桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

八ヶ岳の花

2014-07-06 00:12:42 | 旅行記

私がまだ見ていない、見てみたい高山植物に、ウルップソウとツクモグサがあります。ウルップソウは国内では白馬岳周辺と礼文島と八ヶ岳、ツクモグサは白馬岳周辺と北海道の利尻山、ニペソツ山などのごく限られた山とこの八ヶ岳だけに咲きます。両者の咲く場所が共通しているが不思議なところです。礼文島のウルップソウは山の奥の奥にひっそり咲いているだけで、咲く場所を知ってるのは一握りの人に限られ、見ることができません。白馬岳はまだ雪も多く、大雪渓を登るにはアイゼンが必要です。ツクモグサは北海道では山奥の限られたところにしか咲かず、これまたそう簡単に見に行くことはできません。

ところが八ヶ岳では、6~7月にこの2つの花がいっぺんに咲くので、休暇を取り、思い切って見に行ってきました。結果的にツクモグサは終わりかけでしたが、まだきれいな花をいくつか見つけることができました。ウルップソウは咲き始めで、花の色も濃くきれいでした。この時期雄大なお花畑が広がる大雪連山と比べて、お花畑の花の種類がそっくりなのに驚きました。

7/2(水)

3時半に家を出て、高速で佐久まで行き、高速を降りて少し行ったところで睡魔に襲われて道の駅で仮眠をとり、登山口の美濃戸口に着いたのは6時半でした。6:40に出発して行者小屋に着いたのは8:20でした。山にはガスがかかり始めていましたが、それでも空は晴れています。この日の目的地は横岳です。 8:25に行者小屋を出て地蔵尾根を登り始めました。この尾根は以前下ったことがあり、その急峻さに、ここを登るのはいやだなぁ、と思っていたのですが、今回は高山植物が一番きれいに咲く横岳への最短ルートなのと、午後遅くなると雷雨の可能性があるので、あえてこのルートを選んだのです。幸い思ったほど時間はかからず、9:25には尾根筋に出ました。

ここからまず赤岳の方へ向かいました。赤岳展望山荘の前にウルップソウの群生地があると聞いていたからです。聞いていたとおり、ウルップソウが30株ほど群生していて、どれも見頃でした。大雪山のホソバウルップソウに比べて、確かに葉が大きく丸いように思えました。また、ホソバウルップソウに比べて花の穂がずんぐりしているようにも思えました。また、一株あたりの花の数もホソバウルップソウに比べて少ないのも特徴でした。花の色はホソバウルップソウと同じく、目の覚めるような青紫色です。いきなり念願の花を見ることができて感激もひとしおでしたが、いかんせん登山道から離れているところに咲いていて、近くで見られないのが残念でした。

9:40に赤岳展望山荘を出て、横岳に向かって歩き始めましたが、たちまちチョウノスケソウの群落があちこちに見られるようになりました。しかしやや花期は過ぎているようでした。大雪山のチョウノスケソウに比べてやや花が小さいように思いました。オヤマノエンドウの青紫、ハクサンイチゲの白い花も目立つようになりました。また、濃い赤紫色のタカネシオガマも見られます。これらの花は皆大雪山でも見ることができるもので、植生の類似性には驚かされました。

30分ほど登ると、チョウノスケソウとオヤマノエンドウの花が一面に咲いているところに出くわしました。そこを注意深く眺めると、ありました!ツクモグサです。やや花期は過ぎていましたが、それでも初めて見るツクモグサに感激もひとしおでした。ツクモグサが咲くのは、地蔵尾根分岐と横岳の中間のやや地蔵尾根分岐寄りの西側斜面のごく限られたところだけなのですが、咲く場所には固まって咲くので、わりと見つけやすいのを初めて知りました(ニペソツ山ではよほどよく探さないと見つけられないようです)。

ツクモグサは、ゆわんと村と星観荘でかつて一緒になったことがある、小泉長之介さんが大好きな花で、長之介さんは、この花を見るために東大雪のニペソツ山や日高山脈のピパイロ岳にも登りに行くほどの人です。それで、私もいつか見てみたいと思っていたのですが、花期に合わせて北海道に見に行くこともできないまま今日に至ったわけです。この後もあちこちでツクモグサを見ることができましたが、幸い咲き始めのものやちょうど見頃のものなど、きれいな花をいくつも見られたのは幸いでした(ツクモグサの見頃は6月中旬のようです)。

さらに山頂に向かって進んだところにある砂礫地にはウルップソウが咲いていました。こうした砂礫地にウルップソウが咲くところは、大雪山と同じです。ロープ越しにできるだけ手を伸ばして写真を写しました。八ヶ岳の土壌のせいか、種類が違うせいなのか、八ヶ岳のウルップソウは株も小さく、大雪山のホソバウルップソウのような群落も作っていないのが不思議でした。

山頂に着くまでに、こうした砂礫地が3カ所ほどあり、そのいずれにもウルップソウが咲いていました。そして、ウルップソウが咲いているあたりのお花畑は、この時期の大雪山と、咲いている花がほとんど同じなのが不思議でした。ちなみに大雪山では八ヶ岳にあるタカネシオガマの代わりにキバナシオガマが咲いており、大雪山にあるエゾコザクラやエゾツガザクラは八ヶ岳では咲いていませんでした。ツクモグサも大雪山にはありません。

写真を写しながら横岳に着いたのは11:25でした。雲行きは怪しくなる一方で、このままだと硫黄岳まわりで赤岳鉱泉に降りる途中で雨に降られ、あわよくば雷雨に遭うのは必至です。山頂で会った人に聞くと、硫黄岳方面にはウルップソウもほとんどないとのこと。帰りにもう一度ウルップソウやツクモグサを見たいので、11:35に横岳山頂を出発して来た道を引き返すことにしました。

途中で新たに見つけたツクモグサやウルップソウの写真を写しながら、地蔵尾根分岐に着いたのが12:45。その直前に雨が降り出したので、慌ててカッパを着ました。雨が激しくなる中地蔵尾根を慎重に下り、行者小屋に着いたのが13時半。ここで雨宿りをしながら昼飯を食べました。14:07に行者小屋を出て美濃戸口に向かい、15:40に美濃戸口に着いたときには雨も上がって日も差し、八ヶ岳連峰もきれいに見えました。

帰りにはかねて名前を知っていた尖石縄文考古館に寄って縄文式土器や土偶の名品を見て、縄文の湯に入って汗を流して帰りました。

コメント
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