。もう少しで捕まえられそうなのに、もうちょっとのところで身を翻してしまうようだ。そして実は、

   追われるのも自分
   いつも
   ここではないどこかへ

それは「読みかけの本」や「未完成の言葉」を遺していくのだ。
 キーワードは自分が自分であるための要になるものなのだろう。自分らしくあるために、そのキーワードになるものを捕まえようとして人は誰でも日々を過ごしているわけだ。
 しかし、それゆえに捕らえてしまうと、自分の営みもそこで終わってしまうのかもしれない。だから、作品は「キ-ワードは/いつまでも/ここではないどこかへ」。
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