桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

鳳凰山

2020-08-20 18:14:40 | 旅行記
8/18,19

以前北岳に登ったときに八本歯のコルから振り返ってみた鳳凰山の姿が忘れられず、いつか登りたいと思っていました。また、稜線の真っ白い砂地に咲く赤いタカネビランジの花も見てみたいとずっと念願していました。

本来は夜叉神峠から薬師岳小屋泊まりで登る予定でいたのですが、今年のコロナ関連の諸事情から、急遽青木鉱泉からドンドコ沢を登って鳳凰小屋に泊まり、稜線を歩いて中道を下ってくるルートに変更しました。災害で不通になっていたドンドコ沢のルートが8月8日から再開したのも、このルートを選んだ理由です。

「日本百名山」の深田久弥が、小林秀雄(評論家)・今日出海(作家)と一緒に登ったこのルート。寝不足のまま登った今日出海は、登山中に深田久弥の命を受けた小林秀雄からステッキで叩かれながら登ったと書き残しています。確かにふらついた足下ではいつ崖下に転がり落ちるかわからないほどの急峻なルートでした。

しかし途中にはいくつもの滝がちょうど良い具合に位置しており、滝に着くたびに休憩して涼風に吹かれながら息を整えました。中でも最後に見た五色の滝は姿も美しく、水しぶきも心地よいものでした。そして、滝の右の崖には今回の登山の目標の一つでもあるタカネビランジがたくさん咲いていたのも印象的でした。

五色の滝を過ぎると傾斜が緩やかになり、沢の中の砂地を歩いて行くと鳳凰小屋に着きました。鳳凰小屋はまさに昔ながらの小屋という感じでしたが、山小屋でカレーを頂くのは初めてで新鮮でしたし、ソーシャルディスタンスを広く取った部屋で隣になった方とは話も弾みました。小屋の下に咲くタカネビランジや、山梨で絶滅危惧種に指定されているシラヒゲソウも見ることができました。

翌朝は、最初の地蔵岳までの登りが実にきつかった。今回の登りで一番大変だったかも知れません。前半の樹林帯の登りは斜度もきつく、砂地に出てからは砂に足を取られて思うように進めず困りました。でも賽の河原に着くと、目の前に甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳がどーんと聳えているのが目に入り、いずれも昨年登頂した山だと思うと、実に感慨深いものがありました。振り返ると後ろには観音岳の向こうに、雲海の上に青く聳える富士山が眺められました。

地蔵岳のオベリスクには登ることができないので、途中まで上がり、ちょうど見頃のホウオウシャジンとタカネビランジを探してカメラに収めました。また、タカネビランジの花の咲く向こうに甲斐駒ヶ岳や北岳が聳える様子をカメラに収めたかったので、そうした場所を探して写真を撮っているうちに、ずいぶんと時間が経ってしまいました。本来ならこの時期はたくさんの人が山にいるはずですが、この日は平日でもあり、コロナ騒動でそもそも山にはほとんど人がいません。単独行の私は記念写真を写すのに難儀しました。

アカヌケ沢の頭から眺めた景色も素晴らしかったです。ここでようやく北岳・間ノ岳・農鳥岳の白峰三山が姿を見せました。振り返ると北には八ヶ岳・蓼科山。北西はるか遠くには北アルプスの山々。さらに遠くには火打山・妙高山まで見えます。北東方向には浅間山など上越の山々から金峰山を初めとする奥秩父の山々、東には深田久弥終焉の地である茅ヶ岳が見えました。

ここからは深田久弥も賞賛した真っ白い砂の道が稜線に沿って続きます。これをたどりながら、右手にはずっと北岳を眺め、足下にはタカネビランジの花を見ながら、雲一つない空の下、心地よい風に吹かれながら軽快に進んでいきます。それにしても、めったにない最高の天気なのに、北岳にも間ノ岳にも誰も登っていないというのはなんとも不思議です。(ひょっとしたらトレランの人などが登っているかも知れませんが)

鳳凰山の最高点の観音岳に到着しました。ここは岩が積み重なっており、たまたま一緒になった方々(前夜鳳凰小屋でテン泊された自衛隊の皆さん。日頃の訓練の甲斐あって立派なガタイにテン泊用の大きな荷物を背負って軽快に歩いて行くのはさすがだなぁと思いました。)に写真を写していただくことができました。それにしても若い方はスマホで写真を撮り慣れているだけあって、皆さんこちらがお願いしたとおりの写真を写して下さるのが嬉しいです。(昔はなかなか上手く撮れず、思い通りの写真が撮れるまで何人もの人にお願いしたり、撮影後に手元不如意でカメラを落とされカメラが壊れてしまい、同行していた人のカメラを借りて写真を写さなければならなくなったりしたこともありました。)観音岳からの眺めも素晴らしく、30分ほど、誰もいない山頂での時間を楽しみました。特に、山頂から見える多くの山々に登頂したことがあるのは、これまた毎度のことながらなんとも感慨深いものがありました。

観音岳から薬師岳までも、真っ白い砂が敷き詰められた美しい稜線でした。正面に富士山、左手に白峰三山、足下にはタカネビランジ。美しい光景をまさに独り占めしながら到着した薬師岳の広い山頂には誰もいません。自衛隊の人たちも直前に下山をし始めたところでした。やむなく山頂標や行先標の上にカメラを置いて、セルフタイマーで記念撮影をしました。そして、この後もう見ることができない山々の姿を目に焼き付け、毎度の事ながら後ろ髪引かれる思いで中道を下りました。

中道は聞きしに勝る長さ。うんざりするほど下り続けますが、途中わずかに平らなところがあり、そこで息をつくことができました。標高が下がるにつれて気温が上がっていくのがよくわかります。終わりに近づいたところでトレランの男性に抜かれましたが、この方はこの日の6時に青木鉱泉を出て約6時間でここまで走ってきたとのこと。毎度の事ながらトレランの方のすごさには感心させられます。

もううんざりと思った頃に廃屋が見え、登山口の林道に出ました。右手に沢の音を聞きながら林道を下ります。青木鉱泉の手前に川を渡る近道があると聞いていましたが、先頃の大水で川を渡るのが困難だとの情報を耳にしていたので、そのまま林道を、青木鉱泉の入り口の橋まで進み、橋を渡って青木鉱泉に戻りました。駐車場では先ほどのトレランの方と再会し、やはり近道で川を渡るのに難儀したとのことでした。私のすぐ後に続いていた自衛隊の皆さんも近道を通って川を渡るのに難儀したようで、結局林道を最後まで歩いた私の方が早く着くことができたようです。

今回の鳳凰山は、素晴らしい天気に恵まれ最高の登山でした。しかし、最初の地蔵岳の登りと最後の中道の下りは、ここ何回かの登山の中では特にハードなものでした。





























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南八ヶ岳縦走

2020-08-05 19:55:46 | 旅行記
8月2日(日)
梅雨明け最初の日曜日。昨年麓まで来ながら諸事情で見送った南八ヶ岳を、反時計回りで縦走してきました。
八ヶ岳は以前10月に赤岳に登ったのと、7月に高山植物を見に横岳に登ったとき以来3回目ですが、今回は初めて硫黄岳まで縦走することにしました。反時計回りの縦走にしたのは、ヤマレコで北沢から硫黄岳までのルートが長いことを知ったこと、以前赤岳に登ったとき、赤岳から横岳へ向かう斜面が急で、これを登りたくないと思ったからです。結果的には反時計回りにして正解でした。
普段は単独行がほとんどなのですが、今回は珍しく同行者が一緒です。若くて体力もある同行者には申し訳ないと思いつつ、初めて八ヶ岳に登る同行者の道案内のつもりで登りました。
・赤岳山荘~行者小屋
去年の台風で登山道が荒れ、ルートが付け替えられたとおぼしきところも多く、何回かルートを見失うことがありました。先行する6人組に頼りっぱなしでした(たまたま前後になった皆さんでしたが、彼らのおしゃべりも楽しませてもらいました)。
・行者小屋~赤岳
文三郎尾根のルートを採りました。2回目ですが実にきつかった!しかしコースタイムでは赤岳への分岐まで1時間かかりませんでした。
途中小休止のたびに後ろを振り返り、蓼科山や遠く雲間に見え隠れする北アルプスの山々を眺めました。南アルプスの山々も見えました。特に昨年の同じ日に登頂した甲斐駒ヶ岳が見えたのは感激でした。
赤岳への登りは、前回手袋なしで登って懲りたので、今回は忘れずに持参しました。山頂では残念ながらガスがかかって富士山は見えませんでした。つい30分くらい前までは見えていたそうなので残念でした。山頂は例によって混雑しており、写真を写して早々に下山しました。
・赤岳~横岳
ここでも後半は手袋を付けました。前回来たときは高山植物を見に来たわけですが、今回は時期が過ぎており、ウルップソウやチョウノスケソウの残骸ばかり。チシマギキョウは見頃でした。横岳の山頂も前回は誰もいなかったのに、今回は結構な数の人がいました。この辺りでは東側はすっかりガスがかかってしまいました。
・横岳~硫黄岳
横岳からは大同心が見えました。クライマーがいたのはびっくり。後で調べたらクライミングの名所だったのですね。硫黄岳山荘までは火山らしくざらざらと歩きにくい道。硫黄岳への登りは平たい石が積み重なり、これはこれで歩きにくい道でした。途中でとても珍しい白いチシマギキョウを見つけました。気がついた人はどれくらいいたことでしょうか?
・硫黄岳~赤岳鉱泉
硫黄岳は平たい石が敷き詰められた広い山頂です。こんな山頂はなかなかありません。快い風が吹き、北側の眺めの良いところで昼食にしました。一瞬雲が切れ、赤岳~阿弥陀岳が見えましたが、すぐに雲に隠れてしまい、そのまま見えなくなってしまいました。赤岳鉱泉への下りは単調ですが歩きやすく、コースタイムより大分早く下りることができました。
・赤岳鉱泉~赤岳山荘
赤岳鉱泉はたくさんの人で賑わっていました。若い人が多く、テントもたくさんありました。ここから林道終点(堰堤広場)までが意外と長く疲れました。また林道も思った以上に長く、疲れた足で登山靴で約30分林道を歩いたので、最後はかなりバテました。
3回目の八ヶ岳でしたが、後半は初めて歩くルートであり、また同行者もいたので、いつもと違った楽しさのある山行でした。同行者もいたく感激してくれ、連れてきて良かったと思いました。





























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