桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

乗鞍岳

2014-08-07 22:15:20 | 旅行記

7/31(木)

乗鞍岳へは、もう20年前に最初の学校での国語科職員旅行で、畳平まで来たことがあります。この時はまだ一般車も畳平まで来られたのですが、後に自然保護の目的で、岐阜県の平湯か、長野県の乗鞍高原などからのシャトルバスでしか来られなくなってしまいました。

昨年の秋に焼岳に登ったとき、すぐ隣に聳える乗鞍岳の雄大な姿が印象に残りました。穂高岳や笠ヶ岳は鋭い岩峰ですが、乗鞍岳は火山ということもあって、山容はずっと穏やかです。今年の夏は南アルプスや北アルプスに登ろうかと考えているのですが、その練習のつもりで、日本で一番簡単に登れる3,000mである乗鞍岳に登ってこようと決めました。

4時に家を出、上信越道、長野道を通って松本インターで下り、上高地へ向かうルートを南に折れて乗鞍高原の駐車場に着いたのは7時半でした。シャトルバスは基本的に1時間に1本なので、ちょうど良い時間、しかも平日なのでさほど混んでいません。駐車場からは乗鞍岳がきれいに見えていますが、別の方の空は既にガスが出始めており、登るうちに山はガスに覆われてしまうだろうことが予想されました。

シャトルバスの中ではずっと寝ていましたが、畳平の手前の大雪渓で下りる人がいるので目が覚めました。前回来たときはここで夏スキーに興じる人がいましたが、今回も何人かの人が滑っていました。

畳平に着いたのは9時前。山頂の剣が峰目指して、まずターミナル横のお花畑に下ります。ハクサンイチゲとチングルマが満開で、まさにお花畑の名にふさわしいところでした。ここを横切り、観測所と山小屋のために付けられた作業道を歩いていくと肩の小屋に着きました。ここから山頂までは火山特有の砂利道をひたすら登っていきます。

この辺りで辺りはすっかりガスに覆われてしまいました。登山道は結構な斜度で、しかも砂利道の中に大きな岩があってとても歩きにくかったのですが、それ以上に、平日ながら最も簡単に登れる3,000m峰ということもあってか、沢山の登山客がおり、特に登山ツアーの団体がいくつも登っているのです。先に行かせてもらえるのはありがたいのですが、そのたびごとに「特急列車が通過しま~す!」と声を掛けられるのは、毎度のことながらひどく嫌味に聞こえ、良い気持ちはしません。どうして「どうぞお先に~!」の一言で済ませられないのでしょうか?

乗鞍岳は比較的新しい火山ということで、肩の小屋以降の登山道では高山植物はほとんど見られません。かろうじて火山特有の砂礫地を好むコマクサの群落が見られましたが、いかんせん登山道からとても離れたところにあって、写真に収めることはできませんでした。

山頂に近づくにつれて岩が増え、頂上小屋の前を通過して山頂に着きました。山頂にはまた別のツアー客がおり、8畳ほどの山頂は満員でした。そのツアー客が弁当を食べ終わり、人が少なくなったところで、何とか山頂標の前で写真を撮ることができましたが、間もなく別のツアー客が登ってきて、晴れた空の下、山頂標の前で写真を撮ることは結局できませんでした。

昼食を済ませ、30分ほどして下山することにしました。下山の際にもやはり「特急列車が通りま~す!」の声を、登りの時と同じツアーの人にかけられて気分を害したので、肩の小屋で休憩するであろうこの人達と、小屋で一緒になるまいと、かなり急ぎ足で下っていきました。肩の小屋で小休止をし、あとは畳平まですたすた下っていきました。本来なら、肩の小屋から大雪渓の脇を通って途中のバス停まで行け、その方が畳平に行くよりも近いのですが、私はぜひ始発の畳平から座っていきたいので、あえて畳平まで戻ったのです。畳平に戻るとちょうど3時間でした。山頂で大休止を取らなければ、2時間ほどで往復できたかも知れません。

帰りは白骨温泉の泡ノ湯に入ろうと思ったら、何と木曜日は露天風呂が休み。仕方なく沢渡まで戻り、沢渡温泉に入って汗を流して帰りました。

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白馬岳

2014-08-04 23:52:55 | 旅行記

転勤して山岳部顧問団に入りました。夏休みに入り最初の三連休には恒例の夏山登山に行くこととなり、初めて引率に加わってきました。行き先はまだ登っていない白馬岳、しかも高山植物のきれいな時期で、さらには軽アイゼンがないと登れない大雪渓は通らないルートとのことで参加させてもらったわけです。

日程は7/19(土)~21(月)。夏山で一番混雑する時期で、それを覚悟の上の山行ですが、仕事ですから仕方ありません。生徒は23人、教師は3人での山行となりました。行く前の長期予報は、3連休は天気が悪いとのことで、あまり気乗りしない中での出発となりました。ちなみに今回は寝袋やシート、3日分の食料を持っているので、荷物は15キロ近い重さとなり、いつも使っている35リットルのザックでは入りきらず、十数年前に幌尻岳に登るときに購入した50リットルのザックを引っ張り出してきて荷物を詰め込んだのですが、それでもザックはいっぱいになってしまいました。主顧問の先生はその上テントも持っていて、70リットルのザックを持ってきていました。

8/19
バスで栂池に着き、ゴンドラとロープウェーを乗り継いで栂池自然園へ。ここに来るのはおそらく15年ぶりだと思います。前回は白馬風の子という宿の蓮華温泉ツアーに参加したときに、ガスの中湿原を歩いた記憶があります。

自然園で昼食を済ませ、この日の幕営地である白馬大池に向けて登り始めました。雨がぱらついており、前日も雨が降ったとのことで、足下はぐちゃぐちゃでとても登りにくかったです。斜度が緩くなると天狗原という湿原に出ました。ここで休憩を取っていると、いよいよ雨が本降りになってきました。慌てて合羽を着込み、雪渓の登りにかかるところで雨が上がりました。雪渓の登りは、生徒は皆軽アイゼンを付けるとのことでしたが、私は大雪山の雪渓歩きに慣れていたので、そのまま登っていき、先に白馬乗鞍岳の山頂に着いて待っていることにしました。

雪渓は大したことなく、軽アイゼンなしでも十分登れるものでしたが、20キロ近い荷物を背負って、雪渓歩きにも慣れていない生徒には、やはり軽アイゼンは必要だったものと思われます。私は簡単に通過できたので、白馬乗鞍岳の山頂に着いた後、1時間近くの大休止をとりました。着いたときには日も差していたので、濡れた合羽や手ぬぐい、ザックカバーを岩の上に広げて干しました。

うつらうつらしているうちに生徒達も登ってきて山頂で合流し、この日の幕営地の白馬大池に向けて下っていきました。白馬大池のほとりには真っ赤に塗られた白馬大池小屋が建てられ、その脇にテン場が設けられています。さすがに3連休だけあり、すでに20以上のテントが設営されていて、私たちは隅の空いているところに、生徒は池のほとりにテントを設営しました。私はテントは設営したことがないので、主顧問の先生に指示されるままに設置しました。

めいめいで用意してきた夕食を食べ、酒など飲んでいるところに生徒がやってきました。何でも生徒が教員のために食事を用意してくれるのだそうです。私はコッヘルを渡しました。しばらくすると炊いたご飯にレトルトの親子丼を温めたものをかけたもの、マカロニサラダが盛りつけられて運ばれてきました。ご飯には芯があってぼそぼそしていて美味しくありませんでしたが、マカロニサラダはとても美味しくできていました。何でもグループごとに作ってあげる先生が違うそうで、別の先生はご飯は美味しかったものの、マカロニサラダはマカロニが原形をとどめていませんでした。

食事の後小屋の周辺を歩いてみましたが、小屋の西には雪渓があり、雪田にはハクサンイチゲやハクサンコザクラが一面に咲いており、一面のお花畑でした。残念ながらロープで囲まれていて、中に道も付いてはいたのですが、入ることができず、写真も満足に撮ることができませんでした。しかし、こうしたお花畑を見たくて山に関心を持った子供の頃を懐かしく思い出すよすがにはなりました。

8時過ぎにテントの中に入ったのですが、小屋の発電機の音がうるさく、寝付けずにいたところ、9時に発電機が停まり、辺りが静かになると同時に、今度は大粒の雨が落ちてきて、雷も鳴り出しました。明日の天気が不安でなりませんでした。夜中にも雷鳴は聞こえ、稲妻が横に走るのがテントの幕越しにもわかりました。慣れない寝袋の中であまりよく眠れないまま夜が過ぎていき、3時頃に生徒が朝食用のコッヘルを取りに来た声で目を覚まし、うつらうつらしているうちに雨の音が小さくなっていきました。

8/20
雨が降る中生徒が持ってきた朝食を飲み物で流し込みました。外は雨が止み空が見えはじめています。外へ出てみるとあちこちに水たまりができ、ペグの周りの土も流されて、とても前夜に打ったとは思えないくらいでした。シュラフをめくると下は濡れており、マットも濡れています。湿気とともに雨水が少なからず進入したものと見えます。

この日はサブザックを持って白馬岳まで往復です。私はサブザックを持っていたので、不要な荷物をテントの中に置いていきます。目標では5時出発ということになっていますが、何しろ準備に時間がかかるので、出発は恐らく6時だろうと予想していました。我々は準備がとっくにできてしまったので、準備をせかそうと、生徒のテントの方に向かいました。テントによってはもう出発できるところも見られましたが、まだまだのところもあるので、すぐに出発できるようにするよう言いました。そして、何とか5:50には出発できました。

テン場の裏側の雪渓を通過し、ゆるやかな道を登り、ハイマツの間を抜けると、目の前にいきなり今日の最初の目標の小蓮華山と雪倉岳が聳えているのが目に入ってきました。足下にはコマクサとチシマギキョウが咲いています。夜中の大雨とは打って変わって良い天気ですが、湿度が高いので、日が昇るにつれてガスが上がってくることが予想されました。

生徒はそうした景色や花には目もくれずにどんどん登っていきます。ペースも速く、さすがに県下有数の実力ある部の部員だなと思わされました。船越ノ頭まで来ると視界が一気に開けます。目の前に小蓮華山が聳え、その奥にほんの少しだけ白馬岳の山頂がのぞいています。その南に不帰の嶮、杓子岳、唐松岳、五龍岳、鹿島槍ヶ岳といった山々が続いています。山頂部分には既にガスがかかり始めています。

船越ノ頭から小蓮華山に向かう登山道は、かつてNHKドラマ「坂の上の雲」のエンディングで流れた映像のロケが行われたところです。この登山道を実際に見てみたかったというのも、今回の山行に同行した理由でした。生徒の中には関心を持ってくれた者もいましたが、大半の者はもくもくと登っていってしまいました。

この辺りから高山植物も増えてきました。ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ミヤマアズマギク、オヤマノエンドウ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウなど。この時期は黄色と白の花が目立ちます。生徒にはタカネヤハズハハコがかわいいと人気でした。

ゆるやかな登山道を上っていくと、大きな平たい石がゴロゴロと敷き詰められた小蓮華山の山頂に着きました。ここは新潟県の最高点です。数年前に山頂南側が崩落したとのことで、最高点には近寄れないようにロープが張ってありました。山頂には鉄製の大きな矛が立てられており、古くは信仰の山で会ったことが想像されます。ここへ来るとすっかりガスの中に入ってしまい、北に聳えてる雪倉岳や朝日岳はもう見えなくなっていました。

さすがに連休中日だけあって、山頂は結構な賑わいでした。そこへ26人一行が加わったので、さらに賑やかさを増しました。嬉しいのは、登山客が皆我々一向に興味を持って声を掛けてくれること。みんな好意的な目を向けてくれるのが嬉しいことでした。生徒はもう少し愛想を振りまいても良いのではと思われるくらいの歓迎ぶりでした。

小蓮華山からしばらくはまた緩やかな稜線歩きが始まります。稜線の左側は崖になっており、そこからガスがどんどんわき上がってきます。稜線の右側はなだらかな斜面となっており、ところどころお花畑となっています。このあたりからウルップソウ、タカネシオガマ、既に花は終わっていますがツクモグサが目に付くようになりました。これらの花はいずれも八ヶ岳で見たものですが、何しろ数が八ヶ岳と比較にならないくらい多い。八ヶ岳ではこれらの花は局所的にしか見られませんでしたが、ここでは山頂までずっと見られました。特にウルップソウはまだ見頃のものも多く、見つけるたびに写真を撮っていたので、一行から遅れてしまうことがたびたびありました。また、雪渓の跡に広がるお花畑も何ヶ所もありました。

なだらかな稜線歩きも三国境という長野・富山・新潟の県境が交わる辺りから斜度を増します。それを登り切ると間もなく山頂でした。山頂手前で空が開けて日が射し始め、白馬岳の西側にある清水岳も姿を表しました。

登山道の左手はすっぱり切れ落ちた崖となっていますが、右手はなだらかな斜面となっており、一面のお花畑となっています。ここが特別天然記念物に指定されている白馬連山高山植物帯になります。今はハクサンイチゲの白とウルップソウの紫、ミヤマキンバイとミヤマダイコンソウ、シナノキンバイの黄色、タカネシオガマの赤紫が目立ちます。八ヶ岳と異なるのは、白馬岳にはシナノキンバイがあることとチョウノスケソウがないことです。

3連休ということで、白馬岳山頂では相当な混雑が予想されたのですが、登頂時間が中途半端だったためか、我々一行の他は10人程度。ちょっと信じられないほどでした。山頂には新田次郎の小説「強力伝」で知られる山頂標が置かれています。生徒の中にはこのことを知っている者もいたのは嬉しいことでした。

30分ほどかけて大撮影会をしたあと、山頂で昼食&大休止をしたい者は残り、白馬山荘まで行きたい者は下っていきました。お花畑は小屋周辺にも広がっていると聞いていた私は、迷わず白馬山荘まで20分ほどかけて下っていきました。

山荘前のベンチに腰を下ろすとびっくりしました。真下にウルップソウの大群落が広がっています。しかもちょうど見頃です。しかし、残念ながら近くに行くことはできず、精一杯の望遠で写真を撮りました。ここまでの群落は、大雪山のホソバウルップソウの群落でも見たことがないほどです。小屋からさらに下る登山道沿いには、ハクサンイチゲとウルップソウとで、白と紫に埋め尽くされたお花畑が広がっていました。

登山道を下りて左手を見上げると、一面のお花畑です。私が子供の頃、叔父の持っていた日本アルプスの写真集で見たのは、ひょっとしたらこの白馬岳のお花畑だったかも知れません。「アルプスの少女ハイジ」で見たように、お花畑の中に足を踏み入れることはできませんが、それでも、子供の頃に夢見た光景を実際にこの目で見ることができたような気がして、何だかとても感慨深かったです。

帰りはすっかりガスの中。生徒も早く小屋へ帰りたいと見え、追いつくのがやっとというくらいのスピードでどんどん下っていきます。実際にコースタイムよりもだいぶ早く白馬大池に到着しました。夕食までは先生方とは長くおしゃべりができたし、昼寝も少しできたほどです。夕食の前には雪渓の上を吹いてきた冷風が太陽に照らされてガスのように立ちこめて幻想的な光景を作りだしました。

夕食を済ませ、片付けを終えたところで雨が落ち始めました。早々にテントの中に入り、ずっとおしゃべりをして止むのを待ちましたが、止む気配はありません。それでも8時頃には止みました。この日はかなり疲れていたので、早く眠ることができました。

8/21
翌朝は例によって3時に起こされ、4時過ぎには朝食を済ませ、片付けも済ませ、5時半には出発しました。予報通りこの日は素晴らしい天気です。帰るのがもったいないほど。この日は蓮華温泉に下るだけですが、登山道はとても険しく、ひたすら下る一方で、このルートを上るには嫌だなと思わされました。途中にある天狗の庭からは、小蓮華山と雪倉岳が美しく眺められましたが、やがてガスの中に消えてしまいました。

下るほどに気温の上昇を感じながら、3時間ほどで蓮華温泉に到着しました。蓮華温泉はもう十数年前に、白馬にある民宿風の子の蓮華温泉ツアーに参加して以来です。あの時は泉源にある露天風呂に入ったのを覚えていますが、この日はさすがに生徒が一緒ということで、内湯に入りました。風呂はきれいで気持ちよかったのですが、いかんせん足の日焼けがひどく、長湯できなかったのが残念でした。風呂の後はバスに乗って帰途に就くばかりでした。

白馬岳は眺望には恵まれなかったものの、とにかく高山植物が見事でした。百名山を目指す中で、生徒と登頂したのは、実はこれが初めてではありません。伊勢崎東高校に勤めていた頃、全校登山で赤城山に登頂していました。また、前橋高校の遠足でも、生徒と一緒に赤城山に登頂しています。この先、また生徒と一緒に登頂する山があるのでしょうか?

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