桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

礼文島・花の島⑩

2005-03-25 21:21:11 | 旅行記
24時間コースとは、夜歩き始め、昼間は島の西海岸を歩き、ちょうど24時間ほどで礼文島一週72㎞を歩ききるのが一般的なようである。しかし、健脚の人は20時間かからず歩き、天候が悪かったり、大人数だったりすると、24時間をオーバーすることもあるという。最速記録は、トライアスロンの選手の人の12時間(もっと短かったか?)だそうだ。スゴイ人もいるものである。

さて、夜間は舗装道路が通じている東海岸を歩く。人家もあり、街灯もあるので、事故の心配はない。しかも、夜間はほとんど車は通らない。確か、12時から2時くらいまでの間は1,2台の車しか見なかったと思う。でも、後から考えれば無理もない。漁師の人達は朝が早いので、そんな時間は皆寝ているのである。

そんなわけで、東海岸を歩いている間のことはほとんど記憶がない。確か11時過ぎに、彦さんの運転するエース君がやって来て、Oさんや福リン、Nさん達が激励に来てくれた。激励に来た、というよりも「引き返すなら今だぞ。」という、断念を促すようなことを言ってくるのだった。もちろん冗談なのだが、その時の私は、まだ疲れてもおらず、眠気も感じていなかったので、笑い飛ばすことができた。もっと後だったら、ムッときていたかも知れない(実は私はあまり冗談が通じないタイプなのである。)。

一行が帰った後、海の方を向くと、不思議な光景が見られた。オレンジ色の不気味な月が、水平線あたりに浮かんでいる雲間から昇っているのである。日の出は1,2度見たことがあるが、月の出は初めて見た。日の出の時の太陽がオレンジ色なのと同じように、月の出の時の月もやはりオレンジ色なのである。

月がだんだん昇って行くとともに、水平線の辺りがうっすらと白んできた。暦の上ではあと少しで夏至である。関東地方よりも東に位置している礼文であるから、2時台ですでに水平線は白んでくるのである。私はだんだん眠気を催してきた。眠気の第一波である。歩いていてもふらふらするくらいである。香深の町では漁に出る時間も近づいているせいか、車も何台か目にしていたので、ふらふらと車道に出てしまうと危ない。そこで、フェリーターミナルの中で眠ろうと思ったのだが、何と先客がいた。5人くらいだろうか。4畳半ほどのスペースにきれいに並んで横になっており、分け入る余地はない。仕方なく、その近くにある屋根付きベンチで一眠りすることに決めた。漁に行く途中と思われるおじさんが通りかかって、「こんな時間に何してるのさ?」と聞かれたが、「いえ、まぁ。」と言葉を濁した。荷物を下ろしてベンチに横たわると、かなりの寒さを感じながらも、眠気がそれに勝って、すぐに寝入ってしまった。

1時間半ほど眠って目を覚ますと、東の空は白んでいた。時計はまだ3時半だったが。

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