○大学院2年の頃⑤
*西安ツアー・その5
翌日はついにあこがれの大雁塔を訪れた。大雁塔は、子供の頃見たテレビドラマ「西遊記」のエンディングで、ゴダイゴ「ガンダーラ」が流れる中、この大雁塔の映像が流れていた。その頃から、いつかこの場所を訪れてみたいと思っていたのだが、この大雁塔に初唐の楷書の名品、褚遂良の「雁塔聖教序」が存在することを知ったのは、確か高校生になってからのことだった。
大雁塔は西安を代表する観光地であり、平日ながら大混雑していた。大雁塔は中から上層へ階段で上れるようになっている。驚いたのは、大雁塔の内部は吹き抜けというか、がらんどうの空間になっていることであった。その空間の周囲に階段が取り付けられており、層ごとに四方に窓が開いていて、そこから外を眺め下ろせるようになっている。しかし窓にはちょっとした木の柵が付けられているだけで、ちょっと怖い。窓から見下ろした西安の町は、ほこりっぽい上に春霞で、遠くまではるかに見渡すことはできなかった。
雁塔聖教序は大雁塔の壁面にはめ込まれていた。そしてそれは雨に当たらないような位置にあり、だからこそ風にさらされることがほとんどなく、碑面の損傷がほとんどなかったのである。碑面には碑面を保護するために拓本が張られており、碑面そのものは見られなかったのが残念だった。
大雁塔の後は小雁塔に行った。大雁塔がきれいに整備されているのに対し、小雁塔は宋代に頂部が壊れたままになっており、しかも上ることはできない(昔は上れたらしい)。しかし、小雁塔は大雁塔と異なって町中にひっそりと聳え、しかも整備されておらず、昔のままの雰囲気をよく残していると言ってよい。ここはそういうわけで上れないので、ちょっと見学しただけで後にした。
その後は西門で石碑の除幕式に参加した。翌々年に、シルクロードへ向かう途中での西安観光の際にこの西門を再訪したが、石碑はちゃんと建てられていて懐かしかった。翌年には殿村藍田氏も今回一行が参加したイベントに参加し、石碑の建立に携わったことがわかった。
残る日程は2日間のみとなった。恐らくこの日の午後に文物商店2ヶ所に出かけて拓本などを見、夜は西安交通大学の鍾明善氏の仲介で拓本を見たように思う。高木大宇先生が、于右任の印の押された瑯耶台刻石の拓本を購入されたのを覚えている。